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第二章
2-5 カールとマテウス (過去編)
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◆◆◆◆◆◆
カールはマテウスの額に、自身の額を押し付けて話しかける。マテウスは目を丸くしながら、カールの言葉に耳を傾ける。
「マテウス、これからは絶対に一人にはしないからね。僕がグンナーの部屋から、マテウスを連れ出していれば・・マテウスは、言葉を失うことはなかった」
「カール、わる、く、なん、い」
「悪いよ。医者が言ってた。孕み子にとって、今が一番大事な時だって。精神的な痛手から、子宮の成長が止まる子もいるって!」
「はら、っ、はら、みこ、」
「こんな話をしてごめんね、マテウス。でも大切な話なんだ。シュナーベル家は血族結婚が多いから、孕み子は大切に扱われる。だけど、孕み子が孕み子になれなかったら、大切には扱われなくなる。シュナーベル家から、追い出されるかもしれない」
「・・や、や、」
「ごめんね、マテウス。でも、大丈夫だよ。安心して。もし、マテウスが孕み子になれなかったら、僕も一緒にシュナーベル家を出るから」
「い、えで?」
「ん?」
「いえで」
「ああ、家出か!マテウス、それは少し違う。あのね、一緒に王都に行って庶民として暮らすんだよ。その為に、秘密の書物も用意したから!一緒に読む、マテウス?」
「よむ!」
「待っていて、マテウス!」
カールはベッドから抜け出すと、自分の机に向かい、引出しから鍵を取り出す。そして、こんどはマテウスの机に向かい、机の引出しの鍵穴に鍵を差し込む。
「あ、カール!」
「へへ、ごめんね。マテウスの引き出しの鍵は、僕が隠し持っていましたー。随分鍵を探していたのにね、マテウス」
「ひ、ろい!」
「広い?あ、酷いか?」
「うー、ひど、い」
カールはニコニコしながら、ベッドに戻ると手には書物が握られていた。カールはマテウスに書物の題名を見せる。『庶民の暮らし』 と表紙に書かれた書物を見て、マテウスは目を丸くした。
「絵がいっぱいあって楽しいよ。僕達は貴族で、領地の民は平民だ。それで、平民が王都で暮らすと、庶民になる・・たぶん?」
「んん?」
「とにかく、見てよ!僕が驚いたページは、ここ!庶民の子供達は、二段階のベッドで寝ているんだよ!」
「に、に!」
「ここに、絵があるだろ?みて、二段のベッドだろ?ここに梯子があって、夜寝るためには、この梯子をのぼらないと駄目なんだ。兄は上で、弟は下で寝るらしいよ。マテウスが上のベッドだね」
「んー、はし、ご・・」
「安心して、マテウス。もちろん、僕たちが二段ベッドで寝る時は僕が上で寝るから。マテウスが梯子をのぼったら、毎晩転げ落ちて怪我をするに違いないから!」
「いじ、いじわ、カール!」
「ふふ、意地悪じゃないよ。それとね、庶民のベッドはふかふかじゃなくて、すごく固いから腰が痛くなるって」
「やー、いた、や、」
「確かに痛いのは嫌だな。ん、庶民の子供は早起きで、朝御飯の用意を自分でするって。えー、食事が二皿しかない。これ固いパンだな。あと、スープ」
「レーズンチーズケーキ!」
「マテウス、すごくきれいな発音!でも、庶民は、毎日はケーキは食べないよ。大体、マテウスは、ケーキを食べ過ぎだよ。太ったマテウスも可愛いだろうけど、体に悪いよ?」
「・・うー、うー、」
「まって、泣かないで。マテウス!その、庶民になっても、マテウスが毎日ケーキが食べられるように頑張る。早起きは苦手だけど。ん?そうだ、いい案を思い付いた!」
「ん?」
「マテウス!王都でケーキ屋さんを始めようよ。そうしたら、毎日、毎日、甘いケーキを食べられるよ!」
「カール、す、すご、いい!」
「な、いい考えだろ?」
ベッドの中で、マテウスが嬉しそうにカールに抱きつく。カールもマテウスを抱き寄せる。マテウスの体が微かに熱を帯び、しっとりとしていた。マテウスが眠りにつくときは何時も、少し体温が上がりいい香りがする。
「もう・・寝ようか、マテウス?」
「ん、ん、カール、おや、み」
「お休み、マテウス。額にキスするね」
「ん」
マテウスが瞳を閉じる。カールは微笑みながら、何時ものように額にキスをしようとした。だけど、気がつくとマテウスの唇にカール自身の唇を重ねていた。
「マテウス、どうしてかな?こっちが正しい気がする。額へのキスは間違いだった」
何故かカールには、今までの額へのキスが全て間違いであった様な気がしていた。カールは、マテウスが眠ってしまった事を残念に思いながら、再び唇にキスをした。
キスをする度に、カールの体が熱を帯びる。指先が自然と、マテウスの衣服のボタンに向かう。血脈が踊り波打ち、鼓動を高鳴らす。血脈の響きが、これは正しい行為だと、カールに知らせていた。
狂おしいほどの熱が、カールの体内を巡る。やがて、一ヶ所に集中した熱は、それを膨張させた。その現象はカールを戸惑わせたが、とても気持ちがよく快感だった。
マテウスのボタンを全て外すと、カールは耳をマテウスの胸に当て鼓動を聞いた。緩やかに弾むマテウスの鼓動が堪らなく心地よかった。ますます膨張するそこを、マテウスの股に挟み込み深く息を吐いた。
