86 / 239
第四章
121 フリートヘルム様!
しおりを挟む
◆◆◆◆◆◆
殿下は俺の首を左手で押さえ込んだまま、咥内に舌を侵入させる。殿下の舌が歯列をなぞり、俺の舌を絡みとる。
「ふっ・・んっ!」
唇を奪われたまま床に押し倒されて、衣服を引き裂かれていく。露になった肌に指を這わされ、俺はびくりと体を跳ねさせた。殿下の右手が下半身に移動して、下着の内部に手を差し込まれた。殿下が、俺の貧弱なペニスを強く揉み込む。
「ふっ、んっんー!」
僅かな時間が永遠に思えた。涙がポロポロ零れ落ち、俺は目を閉じて屈辱と恐怖に耐えた。
「ぐっ、」
不意に殿下が苦しげな声を漏らした。そして、殿下は力を完全に失い、俺に覆い被さる様に崩れ落ちた。
「んっ、はぁ、はぁ、アルミン、助かった。怖かった・・だ、抱きしめて、アルミン・・怖い。怖いよ・・アルミン!」
「すまない、マテウス卿」
「ん?」
「フリートヘルムだ」
「フリートヘルム様!」
恥ずかしい!アルミンが、救出に来てくれたと思い込んでた。フリートヘルムが殿下を気絶させたのか。
「殿下の首を背後から絞めて気絶させた。殿下の意識は数分で戻る筈だ。執務室の仮眠室に殿下を寝かせて・・不敬にあたるが、しばらく仮眠室に外から鍵を掛けるつもりだ。仮眠室には、衣服の予備が置いてある。その、マテウス卿に似合う衣服もあるに違いない。どのような衣服が好みだ、マテウス卿?やはり、孕み子は・・可愛い衣服を好むのだろうか?」
「えーと??」
フリートヘルムの頭が、バグを起こしているようだ。確かに、俺だって可愛い衣服が似合う孕み子になりたいとは思うよ?だが、見てわかるよね?俺には似合わないよね?だから、聞かないで欲しい。
そもそも、今は衣服のデザインなど重要ではない。だが、突っ込む事はやめよう。殿下の首を絞めて気絶させたのだ。フリートヘルムには、ショックが大き過ぎたに違いない。
「・・フリートヘルム様。王族に忠義を尽くす、ディートリッヒ家の嫡男である貴方に、辛い思いをさせてしまいました。ですが、殿下を気絶させて下さり、私は感謝しております。このような容姿でも・・私は孕み子です。あのまま、殿下が性行為を進めたなら・・私は殿下の子を孕む可能性もありました。王族に背く行為を、フリートヘルム様にさせてしまった事は、心苦しく思っております。同時に、貴方の勇敢な行いに感謝申し上げます、フリートヘルム様」
「そ、そうか。ふむ・・」
フリートヘルムが無口だ。本当に、孕み子と接点がないらしい。ディートリッヒ家の嫡男なのに、殿下の尻ばかり追っていたつけだな。
「殿下を仮眠室でゆっくりと休ませましょう。その為に、薬を盛ることを提案したいのですが、フリートヘルム様はどう思われますか?」
「そこまで必要か?」
「殿下が数分で目覚めるのならば必要です。仮眠室にて暴れられては、殿下が怪我をされる可能性があります。それに、ヴォルフラム様の件もございます。彼は私の同僚です。彼の救出には、私も協力したいのです。その為には、情報共有は重要です。後は・・静かな環境がファビアン殿下の心の治療には不可欠です。そして、何より・・ヴェルンハルト殿下に休息の時を差し上げたい。王太子殿下には、心を癒す時間が必要だと思います」
「マテウス卿は優しい方だ。貴方の提案に乗り、殿下に薬を盛ることにする。俺と貴方は、共犯関係となった・・よろしいですか、マテウス卿?」
「まあ、共犯関係とは、素敵な響きですね。ご安心下さい、フリートヘルム様。私は、貴方の行動を全面的に支持します。王族に手を出した事を罪に問われないように・・口裏を合わせる必要がありますね?」
「マテウス卿は、やはりシュナーベル家出自だと改めて実感した・・少し性悪だ」
「ひどいです、フリートヘルム様!ですが、貴方は、ディートリッヒ家の嫡男とは思えぬ柔軟さをお持ちですね?そういうところは・・私は、好きですよ?」
「うっ、あっ、そうか」
「ところで、衣装は普通のものを見つけて下さると有り難いです。可愛い衣服は、私には似合いませんから、フリートヘルム様」
「お、おう・・そうか。しかし、マテウス卿、その、先程からずっと、泣いておられるが・・大丈夫なのか?本当に、平気か?」
「私は泣いてなどおりません」
