兄上の五番目の花嫁に選ばれたので尻を差し出します

月歌(ツキウタ)

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淫紋を刻まれた勇者

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◆◆◆◆◆

肩を竦めたままクリムゾンは、僕の質問に答える風もなく歩く。僕はクリムゾンに、また蹴りを入れた。足は痛かったが仕方ない。

「もう少し魔王の花嫁としての気品を身に付けろよ、アムール。いくら、五番目の花嫁でも、儀式の時には魔王と並び立つ訳だからな」

「うるせぇ~。それより、勇者の件」

「勇者を魔王城で捕らえた際、魔王自らが奴に淫紋を刻んだ。問題は起こらないさ。安心したか、アムール?」

「うへぇ、淫紋かぁ~」

淫紋を刻まれては、勇者でも抵抗はできないか。それでも、勇者の様子を見た限り、デッドリー兄上に絶対服従という感じでもなかったな。

「淫紋を刻まれたのに、あの勇者は未だに抵抗の言葉を吐いてなかった?」

「さすが勇者というところかな?勇者の仲間も同時に淫紋を刻まれたが、すでに魔人たちの玩具となり淫乱な行為に耽っている。魔王に吸血されなければ、情欲に支配されて誰にでも股を開くようになるからな」

「・・デッドリー兄上は勇者のみを吸血しているの、クリムゾン?」

なんとなく、胸にもやもやした気持ちが広がる。兄上が勇者に覆い被さり、ベッドで吸血行為を行う姿を思い出してしまった。急に体が火照り戸惑う。

「最初は魔王も他の仲間を吸血していたが、今は勇者のみだ。勇者の血液が特別に旨いんじゃないのか?」

「僕のも旨いって言ってた・・」

「いや、そこで張り合ってどうするんだよ?勇者に嫉妬してるのか?」

クリムゾンに突っ込まれて、僕は彼の手を振りほどいた。そして、彼を置いてきぼりにして廊下を歩く。

「アムール」

「僕は魔王の五番目の花嫁だから、誘拐なんてあり得ないよ。男にエスコートされても嬉しくないし」

「悪かったよ、アムール。お前の反応がいちいち可愛いから煽りすぎた。許せ、アムール」

クリムゾンが再び手を差し出さしてきた。僕はしばらく躊躇った後に手を重ねた。

「先代の魔王は、勇者と相討ちとなり亡くなった。同時に、五人の花嫁は灰になった。デッドリー兄上だって、目の前で母親が灰になるのを見たはずだ。僕だって・・母上が灰になるのを見た。なのに、どうして兄上は勇者を生かしているんだ?危険な存在は早々に処分すべきだ」

不意にクリムゾンに肩を抱きよせられた。僕が戸惑ってクリムゾンを見ると、彼は僕の髪を撫でて応じる。

「先代の魔王を倒した勇者は特別だった。俺も長く生きてきたが、あれほど強い力を持った勇者を知らない。今の勇者とは、比べようのない力量差がある。不安になる事はない、アムール」

「力量の差ね・・」

僕はクリムゾンに甘えて彼にもたれ掛かった。


◆◆◆◆◆

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