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第一部 ヤン=ビーゲル
第9話 兄に宛てた手紙
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◆◆◆◆◆
僕は泡だらけの体で立ち上がり、ドトールに向かって気持ちを吐き出した。
「僕は兄上に手紙を出したんだ、ドトール。その手紙は多分兄上を酷く傷つけたと思う。だからこれ以上は兄上を傷つけたくないんだ。わかってよ、ドトール。」
ドトールは僕の両腕を掴むと僕の目を覗き込み尋ねてきた。
「手紙の内容を教えてください」
僕は迷いながらも手紙の内容を口にした。
「『友人と二人でパン工房を開くために頑張っているから、もう僕のことは忘れてください。僕は庶民で兄上は貴族です。僕達を繋ぐものはもう何もありません。僕はその現実を受け止めました。ですから、兄上も現実を受け止めて下さい。これは弟として兄上への最後のお願いです』」
手紙の内容があまりに冷たく兄上を突き放していて、たまらなくなる。涙が出そうになったが必死で我慢した。
「その手紙は‥‥ライナー様の想いを踏みにじるものです。ヤン様はライナー様がどれほど貴方の身を案じておられているか知るべきです。」
「ドトール!」
「‥‥ヤン様の傷が恋人との交わりでできたものならば、まだ考える余地もありました。ですが男娼として傷を負わされたのならば‥‥選択の余地はありません。治療後、貴方をこの色街から連れ出します。」
ドトールがそう言い放った時、不意にシノが口を挟んだ。
「ちょっとまってくれ!」
「貴方は黙っていて下さい、シノ。」
「いや、黙ってはいられない」
「ヤン様が貴方の父上の娼館で働いていることは承知しています。金を払って身請けをすれば問題はないはずです?そうですよね、シノ?」
ドトールの言葉にシノは頭をかきつつ困り顔で口を開く。
「まあ、ヤンを身請けしてもらえるなら‥‥問題はないか。それより、ヤンが勃起しているんだが‥‥おかしくないか?」
「はぁ~!?」
僕は驚いて下半身を見た。
確かに勃起している。
何故だ!?
不意に僕の両腕を掴んでいたドトールが、僕の前から飛び退く。そして、狼狽えて僕の下半身を見てくる。いや、見ないでくれ!
「まさか私に欲情したのですか?」
「誤解だ、ドトール」
「なら俺に欲情したな、ヤン!」
「してない!してないと思う。でも、そういえば‥‥なんだかエロい気分がする‥‥なんでだ!?」
僕を含めた三人が部屋で立ち尽くす。しばらく沈黙が落ちた後、最初に口を開いたのはシノだった。
「もしかして‥‥‥媚薬入りの石鹸だったとか?」
「え!?」
僕はドトールに視線を向けた。彼は慌てて否定する。
「誤解です、ヤン様。私は受付のルートに最高級の石鹸を売って欲しいと頼みましたが、媚薬入りの石鹸など頼んではいません!」
ドトールの言葉に突っ込みを入れたのはシノだった。
「その石鹸いくらしたんだ?」
「金貨一枚だが?」
「石鹸に金貨一枚とか、完全に媚薬入りだろ!もうお前を先生とは呼ばないぞ、ドトール。お前はヤブ医者ではないが、ただの世間知らずの馬鹿だ。とにかく、媚薬成分を抜くぞ」
シノの迫力に圧倒されて後ずさりながら、僕は彼に尋ねた。
「ど、どうやって抜くの?」
「とにかく射精しろ。」
「そんな!」
「まさか!」
僕とドトールは同時に叫んでいた。
世間知らず二人が、色街育ちのシノの前で呆然と立ち尽くす事になる。
◆◆◆◆◆◆
僕は泡だらけの体で立ち上がり、ドトールに向かって気持ちを吐き出した。
「僕は兄上に手紙を出したんだ、ドトール。その手紙は多分兄上を酷く傷つけたと思う。だからこれ以上は兄上を傷つけたくないんだ。わかってよ、ドトール。」
ドトールは僕の両腕を掴むと僕の目を覗き込み尋ねてきた。
「手紙の内容を教えてください」
僕は迷いながらも手紙の内容を口にした。
「『友人と二人でパン工房を開くために頑張っているから、もう僕のことは忘れてください。僕は庶民で兄上は貴族です。僕達を繋ぐものはもう何もありません。僕はその現実を受け止めました。ですから、兄上も現実を受け止めて下さい。これは弟として兄上への最後のお願いです』」
手紙の内容があまりに冷たく兄上を突き放していて、たまらなくなる。涙が出そうになったが必死で我慢した。
「その手紙は‥‥ライナー様の想いを踏みにじるものです。ヤン様はライナー様がどれほど貴方の身を案じておられているか知るべきです。」
「ドトール!」
「‥‥ヤン様の傷が恋人との交わりでできたものならば、まだ考える余地もありました。ですが男娼として傷を負わされたのならば‥‥選択の余地はありません。治療後、貴方をこの色街から連れ出します。」
ドトールがそう言い放った時、不意にシノが口を挟んだ。
「ちょっとまってくれ!」
「貴方は黙っていて下さい、シノ。」
「いや、黙ってはいられない」
「ヤン様が貴方の父上の娼館で働いていることは承知しています。金を払って身請けをすれば問題はないはずです?そうですよね、シノ?」
ドトールの言葉にシノは頭をかきつつ困り顔で口を開く。
「まあ、ヤンを身請けしてもらえるなら‥‥問題はないか。それより、ヤンが勃起しているんだが‥‥おかしくないか?」
「はぁ~!?」
僕は驚いて下半身を見た。
確かに勃起している。
何故だ!?
不意に僕の両腕を掴んでいたドトールが、僕の前から飛び退く。そして、狼狽えて僕の下半身を見てくる。いや、見ないでくれ!
「まさか私に欲情したのですか?」
「誤解だ、ドトール」
「なら俺に欲情したな、ヤン!」
「してない!してないと思う。でも、そういえば‥‥なんだかエロい気分がする‥‥なんでだ!?」
僕を含めた三人が部屋で立ち尽くす。しばらく沈黙が落ちた後、最初に口を開いたのはシノだった。
「もしかして‥‥‥媚薬入りの石鹸だったとか?」
「え!?」
僕はドトールに視線を向けた。彼は慌てて否定する。
「誤解です、ヤン様。私は受付のルートに最高級の石鹸を売って欲しいと頼みましたが、媚薬入りの石鹸など頼んではいません!」
ドトールの言葉に突っ込みを入れたのはシノだった。
「その石鹸いくらしたんだ?」
「金貨一枚だが?」
「石鹸に金貨一枚とか、完全に媚薬入りだろ!もうお前を先生とは呼ばないぞ、ドトール。お前はヤブ医者ではないが、ただの世間知らずの馬鹿だ。とにかく、媚薬成分を抜くぞ」
シノの迫力に圧倒されて後ずさりながら、僕は彼に尋ねた。
「ど、どうやって抜くの?」
「とにかく射精しろ。」
「そんな!」
「まさか!」
僕とドトールは同時に叫んでいた。
世間知らず二人が、色街育ちのシノの前で呆然と立ち尽くす事になる。
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