「・・分かった。殿下を担ぎ上げて、仮眠室にお連れする。その際に、マテウス卿の肌を見ないと約束する」
「ふふ、お願いします」
「それと、アルミン殿はファビアン殿下を保護済みだ。先程から、俺と交代しろと・・背後から、俺の尻を蹴り続けている。彼と交代する。くそ、尻を蹴るな、アルミン!痛い!」
「さっさと交代しろ、白豚が!」
「白豚だと、貴様!くそ、アルミン!マテウス卿の肌を、絶対見るなよ!」
「俺は幼馴染みだから、全部みていーの」
「殴る!」
フリートヘルムが、殿下を担ぎ上げた。そして、背後のアルミンを睨み付けた後に、仮眠室に向かった。
俺は横たわったまま、ファビアン殿下を抱き締めたアルミンに微笑み掛けた。ファビアン殿下は気を失っているようだ。怪我はなさそうだが、心配は尽きない。
「アルミン、ありがとう」
「マテウス・・お前は、本物の馬鹿だ!」
アルミンは、ファビアン殿下を抱き締めたまま、俺ごと抱き寄せた。涙が止まらず俺は言葉に詰まった。俺は泣きながら、アルミンに抱きついていた。
◆◆◆◆◆◆
殿下は俺の首を左手で押さえ込んだまま、咥内に舌を侵入させる。殿下の舌が歯列をなぞり、俺の舌を絡みとる。
「ふっ・・んっ!」
唇を奪われたまま床に押し倒されて、衣服を引き裂かれていく。露になった肌に指を這わされ、俺はびくりと体を跳ねさせた。殿下の右手が下半身に移動して、下着の内部に手を差し込まれた。殿下が、俺の貧弱なペニスを強く揉み込む。
「ふっ、んっんー!」
僅かな時間が永遠に思えた。涙がポロポロ零れ落ち、俺は目を閉じて屈辱と恐怖に耐えた。
「ぐっ、」
不意に殿下が苦しげな声を漏らした。そして、殿下は力を完全に失い、俺に覆い被さる様に崩れ落ちた。
「んっ、はぁ、はぁ、アルミン、助かった。怖かった・・だ、抱きしめて、アルミン・・怖い。怖いよ・・アルミン!」
「すまない、マテウス卿」
「ん?」
「フリートヘルムだ」
「フリートヘルム様!」
恥ずかしい!アルミンが、救出に来てくれたと思い込んでた。フリートヘルムが殿下を気絶させたのか。
「殿下の首を背後から絞めて気絶させた。殿下の意識は数分で戻る筈だ。執務室の仮眠室に殿下を寝かせて・・不敬にあたるが、しばらく仮眠室に外から鍵を掛けるつもりだ。仮眠室には、衣服の予備が置いてある。その、マテウス卿に似合う衣服もあるに違いない。どのような衣服が好みだ、マテウス卿?やはり、孕み子は・・可愛い衣服を好むのだろうか?」
「えーと??」
フリートヘルムの頭が、バグを起こしているようだ。確かに、俺だって可愛い衣服が似合う孕み子になりたいとは思うよ?だが、見てわかるよね?俺には似合わないよね?だから、聞かないで欲しい。
そもそも、今は衣服のデザインなど重要ではない。だが、突っ込む事はやめよう。殿下の首を絞めて気絶させたのだ。フリートヘルムには、ショックが大き過ぎたに違いない。
「・・フリートヘルム様。王族に忠義を尽くす、ディートリッヒ家の嫡男である貴方に、辛い思いをさせてしまいました。ですが、殿下を気絶させて下さり、私は感謝しております。このような容姿でも・・私は孕み子です。あのまま、殿下が性行為を進めたなら・・私は殿下の子を孕む可能性もありました。王族に背く行為を、フリートヘルム様にさせてしまった事は、心苦しく思っております。同時に、貴方の勇敢な行いに感謝申し上げます、フリートヘルム様」
「そ、そうか。ふむ・・」
フリートヘルムが無口だ。本当に、孕み子と接点がないらしい。ディートリッヒ家の嫡男なのに、殿下の尻ばかり追っていたつけだな。
「殿下を仮眠室でゆっくりと休ませましょう。その為に、薬を盛ることを提案したいのですが、フリートヘルム様はどう思われますか?」
「そこまで必要か?」
「殿下が数分で目覚めるのならば必要です。仮眠室にて暴れられては、殿下が怪我をされる可能性があります。それに、ヴォルフラム様の件もございます。彼は私の同僚です。彼の救出には、私も協力したいのです。その為には、情報共有は重要です。後は・・静かな環境がファビアン殿下の心の治療には不可欠です。そして、何より・・ヴェルンハルト殿下に休息の時を差し上げたい。王太子殿下には、心を癒す時間が必要だと思います」