「気持ちいい、マテウス」
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カールはマテウスの額に、自身の額を押し付けて話しかける。マテウスは目を丸くしながら、カールの言葉に耳を傾ける。
「マテウス、これからは絶対に一人にはしないからね。僕がグンナーの部屋から、マテウスを連れ出していれば・・マテウスは、言葉を失うことはなかった」
「カール、わる、く、なん、い」
「悪いよ。医者が言ってた。孕み子にとって、今が一番大事な時だって。精神的な痛手から、子宮の成長が止まる子もいるって!」
「はら、っ、はら、みこ、」
「こんな話をしてごめんね、マテウス。でも大切な話なんだ。シュナーベル家は血族結婚が多いから、孕み子は大切に扱われる。だけど、孕み子が孕み子になれなかったら、大切には扱われなくなる。シュナーベル家から、追い出されるかもしれない」
「・・や、や、」
「ごめんね、マテウス。でも、大丈夫だよ。安心して。もし、マテウスが孕み子になれなかったら、僕も一緒にシュナーベル家を出るから」
「い、えで?」
「ん?」
「いえで」
「ああ、家出か!マテウス、それは少し違う。あのね、一緒に王都に行って庶民として暮らすんだよ。その為に、秘密の書物も用意したから!一緒に読む、マテウス?」
「よむ!」
「待っていて、マテウス!」
カールはベッドから抜け出すと、自分の机に向かい、引出しから鍵を取り出す。そして、こんどはマテウスの机に向かい、机の引出しの鍵穴に鍵を差し込む。
「あ、カール!」
「へへ、ごめんね。マテウスの引き出しの鍵は、僕が隠し持っていましたー。随分鍵を探していたのにね、マテウス」
「ひ、ろい!」
「広い?あ、酷いか?」
「うー、ひど、い」
カールはニコニコしながら、ベッドに戻ると手には書物が握られていた。カールはマテウスに書物の題名を見せる。『庶民の暮らし』 と表紙に書かれた書物を見て、マテウスは目を丸くした。
「絵がいっぱいあって楽しいよ。僕達は貴族で、領地の民は平民だ。それで、平民が王都で暮らすと、庶民になる・・たぶん?」
「んん?」
「とにかく、見てよ!僕が驚いたページは、ここ!庶民の子供達は、二段階のベッドで寝ているんだよ!」
「に、に!」
「ここに、絵があるだろ?みて、二段のベッドだろ?ここに梯子があって、夜寝るためには、この梯子をのぼらないと駄目なんだ。兄は上で、弟は下で寝るらしいよ。マテウスが上のベッドだね」
「んー、はし、ご・・」
「安心して、マテウス。もちろん、僕たちが二段ベッドで寝る時は僕が上で寝るから。マテウスが梯子をのぼったら、毎晩転げ落ちて怪我をするに違いないから!」
「いじ、いじわ、カール!」
「ふふ、意地悪じゃないよ。それとね、庶民のベッドはふかふかじゃなくて、すごく固いから腰が痛くなるって」
「やー、いた、や、」
「確かに痛いのは嫌だな。ん、庶民の子供は早起きで、朝御飯の用意を自分でするって。えー、食事が二皿しかない。これ固いパンだな。あと、スープ」
「レーズンチーズケーキ!」
「マテウス、すごくきれいな発音!でも、庶民は、毎日はケーキは食べないよ。大体、マテウスは、ケーキを食べ過ぎだよ。太ったマテウスも可愛いだろうけど、体に悪いよ?」
「・・うー、うー、」
「まって、泣かないで。マテウス!その、庶民になっても、マテウスが毎日ケーキが食べられるように頑張る。早起きは苦手だけど。ん?そうだ、いい案を思い付いた!」
「ん?」
「マテウス!王都でケーキ屋さんを始めようよ。そうしたら、毎日、毎日、甘いケーキを食べられるよ!」
「カール、す、すご、いい!」
「な、いい考えだろ?」
ベッドの中で、マテウスが嬉しそうにカールに抱きつく。カールもマテウスを抱き寄せる。マテウスの体が微かに熱を帯び、しっとりとしていた。マテウスが眠りにつくときは何時も、少し体温が上がりいい香りがする。
「もう・・寝ようか、マテウス?」
「ん、ん、カール、おや、み」
「お休み、マテウス。額にキスするね」
「ん」
マテウスが瞳を閉じる。カールは微笑みながら、何時ものように額にキスをしようとした。だけど、気がつくとマテウスの唇にカール自身の唇を重ねていた。
「マテウス、どうしてかな?こっちが正しい気がする。額へのキスは間違いだった」
何故かカールには、今までの額へのキスが全て間違いであった様な気がしていた。カールは、マテウスが眠ってしまった事を残念に思いながら、再び唇にキスをした。
キスをする度に、カールの体が熱を帯びる。指先が自然と、マテウスの衣服のボタンに向かう。血脈が踊り波打ち、鼓動を高鳴らす。血脈の響きが、これは正しい行為だと、カールに知らせていた。
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マテウスのボタンを全て外すと、カールは耳をマテウスの胸に当て鼓動を聞いた。緩やかに弾むマテウスの鼓動が堪らなく心地よかった。ますます膨張するそこを、マテウスの股に挟み込み深く息を吐いた。
「気持ちいい、マテウス」
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