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第3話 黒闇姫
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◆◆◆◆◆◆
大学に入ってから、一人暮らしを始めている。
一人きりの夜。
僕は、ベッドの上に寝転がりながらお気に入りのナイフを見つめるのが日課になっている。
日本橋の電気街の裏手。
いつもはナイフのお店なんて覗くこともないのに、僕は気まぐれにふらりと立ち寄った。
そして、そのナイフに出逢ったんだ。
黒光りする鞘。
女性的なフォルム。
しなやかな力強さ。
一目惚れ。
そして、衝動買い。
僕の手に収まったナイフはしっくりと馴染み、まるで捜し求めていた恋人に出逢ったような衝撃を受けた。
捜し求めていた恋人に出逢ったような・・・?
笑えるな・・・自分に。
現実の世界で、恋人に振られたばかりなのに。
「好きな人ができたの・・・・」
そんな簡単な言葉で、彼女は僕から去っていった。
彼女が選んだ男は、僕の友人。
友人に恋人を奪われた間抜けな僕。
なのに・・その恋人を奪い取った男といまだに縁の切れない情けない僕。
たった一人の夜。
僕は、ありえない未来を空想して目を瞑る。
一目惚れした僕のナイフは、僕を腐敗した思考の世界に導いてくれる。
驚いた友人の顔。
『なんで・・や・・?』
そう呟きながらナイフで刺された腹部を押さえ、僕の目の前に崩れ落ちる友人。
僕は真っ赤に染まったナイフをさらに、振り上げる。
そんな妄想。
僕がまともならありえない未来だけど。
まともでない人間は、この世には溢れるほどに存在する。
僕がその一員にならないと、どうして言い切れる?
一人寝の夜。
ベッドでナイフを見つめながら、僕は不意にその凶器に名前を付けたくなった。
ナイフに名前を付けたいと思うなんて、僕はかなりいかれているのかもしれない。
黒光りする美しい鞘にナイフを収めて、僕はじっとそれを見つめる。
「黒闇姫」
僕は、直感のままにそんな名前を口にしていた。
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大学に入ってから、一人暮らしを始めている。
一人きりの夜。
僕は、ベッドの上に寝転がりながらお気に入りのナイフを見つめるのが日課になっている。
日本橋の電気街の裏手。
いつもはナイフのお店なんて覗くこともないのに、僕は気まぐれにふらりと立ち寄った。
そして、そのナイフに出逢ったんだ。
黒光りする鞘。
女性的なフォルム。
しなやかな力強さ。
一目惚れ。
そして、衝動買い。
僕の手に収まったナイフはしっくりと馴染み、まるで捜し求めていた恋人に出逢ったような衝撃を受けた。
捜し求めていた恋人に出逢ったような・・・?
笑えるな・・・自分に。
現実の世界で、恋人に振られたばかりなのに。
「好きな人ができたの・・・・」
そんな簡単な言葉で、彼女は僕から去っていった。
彼女が選んだ男は、僕の友人。
友人に恋人を奪われた間抜けな僕。
なのに・・その恋人を奪い取った男といまだに縁の切れない情けない僕。
たった一人の夜。
僕は、ありえない未来を空想して目を瞑る。
一目惚れした僕のナイフは、僕を腐敗した思考の世界に導いてくれる。
驚いた友人の顔。
『なんで・・や・・?』
そう呟きながらナイフで刺された腹部を押さえ、僕の目の前に崩れ落ちる友人。
僕は真っ赤に染まったナイフをさらに、振り上げる。
そんな妄想。
僕がまともならありえない未来だけど。
まともでない人間は、この世には溢れるほどに存在する。
僕がその一員にならないと、どうして言い切れる?
一人寝の夜。
ベッドでナイフを見つめながら、僕は不意にその凶器に名前を付けたくなった。
ナイフに名前を付けたいと思うなんて、僕はかなりいかれているのかもしれない。
黒光りする美しい鞘にナイフを収めて、僕はじっとそれを見つめる。
「黒闇姫」
僕は、直感のままにそんな名前を口にしていた。
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