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パウル陛下の気持ち

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◆◆◆◆◆

ちゅっ、ちゅっ、ちゅっちゅっ、

パウル陛下に姫抱っこされてキスの刑を受けている内に・・何故か、下半身が熱くなってきた。

くちゅ、ちゅっ、

いや、もう自分を偽るのはやめよう。俺は確実に・・陛下に躾られたのだ。童貞のまま、俺は女にされた。 

がりっ

「うがぁーー、嫌すぎる~ー!」
「ぐはっ」
「パウル陛下が最悪すぎて泣けるぅ」

「セツ・・人の舌をおもいっきり噛んでおいて、俺を詰るのか?少しは俺の心配をしろ、男聖女よ」

陛下の言葉に、俺は抱かれたまま愚痴った。

「普通に話せていますから、機能に問題はありません。それよりも、どちらに向かっておられるのですか、パウル陛下?」

「セツの部屋だ」
「私の部屋ですか?」
「お前と話し合いたい」
「え、何故ですか?」

「お前は今日一日で、多くの情報を得たはずだ。その上で、俺の事をどう思っているのか聞きたい。俺の印象はお前のなかで・・地に落ちたのではないのか、セツ」

パウル陛下の発言の意図がよく分からない。俺は首を傾げて言葉を紡ぐ。

「は?えっと・・特に陛下に対する印象は何も変わっていませんので、話し合いの必要を感じませんが?」

「・・・」

パウル陛下が何故かショックを受けた様子で黙りこんだ。ついでに足まで止まってしまう。

「どうしましたか、陛下?」

「俺は聖女を武器とする為に召喚した。セツは目障りなハロンステーン公爵を排除する為の武器であり、俺の身を守る盾だった。道具としてお前を扱い続けた俺を・・セツは心から愛せるのか?」

俺はパウル陛下の唇に自らの唇を重ねた。そして、そっと唇を離すと陛下の耳元で囁いていた。

「気を許しすぎです、陛下。周囲は全て陛下の味方とは限りません。人払いもせずに廊下でこの様な話はなさいますな、パウル陛下」

城の上層階の為、見慣れる人間がいればすぐにわかる。周囲にいるのは陛下の配下の者だけ。それでも、ハロンステーン公爵の件を持ち出すのはあまりにも用心が足りない。

「鳥籠から出すのではなかった」

「パウル陛下・・情報封鎖はもう嫌です。一度吹いた風に、鳥は乗ったのです。その風を忘れるなど出来ません」

「・・わかっている」

パウル陛下が俺から目を反らす。俺は陛下の役に立ちたいのだ。再び情報を封鎖されては、陛下の真の友にはなれない。

陛下が再び歩きだす。俺は無言で陛下の首筋に顔を埋めた。だが、俺の部屋に近づいた時に、聞き慣れた声を耳にして顔を上げた。

「セツ様がお部屋にいないだと!とんだ大嘘つきだな!セツ様を常に部屋に閉じ込めているくせに!僕は神官見習いの◯△だと説明したはずだ。大神官様の命により、セツ様宛の手紙をお持ちしたのだ。直接聖女様にお渡しすべきものだ。早く聖女様に取り次いで頂きたい!」

やっぱりだ。ショタが俺の部屋を守る衛兵と揉めている。俺は陛下にしがみついたまま、身を乗り出して名を呼んだ。

「ショタ」

「神殿の命令を無視して、聖女様を王城に閉じ込めていること事態許されないのに・・ん、ショタ?」

「ショタ、こっち!」

ショタがこちらを見て目を見開いた。数度瞬きをした後に、ショタは泣きそうな顔になりながら駆け寄ってきた。

「セツ様!ご無事でしたか。いえ、ご無事ではありませんね。パウル陛下、セツ様を離してください。セツ様が嫌がっておられます。僕は神官見習いではありますが、聖女様のお気持ちは誰よりもわかります。あ、勿論・・大神官様には足元にも及びませんが」

パウル陛下がゆっくりと口を開く。

「ショタといったか?」
「ショタではありません!」
「?」
「僕は◯△と申します」
「◯△?セツはショタと呼んだが?」

「その~、私にはどうしても◯△ショタはショタにしか聞こえないのです。ごめんね、ショタ」

「ぐっ、聖女さま・・」

「では、ショタ。大神官の手紙は俺が受け取ろう。手紙を寄越せ、ショタ」

「絶対に嫌です!」
「そうか。では、配下に任せる」
「パウル陛下!」

「部屋の扉を開けろ。ショタから手紙を奪ったら、俺の元に届けよ。その後は、人払いをする。わかったな?」

「ちょっとまってよ!」

俺は抗議の声を上げたが無視をされた。陛下は護衛がショタを押さえ込むのを見届けると、俺を抱いたまま部屋の中に入っていった。

ゆっくりと、背後で扉が閉じられた。


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