「マテウス卿は優しい方だ。貴方の提案に乗り、殿下に薬を盛ることにする。俺と貴方は、共犯関係となった・・よろしいですか、マテウス卿?」
「まあ、共犯関係とは、素敵な響きですね。ご安心下さい、フリートヘルム様。私は、貴方の行動を全面的に支持します。王族に手を出した事を罪に問われないように・・口裏を合わせる必要がありますね?」
「マテウス卿は、やはりシュナーベル家出自だと改めて実感した・・少し性悪だ」
「ひどいです、フリートヘルム様!ですが、貴方は、ディートリッヒ家の嫡男とは思えぬ柔軟さをお持ちですね?そういうところは・・私は、好きですよ?」
「うっ、あっ、そうか」
「ところで、衣装は普通のものを見つけて下さると有り難いです。可愛い衣服は、私には似合いませんから、フリートヘルム様」
「お、おう・・そうか。しかし、マテウス卿、その、先程からずっと、泣いておられるが・・大丈夫なのか?本当に、平気か?」
「私は泣いてなどおりません」
「・・分かった。殿下を担ぎ上げて、仮眠室にお連れする。その際に、マテウス卿の肌を見ないと約束する」
「ふふ、お願いします」
「それと、アルミン殿はファビアン殿下を保護済みだ。先程から、俺と交代しろと・・背後から、俺の尻を蹴り続けている。彼と交代する。くそ、尻を蹴るな、アルミン!痛い!」
「さっさと交代しろ、白豚が!」
「白豚だと、貴様!くそ、アルミン!マテウス卿の肌を、絶対見るなよ!」
「俺は幼馴染みだから、全部みていーの」
「殴る!」
フリートヘルムが、殿下を担ぎ上げた。そして、背後のアルミンを睨み付けた後に、仮眠室に向かった。
俺は横たわったまま、ファビアン殿下を抱き締めたアルミンに微笑み掛けた。ファビアン殿下は気を失っているようだ。怪我はなさそうだが、心配は尽きない。
「アルミン、ありがとう」
「マテウス・・お前は、本物の馬鹿だ!」
アルミンは、ファビアン殿下を抱き締めたまま、俺ごと抱き寄せた。涙が止まらず俺は言葉に詰まった。俺は泣きながら、アルミンに抱きついていた。
◆◆◆◆◆◆
24
お気に入りに追加
4,575
あなたにおすすめの小説

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
役目を終えた悪役令息は、第二の人生で呪われた冷徹公爵に見初められました
綺沙きさき(きさきさき)
BL
旧題:悪役令息の役目も終わったので第二の人生、歩ませていただきます 〜一年だけの契約結婚のはずがなぜか公爵様に溺愛されています〜
【元・悪役令息の溺愛セカンドライフ物語】
*真面目で紳士的だが少し天然気味のスパダリ系公爵✕元・悪役令息
「ダリル・コッド、君との婚約はこの場をもって破棄する!」
婚約者のアルフレッドの言葉に、ダリルは俯き、震える拳を握りしめた。
(……や、やっと、これで悪役令息の役目から開放される!)
悪役令息、ダリル・コッドは知っている。
この世界が、妹の書いたBL小説の世界だと……――。
ダリルには前世の記憶があり、自分がBL小説『薔薇色の君』に登場する悪役令息だということも理解している。
最初は悪役令息の言動に抵抗があり、穏便に婚約破棄の流れに持っていけないか奮闘していたダリルだが、物語と違った行動をする度に過去に飛ばされやり直しを強いられてしまう。
そのやり直しで弟を巻き込んでしまい彼を死なせてしまったダリルは、心を鬼にして悪役令息の役目をやり通すことを決めた。
そしてついに、婚約者のアルフレッドから婚約破棄を言い渡された……――。
(もうこれからは小説の展開なんか気にしないで自由に生きれるんだ……!)
学園追放&勘当され、晴れて自由の身となったダリルは、高額な給金につられ、呪われていると噂されるハウエル公爵家の使用人として働き始める。
そこで、顔の痣のせいで心を閉ざすハウエル家令息のカイルに気に入られ、さらには父親――ハウエル公爵家現当主であるカーティスと再婚してほしいとせがまれ、一年だけの契約結婚をすることになったのだが……――
元・悪役令息が第二の人生で公爵様に溺愛されるお話です。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。