[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)

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花木静

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◆◆◆◆◆

花木は完全個室に僕たちを案内すると、部屋に設置された冷蔵庫に向かう。そして、白ワインとチーズを取り出してテーブルに置いた。

「おー、豪華な部屋!」
「凄いな」

花木が案内した部屋は、特別室に相応しく豪華な作りだった。僕と雄一は思わず感想を口にしていた。部屋には大きなソファーが設置され、僕と雄一はさっそく腰をおろした。座り心地、最高!

「ドリンクや軽食等は全て部屋代に含まれております。ご自由にご飲食下さい。また、部屋に置かれた玩具等は衛生面に細心の注意を払っております。どうぞ、安心してご利用下さい」

こんなに大人の玩具があったとは知らなかった。ここが、特別室だからだろうか?

正樹と店に来ていた時は、何時も中ランクの部屋だった。そして、一緒にシコシコするだけ。玩具を使用したこともない。結婚初夜まで、全部初めてでいたかったから。正樹もそれを許してくれた。なのに・・。

「では、失礼致します」

一通り説明を終えると、花木は一礼して部屋を出ていこうとした。

「ちょっと待って、花木さん」
「っ、はい?」

僕は花木の腕を掴んで引き止めていた。そして、花木を見つめて詰問する。

「状況を説明して。正樹はどうして風俗店で働いているの?」

「これは夫婦の問題ですから、説明の必要があるとは思えません。お二人はすでに離婚されていますので」

花木の思わぬ反撃に驚き、僕は押し黙ってしまった。そんな僕を擁護してくれたのは、雄一だった。

「離婚は成立しているが、慰謝料の請求はこれからだ。その請求相手が本業をクビになりかねない仕事に従事していては、不安にもなる。花木さんが伊集院の伴侶なら説明すべきだ」

「それは・・」
「とにかく、状況が知りたい」
「わかりました。ご説明します」

花木は俯きながら説明を始めた。

「僕の父親が闇金に借金を重ね、僕は脅されて連帯保証人にされました。そして、闇金の関係者に風俗店を紹介され、そこで働くようになりました。そこは暴力団がらみの店で扱いも酷く・・僕の精神はボロボロになっていきました。そんな時に、僕は運命の番の正樹さんと出逢いました」

「僕の結婚式の最中にね」

僕の皮肉にも花木は狼狽えはしなかった。むしろ、目を輝かせて正樹との出逢いを饒舌に語る。

「運命の番との出逢いは・・あまりに突然で劇的なものでした。心が解放され、僕たちは抱き合っていました。首筋を噛まれた僕は、自身が抱える事情を泣きながら正樹さんに打ち明けていました。そして、彼は僕の負の部分も全て受け入れてくれたのです。正樹さんはとても・・」

僕は花木の話を制した。これ以上聞いていられない。ムカつく。

「甘い話は必要ないから。それで、借金の件はどうなったの?」

「正樹さんがこの店のオーナーの香川さんと知り合いで、僕の件を相談してくれました。そうしたら、香川オーナーが面白がって僕を借金ごと購入してくれたのです。勿論、借金自体はなくなっていないので、オーナーのすすめで『鏡の国』で働くことになりました。風俗店には代わりありませんが、以前の店は・・色々と危ない目にも遭っていたので、正樹さんにもオーナーにも感謝しています」

「なるほど。じゃあ、花木さんと正樹がショーに出るのもオーナーの指示って事か」

「あ、いえ。その・・僕はショーには出ていません。正樹さんがオーナーに頼み込んでくれて、僕は接客業のみを担当しています。代わりに、正樹さんが頻繁にショーに出ることで、香川オーナーは納得してくれました」

「なにそれ?」



◆◆◆◆◆
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