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花木静

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花木は完全個室に僕たちを案内すると、部屋に設置された冷蔵庫に向かう。そして、白ワインとチーズを取り出してテーブルに置いた。

「おー、豪華な部屋!」
「凄いな」

花木が案内した部屋は、特別室に相応しく豪華な作りだった。僕と雄一は思わず感想を口にしていた。部屋には大きなソファーが設置され、僕と雄一はさっそく腰をおろした。座り心地、最高!

「ドリンクや軽食等は全て部屋代に含まれております。ご自由にご飲食下さい。また、部屋に置かれた玩具等は衛生面に細心の注意を払っております。どうぞ、安心してご利用下さい」

こんなに大人の玩具があったとは知らなかった。ここが、特別室だからだろうか?

正樹と店に来ていた時は、何時も中ランクの部屋だった。そして、一緒にシコシコするだけ。玩具を使用したこともない。結婚初夜まで、全部初めてでいたかったから。正樹もそれを許してくれた。なのに・・。

「では、失礼致します」

一通り説明を終えると、花木は一礼して部屋を出ていこうとした。

「ちょっと待って、花木さん」
「っ、はい?」

僕は花木の腕を掴んで引き止めていた。そして、花木を見つめて詰問する。

「状況を説明して。正樹はどうして風俗店で働いているの?」

「これは夫婦の問題ですから、説明の必要があるとは思えません。お二人はすでに離婚されていますので」

花木の思わぬ反撃に驚き、僕は押し黙ってしまった。そんな僕を擁護してくれたのは、雄一だった。

「離婚は成立しているが、慰謝料の請求はこれからだ。その請求相手が本業をクビになりかねない仕事に従事していては、不安にもなる。花木さんが伊集院の伴侶なら説明すべきだ」

「それは・・」
「とにかく、状況が知りたい」
「わかりました。ご説明します」

花木は俯きながら説明を始めた。

「僕の父親が闇金に借金を重ね、僕は脅されて連帯保証人にされました。そして、闇金の関係者に風俗店を紹介され、そこで働くようになりました。そこは暴力団がらみの店で扱いも酷く・・僕の精神はボロボロになっていきました。そんな時に、僕は運命の番の正樹さんと出逢いました」

「僕の結婚式の最中にね」

僕の皮肉にも花木は狼狽えはしなかった。むしろ、目を輝かせて正樹との出逢いを饒舌に語る。

「運命の番との出逢いは・・あまりに突然で劇的なものでした。心が解放され、僕たちは抱き合っていました。首筋を噛まれた僕は、自身が抱える事情を泣きながら正樹さんに打ち明けていました。そして、彼は僕の負の部分も全て受け入れてくれたのです。正樹さんはとても・・」

僕は花木の話を制した。これ以上聞いていられない。ムカつく。

「甘い話は必要ないから。それで、借金の件はどうなったの?」

「正樹さんがこの店のオーナーの香川さんと知り合いで、僕の件を相談してくれました。そうしたら、香川オーナーが面白がって僕を借金ごと購入してくれたのです。勿論、借金自体はなくなっていないので、オーナーのすすめで『鏡の国』で働くことになりました。風俗店には代わりありませんが、以前の店は・・色々と危ない目にも遭っていたので、正樹さんにもオーナーにも感謝しています」

「なるほど。じゃあ、花木さんと正樹がショーに出るのもオーナーの指示って事か」

「あ、いえ。その・・僕はショーには出ていません。正樹さんがオーナーに頼み込んでくれて、僕は接客業のみを担当しています。代わりに、正樹さんが頻繁にショーに出ることで、香川オーナーは納得してくれました」

「なにそれ?」



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