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第25話 証拠隠滅の方法
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◆◆◆◆◆
風呂から上がると俺は金田が用意した新しい看守服を着込んだ。看守服は意外にもストレッチ性があり着心地が良い。刺繍のネームは不要だが部屋着として貰いたいぐらいだ。
‥‥‥ん?
「そういえば‥‥」
「どうしましたか、秋山君?」
俺の呟きに隣で着替えていた金田が反応を示す。俺な気掛かりなことを金田に尋ねることにした。
「いや‥‥遺体を処理した時に俺達の看守服は血で汚れただろ?それの処理をどうするのか気になって。」
「心配ないですよ、秋山君。明日は地域のゴミ回収日なので、他の生ゴミに混ぜて捨てます。この地域は黒いゴミ袋でも回収してくれるので助かります」
俺は金田の言葉に驚いて思わず男の顔をジロジロと見る。そんな俺を金田は不思議そうに見返してきた。
「秋山君?」
「ゴミとして出すのか?」
「そうですけど?」
「人を殺した証拠だぞ?看守服はネーム入りだし、人に見つかったら一発アウトだろ‥‥」
「これが一番良い方法だと思いますよ?地下牢獄から出たゴミはいつもこの方法で処理しています。焼却炉で燃やしてしまえば灰しか残りませんから」
「そう言われるとそうなんだが‥」
殺人という異常な行為とゴミ出しという現実的な行為が、頭の中で上手く繋がらない。
「気に入りませんか?」
「いや、それが一番安全な処理方法なんだと思うが‥‥ミステリー小説とかだと山に埋めたりしないか?」
そう尋ねたものの読んだミステリー小説は三冊ほどで、証拠隠滅のシーンがあったかも思い出せない。
「秋山君はミステリー小説が好きなんですか?僕も好きです!何を読みましたか?好きな作家は?」
金田が目を輝かせてミステリー小説の話題に食い付いてきた。俺は躊躇いながらも薄いミステリーの知識を披露する。
「『アクロイド殺し』は読んだ」
「アガサ・クリスティですね!あれは傑作ですよね。犯人の正体には度肝を抜かれました。」
「確かに‥俺も完全に騙された」
金田は僅かに微笑むと更にミステリーの話題を口にする。
「確かにアガサ・クリスティの犯人達は証拠を山に埋めたり池に沈めたりしますが、すぐに探偵に見破られますよ?」
俺は肩をすくめて返事する。
「分かったって、金田。お前の言う通りゴミ回収に出すのが安全な気がしてきた。」
‥‥‥何をやっているのだろう。
俺は金田に誘拐された被害者だ。成り行きで八木の殺害に加担したが、主犯はあくまでも金田。証拠隠滅に頭を悩ませる自分に呆れる。
「ゴミ回収がそんなに嫌ですか?」
「だからもうそれでいいって。」
「秋山君がミステリー小説のような証拠隠滅を望むなら、別荘の裏の崖から海に向かって血塗れの看守服を捨てることもできますよ?」
「流石にそれは駄目だろ。すぐに海岸に打ち上げられて見つかる」
俺の言葉に金田が薄く笑う。
「この別荘が建つ前は、地元の人はこの地を『還らずの崖』と呼んでいたそうですよ?この崖から身を投じた人間はどこにも還らず行方不明になるそうです。」
俺は金田の話に思わず顔を顰めていた。『還らずの崖』に建つ不気味な別荘。その別荘を建てた男は地下で首を吊って死んだ。そして八木も。
「この別荘‥‥やっぱり呪われてるだろ?そう思わないか、金田?」
俺の言葉に金田は静かに首をふる。
「呪われてなんていませんよ、秋山君。全ては人の意思です。この崖から身を投げたのも人の意志。『還らずの崖』に別荘を建てたのも人の意志。地下監房で自殺したのも人の意志。八木を殺したのも人の意志‥‥僕の意思です。」
金田は一気に話すと少し疲れた表情を浮かべた。そしてボソリと呟く。
「疲れました。もう寝ましょう、秋山君。寝室に案内します。」
「そうだな‥‥」
「あと‥‥犯罪の証拠はやはりゴミとして出すほうが確実だと思います」
「ああ、任せる。俺も疲れた。」
俺も秋山と同じく疲れた顔をしている筈だ。とにかく、今はすべてを忘れて眠りたい。
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風呂から上がると俺は金田が用意した新しい看守服を着込んだ。看守服は意外にもストレッチ性があり着心地が良い。刺繍のネームは不要だが部屋着として貰いたいぐらいだ。
‥‥‥ん?
