娼館で働く托卵の子の弟を義兄は鳥籠に囲いたい

月歌(ツキウタ)

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第二部 シノ=アングル

第10話 ガイズ

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娼館の裏口からヤンと共に外に出ると、思った通りガイズがいた。ガイズは娼館で起こる荒事を収める為に雇われている。

「ヤンを連れてどこに行くんですか、シノさん?」

「お前には関係のないことだ」

ヤンを抱き寄せてそう言うと、ガイズは嫌な笑みを浮かべ口を開いた。

「貴方の親父さんからヤンを見張るように命令されたんですよ。ヤンが何をしたのかは知らないが男娼になるんでしよ?」

ガイズは目を細めてヤンをジロジロと見てきた。嫌な眼差しだ。ヤンもそう思ったのか、男から視線をそらせて俯く。

俺はヤンの肩を強く抱き寄せると、ガイズを無視して歩き出した。

「無視しないで貰いたいね、シノ」
「‥‥」

「アンタがもしもヤンを逃がしたら、俺はアンタの母親を邸から叩き出さないとならなくてね。面倒事を増やさないで欲しいな、シノ」

俺が唇を噛みしめるのと同時に、腕の中のヤンが声を上げた。

「っ、それはどういう事!?」
「ヤン、黙っていろ」
「でも!」

俺はヤンを制してガイズに話しかける。

「赤の他人を逃して母親を窮地に追い込む馬鹿がどこにいる。今から公衆浴場に行ってコイツを男娼として仕上げるつもりだ」

「ほう?」

「お前だって綺麗な尻に突っ込みたいと思うだろ?まあ、お前に突っ込ませるつもりはないがな。」

ガイズはニヤつきながら俺たちに近づくと、ヤンの顔を覗き込んだ。

「俺は別に気にしないけどね。スカトロ好きだし。アンタが嫌なら俺がヤンを男娼に仕上げてもいい。」

ガイズがヤンの肩に触れた時、俺は男の脇腹に蹴りを入れていた。男は呻きながら俺達から距離を取り睨みつけてきた。

「シノ、てめぇ」

「お前が悪い、ガイズ。俺のモノに触るな。殺すぞ」

「‥‥‥っ」

ガイズは唾を地面に吐き出すと、不機嫌な表情のまま言葉を発する。

「じゃあ、アンタがヤンを男娼に仕上げるまで‥‥俺も公衆浴場で待つとするか」

「部屋には入れないぞ」
「そこまで野暮じゃないさ」

「そうか‥‥なら勝手にしろ。ヤン、行くぞ」

震えるヤンを抱き寄せて、俺は歩くように促した。ヤンは静かに頷いて歩き出す。公衆浴場は娼館のすぐそばにある‥‥ガイズを撒くのは無理か。


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