召喚聖女が十歳だったので、古株の男聖女はまだ陛下の閨に呼ばれるようです

月歌(ツキウタ)

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童貞は俺だけなのか?

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◆◆◆◆◆

ブリギッタ殿下が童貞ではなかった。

貴族の女性は苦手だが、高級娼婦とはすでにやりチンだっただと!?

・・くそっ!騙された!

俺だけが童貞かよ。

パウル陛下も俺の尻がピンチの時には、女性を抱いてるしな。尋ねた事はないが、時折女の匂いが体に染み付いているから間違いない。

べ、別に嫉妬などはしていない。俺の尻を愛するがゆえの処置であり、陛下も男だから仕方ない。それに、陛下からは結婚を申し込まれた立場だ。

故に、俺は愛人ではなく女性が愛人の立場だ。自信を持て!俺!

「まて、今は陛下は関係ない!」

俺は思わず叫んでいた。そして、慌てて口を両手で塞いだが遅かった。ウルスラとブリギッタ殿下が俺を見つめている。

ウルスラは呆れ顔で。ブリギッタ殿下は心配そうに。

「・・ウルスラ」
「はい、セツ様」

俺はウルスラをちらりと睨んで口を開いた。確認するまでもないが、こいつは卒童貞組だろう。だが、奇跡は起こるかもしれない。

「一応聞きますが・・貴方は童貞?」

「申し訳ありません、セツ様。ブリギッタ殿下も利用されている高級娼館には伝があり、俺は十三の時に済ませました。最高の体験でした」

「ウルスラ~!」
「調子に乗りました。お詫びに・・」

『お詫びに』と口にしたウルスラが、不意に俺に身を寄せた。そして、耳元で囁く。

「パウル陛下より童貞喪失の許可が降りるならば、件の高級娼館にセツ様をご招待いたします」

「え、えっ!?」

「ただし、あくまでもセツ様ご自身の発案であることをパウル陛下にお伝えください」

ウルスラの提案に俺は思わず頷いていた。ウルスラは何事も無かったように身を離すが、俺は体が火照っていた。

ついに、三十歳にして俺は喪うのか。

「聖女様、大丈夫ですか?」
「え?」
「頬が紅色に染まっておいでです」

俺はブリギッタ殿下に視線を向けた。第二王子が童貞でないと分かり、急に意地悪をしたくなってしまった。

「ブリギッタ殿下・・男の頬は紅色には染まりません。それは女性に向けて仰って下さい。やはり、殿下には貴族女性を克服する努力をしてもらいます。これは、国家安寧を願う聖女の命令です。よろしいですね、ブリギッタ殿下」

俺の言葉を聞き、ブリギッタ殿下が表情を強ばらせた。どうやら、本当に貴族女性は苦手らしい。同志童貞では無かったが、ブリギッタ殿下が気の毒になった。

「承知しました、聖女様」
「では、行きましょうか」
「え?」

「ブリギッタ殿下。今すぐに貴族女性を口説けなんて無理強いは致しません。単純な事ほど解決は難しいと『名探偵ポアロ』が言っていました。時間を掛けてよいと思います。それよりも、今は殿下の身を守る方が大切です。神殿に向かい共に装身具選びを致しましょう。ね、ブリギッタ殿下?」

「はい、聖女様!」

偽童貞のブリギッタ殿下が、無邪気に目を輝かせる。ふ、このうぶな反応に騙された。まあ、いい。

「ウルスラは護衛をよろしく」

俺はウルスラの返事を待たずに、ブリギッタ殿下の腕を取り共に部屋を出ようとした。

だが、ウルスラに呼び止められる。

「聖女様、お待ちください」
「何?」

「乳母兄弟と腕を組むのは遠慮して頂きたい。ブリギッタが陛下から嫉妬を買います。それと、大神官様へのお土産のチョコレートをお忘れです」

まじで忘れてた。

「そうだった!チョコレートは箱に詰めてね、ウルスラ。貴方を伴侶にすれば、忘れ物はなくなりそうだね」

「伴侶の件はお断りします。セツ様を妻に貰えば、俺の命がなくなりそうですから。では、チョコレートは箱に詰めます。しばらくお待ち下さい」

ウルスラは即座に箱を用意して、チョコレートを詰めてくれた。ウルスラから受け取ったチョコ入りの箱には、リボンまで掛かっていた。

やはり、ウルスラは伴侶向きだと思う。まあ、断られたけどね。

「では、神殿に行きましょう!」


◆◆◆◆◆




 
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