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第43話 証拠を消す為に
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◆◆◆◆◆
「まずは牢獄の玉木と梅田を精神病院に移動させないとね。病院の院長に直接交渉してみるよ。」
金田はそう言うとスマホを取り出し電話をかけた。相手はすぐに出たようで、金田は用件を話しながらリビングをゆっくりと歩く。
俺は何となく金田の姿を目で追った後、その視線を窓の外に向けた。
「雨がやんでる」
朝から降っていた雨があがり、雲間の光芒が和歌山の海を美しく照らし出す。
「綺麗だな‥‥。」
俺はソファーから立ち上がり窓辺に向かうと、窓ガラスに手をあてがった。ひやりとした冷たい窓ガラスの感触が気持ちいい。
「どうしたの、秋山君?」
「雨が止んだから海を見ていただけだ。それより、院長との話はもう終わったのか?」
「院長に頼んだらすんなりと許可がでたよ。その代わり、看護師を増やして欲しいと交換条件を出されたけどね。でも、条件を出してくれた事でこちらも交渉しやすかった。」
「へえ?」
「玉木や梅田と一緒に佐々木の面倒もみてもらう事になったんだ。」
あの短期間の電話でそこまで交渉していたのか。俺は金田の意外な一面に驚き思わず言葉にする。
「お前‥‥コミュ障かと思ったら意外と使える奴だな。」
俺が素直な感想を口にすると、金田は眉を潜めてこちらを見てくる。褒めたつもりだったが、言い方が悪かったかも?
「褒めたんだが?」
「全然褒められた気がしない。」
「すごい、金田。やるな、金田」
「絶対褒めてない。」
「いや、マジで褒めてるから。高校を卒業してから金田は引きこもり生活をしていたんだろ?だから、他人と交渉したりするのは苦手だと思っていた。すごいな、光一。」
俺がそう言うと金田は急に照れくさそうに視線を逸らす。そして、金田は窓の外を見ながら言葉を発した。
「晴れてきたね。」
「ああ、このまま晴れそうだな。」
「秋山君」
「ん?」
「今から玉木達を病院に連れて行くつもりだけど、秋山君は手を貸してくれる?」
「今から連れて行くのか?」
「うん‥‥。時間がないかもしれないから急ぎたいんだ。」
俺の問にそう答えると、金田はテーブルに置かれた封筒を手にする。その中には八木隼人の離婚届が入っている。
「確かに八木の弟が警察と繋がっていたら、いつ捕まってもおかしくないよな‥‥俺もお前も。」
俺がそう答えると金田はハッとしてこちらを見ると、語気を強めて話しかけてきた。
「秋山君が僕の共犯だと思わせる証拠は、全て早く消さないと。そうだ‥‥三人を地下から連れ出したら、牢獄に火を放って八木の遺体ごと別荘を焼き払ってしまえばいい」
金田はそう言うと急に玄関に向かって歩き出す。俺は慌てて金田の腕を掴んで動きを制する。
「金田、どこに行くつもりだ?」
「車からガソリンを抜いてくる。」
「そのガソリンで地下牢獄を焼くつもりか?お前‥‥焦りすぎだ。思いつきで動くと失敗するぞ。」
「今までも思いつきで僕は動いてきた‥‥。そうでなければこんな馬鹿な犯罪は犯さないよ、秋山君。」
「‥‥‥金田。」
「ガソリンを取ってくるね。」
「手伝おうか?」
「大丈夫。ありがとう、秋山君。」
「そうか‥‥。」
俺は掴んでいた金田の腕を離す。金田は俺の顔を見つめた後、背中を見せて玄関に向かう。
俺は不安を抱きながらソファーに座った。玄関の扉が開き閉じる音がして、俺は深いため息を付いた。
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「まずは牢獄の玉木と梅田を精神病院に移動させないとね。病院の院長に直接交渉してみるよ。」
金田はそう言うとスマホを取り出し電話をかけた。相手はすぐに出たようで、金田は用件を話しながらリビングをゆっくりと歩く。
俺は何となく金田の姿を目で追った後、その視線を窓の外に向けた。
「雨がやんでる」
朝から降っていた雨があがり、雲間の光芒が和歌山の海を美しく照らし出す。
「綺麗だな‥‥。」
俺はソファーから立ち上がり窓辺に向かうと、窓ガラスに手をあてがった。ひやりとした冷たい窓ガラスの感触が気持ちいい。
「どうしたの、秋山君?」
「雨が止んだから海を見ていただけだ。それより、院長との話はもう終わったのか?」
「院長に頼んだらすんなりと許可がでたよ。その代わり、看護師を増やして欲しいと交換条件を出されたけどね。でも、条件を出してくれた事でこちらも交渉しやすかった。」
「へえ?」
「玉木や梅田と一緒に佐々木の面倒もみてもらう事になったんだ。」
あの短期間の電話でそこまで交渉していたのか。俺は金田の意外な一面に驚き思わず言葉にする。
「お前‥‥コミュ障かと思ったら意外と使える奴だな。」
俺が素直な感想を口にすると、金田は眉を潜めてこちらを見てくる。褒めたつもりだったが、言い方が悪かったかも?
「褒めたんだが?」
「全然褒められた気がしない。」
「すごい、金田。やるな、金田」
「絶対褒めてない。」
「いや、マジで褒めてるから。高校を卒業してから金田は引きこもり生活をしていたんだろ?だから、他人と交渉したりするのは苦手だと思っていた。すごいな、光一。」
俺がそう言うと金田は急に照れくさそうに視線を逸らす。そして、金田は窓の外を見ながら言葉を発した。
「晴れてきたね。」
「ああ、このまま晴れそうだな。」
「秋山君」
「ん?」
「今から玉木達を病院に連れて行くつもりだけど、秋山君は手を貸してくれる?」
「今から連れて行くのか?」
「うん‥‥。時間がないかもしれないから急ぎたいんだ。」
俺の問にそう答えると、金田はテーブルに置かれた封筒を手にする。その中には八木隼人の離婚届が入っている。
「確かに八木の弟が警察と繋がっていたら、いつ捕まってもおかしくないよな‥‥俺もお前も。」
俺がそう答えると金田はハッとしてこちらを見ると、語気を強めて話しかけてきた。
「秋山君が僕の共犯だと思わせる証拠は、全て早く消さないと。そうだ‥‥三人を地下から連れ出したら、牢獄に火を放って八木の遺体ごと別荘を焼き払ってしまえばいい」
金田はそう言うと急に玄関に向かって歩き出す。俺は慌てて金田の腕を掴んで動きを制する。
「金田、どこに行くつもりだ?」
「車からガソリンを抜いてくる。」
「そのガソリンで地下牢獄を焼くつもりか?お前‥‥焦りすぎだ。思いつきで動くと失敗するぞ。」
「今までも思いつきで僕は動いてきた‥‥。そうでなければこんな馬鹿な犯罪は犯さないよ、秋山君。」
「‥‥‥金田。」
「ガソリンを取ってくるね。」
「手伝おうか?」
「大丈夫。ありがとう、秋山君。」
「そうか‥‥。」
俺は掴んでいた金田の腕を離す。金田は俺の顔を見つめた後、背中を見せて玄関に向かう。
俺は不安を抱きながらソファーに座った。玄関の扉が開き閉じる音がして、俺は深いため息を付いた。
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