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『桔梗屋』の困った旦那さん
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◆◆◆◆◆
躾の行き届いた陰間を男客は望む。なのに、陰間が泣いて部屋を飛び出したとなると、陰間茶屋『蔦屋』の評判に関わる。
事を丸く収めないと、逃げた陰間は折檻を受ける事になる。散花は慌てて弥太郎に尋ねた。
「それは大変やけど、年増の私が行っても客は気を悪くするだけやろ。他に若い子はおらんの、弥太郎さん?」
「相手は呉服商『桔梗屋』の旦那や。他の陰間は嫌がって助っ人に行きたがらん。連れて行っても部屋から逃げ出しそうやから困ってる」
散花は桔梗屋の旦那の顔を思い浮かべて眉を潜める。件の旦那は陰間に無茶な体位を強いて怪我をさせた。その為に、陰間茶屋を出禁になった筈なのだが‥‥。
「桔梗屋の旦那は出禁扱いと違うの?」
「陰間茶屋の大旦那が外出中に、桔梗屋の旦那が茶屋に来てな。若旦那が対応したんやけど、大金を積まれて出禁を解いてしまったんや。で、今はこの始末‥‥」
「あ~、若旦那は金に弱いからな。今頃は大旦那に怒られてる頃やろね。でも一度引き受けたからには、桔梗屋の旦那の相手をせんとしゃあないね。わたしが行くわ。場所はどこ?」
「こことは別の料理屋や。籠を待たせてるから乗ってくれ。」
弥太郎を手を差し出したので、散花はその手に自らの手を添える。弥太郎は散花の手を力強く握りしめた。
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躾の行き届いた陰間を男客は望む。なのに、陰間が泣いて部屋を飛び出したとなると、陰間茶屋『蔦屋』の評判に関わる。
事を丸く収めないと、逃げた陰間は折檻を受ける事になる。散花は慌てて弥太郎に尋ねた。
「それは大変やけど、年増の私が行っても客は気を悪くするだけやろ。他に若い子はおらんの、弥太郎さん?」
「相手は呉服商『桔梗屋』の旦那や。他の陰間は嫌がって助っ人に行きたがらん。連れて行っても部屋から逃げ出しそうやから困ってる」
散花は桔梗屋の旦那の顔を思い浮かべて眉を潜める。件の旦那は陰間に無茶な体位を強いて怪我をさせた。その為に、陰間茶屋を出禁になった筈なのだが‥‥。
「桔梗屋の旦那は出禁扱いと違うの?」
「陰間茶屋の大旦那が外出中に、桔梗屋の旦那が茶屋に来てな。若旦那が対応したんやけど、大金を積まれて出禁を解いてしまったんや。で、今はこの始末‥‥」
「あ~、若旦那は金に弱いからな。今頃は大旦那に怒られてる頃やろね。でも一度引き受けたからには、桔梗屋の旦那の相手をせんとしゃあないね。わたしが行くわ。場所はどこ?」
「こことは別の料理屋や。籠を待たせてるから乗ってくれ。」
弥太郎を手を差し出したので、散花はその手に自らの手を添える。弥太郎は散花の手を力強く握りしめた。
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