英雄の恋人(♂)を庇って死ぬモブキャラですが死にたくないので庇いませんでした

7

◆◆◆◆◆◆


「エアハルト、誤解しないでね？」
「何を？」

「俺が英雄相手に、婚活仕掛けるとかあり得ないからね？誘ってないから引かないでくれよ。俺が狙っている男は、ムキムキ冒険者だから。冒険者を引退した後に、実家の農家の跡継ぎになってくれそうな人を探していているんだ。さすがの俺も、英雄を農家の跡継ぎにはしないから。圏外だから安心していいよ？」

「圏外・・」

エアハルトが、なんとも複雑な顔をしながら俺を見つめてきた。

「安心しただろ、エアハルト？でも、なかなか婚活ってうまくいかないものだな。俺が魔王討伐の一員だったと知れると、何故か恐れられて・・結婚の話を持ち出したら皆逃げていくんだよな。で、おもいっきり凹んでるところで、結婚詐欺師に出逢ってしまって・・報奨金の半分を奪われました。笑うしかない！」

「笑えない！」

「いや、笑ってくれ！エアハルト、何とそのムキムキ結婚詐欺師は常習犯だった！甘い言葉で人を騙しまくって、金ばかりか、孕み子の尻ももれなく頂いてやがった！そんな奴が・・俺とはセックスをせず、清い関係のまま金だけ奪い俺の前から去っていった。くそ、何故だ！？」

「まて、ダニエル。論点がずれているぞ！ちなみに、その結婚詐欺師はどうなった？」

「俺の次に騙された孕み子が、勇気ある告発を自警団にしてくれて、結婚詐欺師は捕まった！俺は自警団から連絡をもらい、ようやく詐欺にあったと気がついたわけだ。だが、奴に貸した金は既に・・ギャンブルと酒に溶けていた。あいつ、親が重病とか、借金で殺されるとか、俺に泣きついておきながら・・全部嘘だった！だが、全ては済んだことだ。今頃は、奴は牢獄で囚人達から、尻をガツガツされている頃だろう。ざまあ！よし、気分を切り替えて、婚活再開だ！」

エアハルトが、とても可哀想なモノを見るような眼差しを向けてきた。俺は思わず視線を反らしてしまった。

「ダニエル・・婚活は一旦、中止にしてはどうだ？どうも、ストレスが溜まっているようだ。魔力耐性も、落ちているように思える」

俺はエアハルトの言葉に、思わず彼に視線を向けてしまった。

「んー、やっぱり魔法耐性が落ちてる？エアハルトが魔法で話し掛けてきたとき、少し頭痛を感じたものな・・」

「やはり、ストレスが原因だろ。なあ、婚活の事は一旦忘れろよ。それより、一緒に魔物狩りしないか？酒も断ったし・・俺も、久しぶりに体を動かしたい。魔法剣士と回復魔法師がいれば完璧だ。だろ、ダニエル？」

「だね、エアハルト！」

エアハルトが笑い掛けてくれたので、俺も微笑んで返事をしていた。


◆◆◆◆◆◆