嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す

月歌(ツキウタ)

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第四章

112 枢機卿

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◆◆◆◆◆◆

孕み子の案内係は、お尻をぷりぷりと振りながら、枢機卿に親しげに話し掛けていた。だが、彼等の会話を盗み聞きした限り、どうも会話が噛み合っていないように思えた。

「困りました。私は、最初に貴方に伝えた筈ですよ?私は、王城内にあるフォーゲル王国最古の教会を見学したいと。ですが、全く辿り着く気配がありません。もしや、貴方は迷子になったのではありませんか?」

「まさか!僕は案内係ですよ?王城の事なら全て把握してます。教会に行く前に、王城の素敵な場所を案内したいのです!庭園のガゼボは、とても素敵な場所ですよ。そこで、休憩を取りましょう!ね、良いでしょ?」

「疲れてはいないので、休憩は必要ありません。それよりも、案内係が迷子になったとしても、少しも恥ずかしい事ではありませんよ?人である以上は、失敗は避けられません。私は怒り出したりはしませんから、王城の正面玄関口に戻りましょう、案内係さん?」

「ふふ、聖職者でありながら・・先程から、貴方は僕のお尻を熱心に見つめていましたよね?貴方の視線で・・僕のお尻は熱くなってしまいました。でも、大丈夫です!僕も、貴方が気にいっていますから。応じても構いませんよ?」

「待って下さい・・完全なる誤解です」

「本心を誤魔化さないで!さあ、ガゼボのベンチで、僕をアンアンさせてください!その逞しい体とぺニスで、僕のアナルをズボズボして鳴かせてよ!互いに楽しみましょ!」

ヤバい!案内係さんは、ガゼボのベンチで枢機卿とがっつり合体するつもりだ!

「アルミン、まずいよ!」

「確かにまずい状況だな。マテウス、急な動きは避けてくれ。ガゼボの周囲に、暗部の奴等が近付いて来ている」

「どこの暗部組織?」

「おそらく、教会の暗部組織だ。さすがに、枢機卿を一人で、ウロウロさせる訳にはいかないよな。機会をみて、ガゼボから出た方が良さそうだ、マテウス」

「そうだね」

ガゼボの床にしゃがみ込み、身を隠して枢機卿の様子を伺う俺とアルミン。暗部組織から見たら、めちゃくちゃに怪しい存在だろうな!

とにかく、俺達が敵ではないことを、早く証明しないと駄目だ。何か切っ掛けが欲しい。

「案内係さん。私は宗教上の理由から、孕み子との交わりを禁じられています。なので、貴方の希望には添えません」

「えー、嘘でしょ?だって、僕は教会の聖職者と何度もセックスしているよ?彼等は凄く、ねちっこいセックスをするんだよねぇ~。特に太った奴の汗は、臭くてたまらない。でも、貴方は別格。すごく、素敵」

「貴方の口振りでは、聖職者との性交を好んではいないようですね?なのに、どうして彼らに抱かれているのですか?もしも、貴方が聖職者から肉体関係を強要されているならば、止めさせる事も可能ですよ?」

「やめてよ、勝手な事をしないで!僕が聖職者と寝るのは、フォルカー教国に行く機会を得る為だから!フォルカー教国は、今すごく孕み子が不足しているでしょ?だから、白い肌の孕み子は、無条件で貴族の妻になれると、聖職者から教えて貰ったんだよね。聖職者に奉仕していれば、いつか順番が回ってくるとも聞いた。だから、僕は奉仕しているの。分かったら、余計な事はしないで!」

案内係さんの孕み子さんは、どうやらかなり苛立っているようだ。しかし、彼の口ぶりから、相手が枢機卿だということには、気づいていないようだ。

「そうでしたか。ですが、貴方の容姿では、フォルカー教国に連れ帰る『孕み子候補』にさえなれません。聖職者に騙されて、無駄な奉仕をさせられているだけです。フォルカー教国に行く事は諦めなさい、案内係さん」

「なっ!」

「それと、ガゼボには、先客がおられるようです。彼等の邪魔をしては悪いので、やはり王城の正面玄関口に戻りましょう、案内係さん?」

「ふん!貴方を案内しても、何の利益もない事が分かりました。僕は忙しいので、ここで失礼します。貴方は自力で、正面玄関口に向かって下さい。では、さようなら」

案内係は言葉を一気に吐き出すと、枢機卿を置き去りにして、本当に立ち去ってしまった。庭園に一人残された枢機卿は、呆れた表情を浮かべながら案内係の背を見送っていた。

「アルミン」
「何だ?」

「ガゼボを出るよ」
「ん、今か?」

「枢機卿をこのまま、庭園に放ってはおけないでしょ?王城の正面玄関口まで、案内するつもり。アルミンは私の護衛として、傍を離れないで。それから、殺気を放ったりしないでね?」

「うお、マテウス。ちょっとまて!」
「いざ行かん!」

俺はアルミンに早口で話し掛けた後に、素早く立ち上がった。そして、ガゼボを後にする。

ガゼボから突然現れた俺とアルミンを見ても、枢機卿は驚きはしなかった。優しい笑みを浮かべて、俺達に話しかけてきた。

「騒がしくして申し訳ない。私はこの場を去ります。どうぞお二人は、ガゼボでの逢瀬を続けてください」

金糸に彩られた緋色のローブが風に靡く。緋色と黒の鮮やかな色彩に目を奪われながら、俺は深く息を吐き出した。

そして、ゆっくりと枢機卿に歩みより微笑みを浮かべて話しかけた。



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