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第28話 ピエロ看守の独白⑥
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◆◆◆◆◆
「どうしたんだ、金田?」
「っ!」
名を呼ばれて僕は正気を取り戻す。慌てて声の方向に視線を向けると、寝室の扉近くで秋山君が立っていた。
「秋山君、駄目‥‥来ちゃだめ!」
「は?何いってんの?」
「寝室に入って扉を閉めて!鍵も!窓の外に八木がいる。あいつが生きてたんだ!」
秋山君の表情が変わり数歩後退りする。でも、寝室に戻ることはなかった。表情を強張らせつつ、秋山君は窓辺に向かう。
「秋山君!?」
僕は慌てて立ち上がって秋山君に近づきその腕を強く掴んだ。そして、彼を引き寄せ抱きしめる。
心臓がバクバクする。
「おい、金田‥‥腕が痛い」
「なんで窓に近づくんですか!」
「だって、」
「『だって』じゃないです!子供ですか‥‥八木がいるのに。とにかく窓から離れて下さい、秋山君!」
不意に秋山君に胸を押された。触れ合う体が離れるが、彼の腕だけは離さない。
「窓の外をよく見てみろよ」
「え?」
「誰もいないぞ」
「そんなはずないよ!」
「金田、よく見ろって」
「‥‥‥‥‥あっ」
秋山君に促されて窓を見ると、そこに八木はいなかった。
「そんな。確かに八木がいたのに」
「‥‥‥あいつは死んだ」
「そうだけど‥‥」
僕は窓を凝視するが、確かに誰もいない。あれは幻だったのか?
「それより‥‥‥寝室で一人なのは不安だから、俺もゴミ出しに付き合う」
秋山君が僅かに俯くと照れくさそうにそう言う。秋山君の照れくささが移って、僕も顔を赤らめてしまった。
「あ、ありがとう」
慌ててお礼を言ったが、秋山君の手を掴んだままだと気がついて慌てて手を離す。
「ゴミを持とうか?」
「ゴミ袋は一つだから大丈夫」
僕は床に転がったゴミ袋を拾うと、秋山君を促して玄関に向かった。玄関についてから僕は秋山君の靴を処分したことを思い出す。
「ごめん、秋山君。」
「ん?」
「靴を処分したんだ」
「え?俺の靴をか!?」
「逃走防止のために。」
「お前‥‥あの革靴は嫁が俺の誕生日にくれた、あー、くそ!とにかく、靴がないと外に出られないじゃないか。お前、俺を永遠にここに閉じ込めておくつもりか?」
僕は慌てて否定する。
「待って、秋山君!靴はちゃんと用意してるから。秋山君が逃げないと分かった時用の靴は用意していたので。3足あるから好きなの履いて」
シューズラックから箱入りの革靴を取り出す。それを玄関に置いて秋山君に選んでもらうことにした。
「‥‥‥なんか、キモいんだが」
秋山君がげんなりしてそう呟いたけど、聞こえなかったことにした。彼はしばらく3足の靴を眺めてから、チャコールブラウンの革靴を選ぶ。
「これにする」
「似合うと思う」
「‥‥‥‥‥。」
秋山君から返事はなかったが、新しい革靴は彼の足にしっくりと馴染んだようだ。彼は少しだけ口元を緩めた。
「久しぶりに外に出る気がするな」
「そうだね」
秋山君の言葉に返事をしながら玄関の扉のチェーンを外す。そして、鍵を外して扉を開いた。
「雨か」
「雨だね」
扉を開くと朝から雨がしとしとと降っていた。
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「どうしたんだ、金田?」
「っ!」
名を呼ばれて僕は正気を取り戻す。慌てて声の方向に視線を向けると、寝室の扉近くで秋山君が立っていた。
「秋山君、駄目‥‥来ちゃだめ!」
「は?何いってんの?」
「寝室に入って扉を閉めて!鍵も!窓の外に八木がいる。あいつが生きてたんだ!」
秋山君の表情が変わり数歩後退りする。でも、寝室に戻ることはなかった。表情を強張らせつつ、秋山君は窓辺に向かう。
「秋山君!?」
僕は慌てて立ち上がって秋山君に近づきその腕を強く掴んだ。そして、彼を引き寄せ抱きしめる。
心臓がバクバクする。
「おい、金田‥‥腕が痛い」
「なんで窓に近づくんですか!」
「だって、」
「『だって』じゃないです!子供ですか‥‥八木がいるのに。とにかく窓から離れて下さい、秋山君!」
不意に秋山君に胸を押された。触れ合う体が離れるが、彼の腕だけは離さない。
「窓の外をよく見てみろよ」
「え?」
「誰もいないぞ」
「そんなはずないよ!」
「金田、よく見ろって」
「‥‥‥‥‥あっ」
秋山君に促されて窓を見ると、そこに八木はいなかった。
「そんな。確かに八木がいたのに」
「‥‥‥あいつは死んだ」
「そうだけど‥‥」
僕は窓を凝視するが、確かに誰もいない。あれは幻だったのか?
「それより‥‥‥寝室で一人なのは不安だから、俺もゴミ出しに付き合う」
秋山君が僅かに俯くと照れくさそうにそう言う。秋山君の照れくささが移って、僕も顔を赤らめてしまった。
「あ、ありがとう」
慌ててお礼を言ったが、秋山君の手を掴んだままだと気がついて慌てて手を離す。
「ゴミを持とうか?」
「ゴミ袋は一つだから大丈夫」
僕は床に転がったゴミ袋を拾うと、秋山君を促して玄関に向かった。玄関についてから僕は秋山君の靴を処分したことを思い出す。
「ごめん、秋山君。」
「ん?」
「靴を処分したんだ」
「え?俺の靴をか!?」
「逃走防止のために。」
「お前‥‥あの革靴は嫁が俺の誕生日にくれた、あー、くそ!とにかく、靴がないと外に出られないじゃないか。お前、俺を永遠にここに閉じ込めておくつもりか?」
僕は慌てて否定する。
「待って、秋山君!靴はちゃんと用意してるから。秋山君が逃げないと分かった時用の靴は用意していたので。3足あるから好きなの履いて」
シューズラックから箱入りの革靴を取り出す。それを玄関に置いて秋山君に選んでもらうことにした。
「‥‥‥なんか、キモいんだが」
秋山君がげんなりしてそう呟いたけど、聞こえなかったことにした。彼はしばらく3足の靴を眺めてから、チャコールブラウンの革靴を選ぶ。
「これにする」
「似合うと思う」
「‥‥‥‥‥。」
秋山君から返事はなかったが、新しい革靴は彼の足にしっくりと馴染んだようだ。彼は少しだけ口元を緩めた。
「久しぶりに外に出る気がするな」
「そうだね」
秋山君の言葉に返事をしながら玄関の扉のチェーンを外す。そして、鍵を外して扉を開いた。
「雨か」
「雨だね」
扉を開くと朝から雨がしとしとと降っていた。
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