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◆◆◆◆◆
僕の着替えが終わると、桐谷さんは僕を抱き上げてリビングに歩きだした。自分で歩けたけど、お漏らしをしちゃったから子供扱いされても仕方ないと思う。でも、ちょっとだけショック。
桐谷さんは、僕を高級ふわふわソファーに座らせると、ゆっくりと話し掛けてくれた。
「涼、良く聞いてくれ。今から飯島瑛太っていう、すげーうるさい奴を部屋に入れる。ガキに手を出す奴じゃない。だが、涼の父親が死んだ時の事を、何度も聞くはずだ。涼は何を聞かれても『分からない』と答えること。いいか?分かったか?」
「桐谷さん、『僕、わかんない』って泣いた方がいいですか?僕のお客は、僕がなくと凄く喜んで金払いが良くなるから、うそ泣きは、マスターしています」
僕の言葉に桐谷さんが黙り込んだ。それから、僕の頭を撫でて少し笑った。
「嘘泣きは必要ないかな、涼。でも、本当に怖かったら泣いていいから。俺がいるから。俺は、お前の親代わりだから遠慮するな」
「はい、桐谷さん!」
桐谷さんはやはりいい人だ。いい人は腹黒いと父さんは言ってたけど、格好いいから腹黒くてもいいや。
「じゃあ、飯島を部屋に入れるからな」
「うん」
桐谷さんがリビングを出て、玄関に向かう。扉が開くと、怒鳴りあいが始まる。やがて、静かになる。そして、桐谷さんと一人の男がリビングに入ってきた。
「このガキが死んだ男の子供か。ふん、まじでガキやな?で、こいつか?鈴木浩介が親父殺しの犯人だと名指ししたのは?」
「瑛太、誤解するな。涼はバスタブで気絶した状態で、父親を殺した犯人を目撃していない。鈴木浩介が第一発見者だから、うちのバカな雇われ店長が誤解して・・まぁ、犯行を自白させようとして、痛め付けたわけや」
「犯行を自白させようとして、拘束して男を強姦するか普通?何で、あんな変態を店長として雇ってるんや?お前ともデキてるんか?」
「あいつは、俺の嫁の兄貴や。なんで、あいつとデキてると思うんや。あほらし。仕事ないって泣きつかれたから雇っただけや」
「もう、お前は一人やろ?妻子は死んだ。いい加減に、過去との繋がりは捨てろや、桐谷」
桐谷さんが、急に鋭い視線を向けた。
「過去との繋がりを切らなあかんのは、瑛太の方やろ?鈴木浩介は潜入捜査官の疑いがあると、父親の飯島孝太郎から聞いてるはずやろが?本来なら、疑われた段階で地下に落として、拷問して吐かせるもんやろが!」
「鈴木は潜入捜査官なんかやない!」
「俺も真実は知らん。そやけど、お前も警戒が足らん。他の組の襲撃からお前を救ったんが鈴木らしいけど、お前は厚遇し過ぎや。身元のよう分からんもんを側近にして、親友関係を築いているらしいやないか」
「あいつは、俺の命の恩人や。厚遇して何が悪いんや!」
「悪くはない。そやけど、あいつが入ってから、情報抜かれて大事な取引先が潰された。やくざは信頼で成り立っとる。組にモグラがおると思われたら、資金源は離れていく」
「鈴木は警察の犬やとは思えん」
「警察の犬とは限らん。他の組の犬か、チャイナ系かも知れんしな」
「結局、お前も何もわかってないやないか!」
「お前の親父は、はっきりさせん方がいいと判断したんやろう。いずれ組の跡目を継ぐ瑛太が、潜入捜査官につけこまれたと回りに知られたら、大きな瑕疵になる。だから、お前の親父は異母兄弟の俺に、厄介者の鈴木浩介を預かるようにゆうてきたんや。はっきり言って、俺にはえらい迷惑やで、瑛太」
「俺は鈴木が、俺を騙したとは思ってない。でも、今回の件で、親父は鈴木を地下に落として、このガキの親を殺したんか、拷問して聞き出す気や。でも、目的は拷問自体にある。拷問された奴は、何人も見てきた。みんな廃人にされとった。親父は鈴木を廃人にするつもりや」
「それを聞かされても、俺には何もできん。お前の親父とは異母兄弟やが、立場がちがう。しがない風俗店のオーナーに、お前は何を期待してるんや、瑛太?」
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