召喚聖女が十歳だったので、古株の男聖女はまだ陛下の閨に呼ばれるようです

月歌(ツキウタ)

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男聖女は大地の浄化をしたらしい

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◆◆◆◆◆

ブリギッタ殿下とウルスラが、俺を真っ直ぐに見つめてきた。俺は思わず首を傾げ問う。

「聖女召喚の儀を行う事で、何が変わるというのですか?」

「パウル陛下は聖女を召喚して、疫病により穢れた大地の澱みを払うと宣言されました」

「はい!?」

俺は驚いて目を丸くした。ちょっと待て。俺に疫病を吹き飛ばす力なんてないぞ?

「そして、それが成し遂げられぬ場合には、公爵の孫である第三王子に王位を譲るとも仰いました。全ては公の場での発言であり、パウル陛下の強い意志が見受けられました。兄上は傀儡の王を脱するために賭けに出たのです」

「ブリギッタ殿下、何故止めてくれなかったのですか!陛下はとんでもない賭けに出たのですよ?聖女に・・男聖女に疫病が蔓延した大地を浄化する力などありません!」

「ですが、奇跡は起こりました」
「はい?」

「陛下の聖女召喚の提案は最後の足掻きだと、誰もが影では嘲笑っていました。何故なら、この五百年間、我が国では聖女召喚に一度も成功していなかったからです」

「そうなんだ?」
「そうです」
「でも、私は召喚された」
「五百年越しの奇跡です!」
「お、男聖女だけど?」

「性別など関係ありません。いえ、男聖女であったからこそ、病が蔓延した大地から疫病を浄化できたのかもしれません。何故なら、百年に一度は聖女召喚に成功しているシャフツベリー王国では、疫病が未だに流行していますので。セツ様の偉大な力に身が震える思いです。そして、パウル陛下の英断に感謝します」

「あのぉ・・全然、実感がないのだけど。大体、聖女召喚されてからは、ずっと王城にいたよ?その間に私がしていた事といえば、言葉の勉強と、パウル陛下とのセック~ヴゥ。と、兎に角・・疫病の終焉は偶然です。集団免疫の獲得時期に、たまたま私が召喚されただけです!」

俺の言葉にブリギッタ殿下はにっこりと微笑んだ。そして、優しい口調で話しかけてくる。

「大切な、大切な聖女様。疫病を浄化する巨大な力をお持ちのセツ様を、大国のシャフツベリー王国が狙っていることは陛下より伝え聞いております。ですが、絶対に渡しはしません。セツ様をお守りいたします」

ブリギッタ殿下は立ち上がり、テーブルを迂回した。そして、俺の手を取るとその場に膝を付いて軽く手の甲にキスをした。

「あ、あう~」

俺は顔を火照らせて視線をブリギッタ殿下からそらせた。不意に、ウルスラと視線が合う。彼は苦笑いを浮かべ肩を竦める。

おい、ウルスラ。この状況を何とかしてくれ!


◆◆◆◆◆

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