「そういえば‥‥」
「どうしましたか、秋山君?」
俺の呟きに隣で着替えていた金田が反応を示す。俺な気掛かりなことを金田に尋ねることにした。
「いや‥‥遺体を処理した時に俺達の看守服は血で汚れただろ?それの処理をどうするのか気になって。」
「心配ないですよ、秋山君。明日は地域のゴミ回収日なので、他の生ゴミに混ぜて捨てます。この地域は黒いゴミ袋でも回収してくれるので助かります」
俺は金田の言葉に驚いて思わず男の顔をジロジロと見る。そんな俺を金田は不思議そうに見返してきた。
「秋山君?」
「ゴミとして出すのか?」
「そうですけど?」
「人を殺した証拠だぞ?看守服はネーム入りだし、人に見つかったら一発アウトだろ‥‥」
「これが一番良い方法だと思いますよ?地下牢獄から出たゴミはいつもこの方法で処理しています。焼却炉で燃やしてしまえば灰しか残りませんから」
「そう言われるとそうなんだが‥」
殺人という異常な行為とゴミ出しという現実的な行為が、頭の中で上手く繋がらない。
「気に入りませんか?」
「いや、それが一番安全な処理方法なんだと思うが‥‥ミステリー小説とかだと山に埋めたりしないか?」
そう尋ねたものの読んだミステリー小説は三冊ほどで、証拠隠滅のシーンがあったかも思い出せない。
「秋山君はミステリー小説が好きなんですか?僕も好きです!何を読みましたか?好きな作家は?」
金田が目を輝かせてミステリー小説の話題に食い付いてきた。俺は躊躇いながらも薄いミステリーの知識を披露する。
「『アクロイド殺し』は読んだ」
「アガサ・クリスティですね!あれは傑作ですよね。犯人の正体には度肝を抜かれました。」
「確かに‥俺も完全に騙された」
金田は僅かに微笑むと更にミステリーの話題を口にする。
「確かにアガサ・クリスティの犯人達は証拠を山に埋めたり池に沈めたりしますが、すぐに探偵に見破られますよ?」
俺は肩をすくめて返事する。
「分かったって、金田。お前の言う通りゴミ回収に出すのが安全な気がしてきた。」
‥‥‥何をやっているのだろう。
俺は金田に誘拐された被害者だ。成り行きで八木の殺害に加担したが、主犯はあくまでも金田。証拠隠滅に頭を悩ませる自分に呆れる。
「ゴミ回収がそんなに嫌ですか?」
「だからもうそれでいいって。」
「秋山君がミステリー小説のような証拠隠滅を望むなら、別荘の裏の崖から海に向かって血塗れの看守服を捨てることもできますよ?」
「流石にそれは駄目だろ。すぐに海岸に打ち上げられて見つかる」
俺の言葉に金田が薄く笑う。
「この別荘が建つ前は、地元の人はこの地を『還らずの崖』と呼んでいたそうですよ?この崖から身を投じた人間はどこにも還らず行方不明になるそうです。」
俺は金田の話に思わず顔を顰めていた。『還らずの崖』に建つ不気味な別荘。その別荘を建てた男は地下で首を吊って死んだ。そして八木も。
「この別荘‥‥やっぱり呪われてるだろ?そう思わないか、金田?」
俺の言葉に金田は静かに首をふる。
「呪われてなんていませんよ、秋山君。全ては人の意思です。この崖から身を投げたのも人の意志。『還らずの崖』に別荘を建てたのも人の意志。地下監房で自殺したのも人の意志。八木を殺したのも人の意志‥‥僕の意思です。」
金田は一気に話すと少し疲れた表情を浮かべた。そしてボソリと呟く。
「疲れました。もう寝ましょう、秋山君。寝室に案内します。」
「そうだな‥‥」
「あと‥‥犯罪の証拠はやはりゴミとして出すほうが確実だと思います」
「ああ、任せる。俺も疲れた。」
俺も秋山と同じく疲れた顔をしている筈だ。とにかく、今はすべてを忘れて眠りたい。
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