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第5話 少女
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◆◆◆◆◆◆
マンションのベランダ。
ここが、あたしの部屋。
お父さんもお母さんもあたしは臭いって言うの。
自分でも臭いと思う。
だって・・・何日も、お風呂に入っていないから。
だから臭いの。
あたしは臭い。
あたしが臭いから悪いの。だから、ベランダに追い出される。
今日もご飯を食べていない。今日は焼肉だけど、あたしが傍にいると臭いから肉が美味しくなくなるってお父さんもお母さんも言う。
昨日も何も食べてないから、あたしはとってもお腹が空いているの。
だから、あたしも食べたいって言ったらお父さんに蹴られた。
臭いお前に食べさせるお肉はないって。
早く出て行けって。
お前の体臭が臭くて食欲がなくなるから、ベランダに出ろって言うの。
だから、あたしは自分の部屋に向かった。
ベランダはあたしの部屋。
お父さん。
お母さん。
あのね・・・・最近、なんだかまっすぐ歩けないの。
ふらふらする。
目が回るの。でも、そんな事言ったらきっと殴られるから黙ってる。
だって、あたしがまっすぐ歩けないのは怠け者で間抜けで馬鹿だから。
お父さんもお母さんも言ってた。
馬鹿だからまっすぐに歩けないんだって。
ふらふらするのは、あたしが悪いの。
目の前が霞むのもあたしが悪いの。
お腹空いた。
ベランダに出ても部屋からお肉の焼ける匂いがしてくるの。
あたし。
あたし・・・お腹空いたの。
お願い。
食べたい。いっぱい唾出てくる。
お腹すいた。
涙がね・・・・いっぱい出てくるの。
ごめんなさい。ごめんなさい。
お父さん、お母さん。
あたしは悪い子だけど、一切れでいいからお肉頂戴。
お腹空いたの。
何にも食べてないの。今日も何もくれないの?
あたし・・・今日も悪い子だった?
お父さん。
お母さん。
あのね・・・あたしね、ベランダ結構好きだよ。
だってね、ここにいたら殴られないし蹴られないし、痛くないから。
ここは、寒いけど痛くないから。
寂しいけど、怖くないから。
それにね、このベランダにいるとね黒いナイフの王子様が現れるから好きなの。
目の前に建ってるマンションを少し見上げるとね、王子様が時々ベランダに現れるの。
いつも一人ベランダの塀に寄りかかって、王子様は遠くの方を見つめているの。
それでね。
時々、すごくね、すごく寂しそうな顔で黒いナイフを見つめているの。
何を考えているのかな?
あたしはいつも向かいのベランダから王子様を見上げているの。
王子様は、あたしには気が付かない。
でも、いいの。
あたしだけの、王子様。
ベランダの黒いナイフの王子様。
ナイフを手にして、遠いお空を見つめてる。あたしはそれを見上げるだけだけど、それだけで胸がふんわり暖かくなるの。
お腹が空いているのも忘れちゃうの。
殴られたところも痛くなくなるの。
私は臭いから、きっと王子様はあたしに気が付いたら嫌な顔をするだろうけど。
もしかしたら。
もしかしたら。
王子様はあたしに気が付いて。
笑いかけてくれるかもしれない。
あたしの事を、嫌わないで微笑みかけてくれるかもしれない。
そうしたら、あたしはどうしよう。
あたしはすごく臭いけど。何日も着替えていないし、服も髪の毛も汚れているけど。
でも、でも。
王子様がもし来てくれたら。
あたし。
あたし・・・一緒に王子様と暮らしたいな。
笑いたいな。
もう、泣きたくないな。
苦しいのも、痛いのもお腹が空くのも嫌だもの。
あたし、黒いナイフの王子様と結婚したらこのベランダからでられるのかな?
出たいな。
出たいよ。
出たいよ・・・・ここから。
◆◆◆◆◆◆
マンションのベランダ。
ここが、あたしの部屋。
お父さんもお母さんもあたしは臭いって言うの。
自分でも臭いと思う。
だって・・・何日も、お風呂に入っていないから。
だから臭いの。
あたしは臭い。
あたしが臭いから悪いの。だから、ベランダに追い出される。
今日もご飯を食べていない。今日は焼肉だけど、あたしが傍にいると臭いから肉が美味しくなくなるってお父さんもお母さんも言う。
昨日も何も食べてないから、あたしはとってもお腹が空いているの。
だから、あたしも食べたいって言ったらお父さんに蹴られた。
臭いお前に食べさせるお肉はないって。
早く出て行けって。
お前の体臭が臭くて食欲がなくなるから、ベランダに出ろって言うの。
だから、あたしは自分の部屋に向かった。
ベランダはあたしの部屋。
お父さん。
お母さん。
あのね・・・・最近、なんだかまっすぐ歩けないの。
ふらふらする。
目が回るの。でも、そんな事言ったらきっと殴られるから黙ってる。
だって、あたしがまっすぐ歩けないのは怠け者で間抜けで馬鹿だから。
お父さんもお母さんも言ってた。
馬鹿だからまっすぐに歩けないんだって。
ふらふらするのは、あたしが悪いの。
目の前が霞むのもあたしが悪いの。
お腹空いた。
ベランダに出ても部屋からお肉の焼ける匂いがしてくるの。
あたし。
あたし・・・お腹空いたの。
お願い。
食べたい。いっぱい唾出てくる。
お腹すいた。
涙がね・・・・いっぱい出てくるの。
ごめんなさい。ごめんなさい。
お父さん、お母さん。
あたしは悪い子だけど、一切れでいいからお肉頂戴。
お腹空いたの。
何にも食べてないの。今日も何もくれないの?
あたし・・・今日も悪い子だった?
お父さん。
お母さん。
あのね・・・あたしね、ベランダ結構好きだよ。
だってね、ここにいたら殴られないし蹴られないし、痛くないから。
ここは、寒いけど痛くないから。
寂しいけど、怖くないから。
それにね、このベランダにいるとね黒いナイフの王子様が現れるから好きなの。
目の前に建ってるマンションを少し見上げるとね、王子様が時々ベランダに現れるの。
いつも一人ベランダの塀に寄りかかって、王子様は遠くの方を見つめているの。
それでね。
時々、すごくね、すごく寂しそうな顔で黒いナイフを見つめているの。
何を考えているのかな?
あたしはいつも向かいのベランダから王子様を見上げているの。
王子様は、あたしには気が付かない。
でも、いいの。
あたしだけの、王子様。
ベランダの黒いナイフの王子様。
ナイフを手にして、遠いお空を見つめてる。あたしはそれを見上げるだけだけど、それだけで胸がふんわり暖かくなるの。
お腹が空いているのも忘れちゃうの。
殴られたところも痛くなくなるの。
私は臭いから、きっと王子様はあたしに気が付いたら嫌な顔をするだろうけど。
もしかしたら。
もしかしたら。
王子様はあたしに気が付いて。
笑いかけてくれるかもしれない。
あたしの事を、嫌わないで微笑みかけてくれるかもしれない。
そうしたら、あたしはどうしよう。
あたしはすごく臭いけど。何日も着替えていないし、服も髪の毛も汚れているけど。
でも、でも。
王子様がもし来てくれたら。
あたし。
あたし・・・一緒に王子様と暮らしたいな。
笑いたいな。
もう、泣きたくないな。
苦しいのも、痛いのもお腹が空くのも嫌だもの。
あたし、黒いナイフの王子様と結婚したらこのベランダからでられるのかな?
出たいな。
出たいよ。
出たいよ・・・・ここから。
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