21 / 30
男聖女は大地の浄化をしたらしい
しおりを挟む
◆◆◆◆◆
ブリギッタ殿下とウルスラが、俺を真っ直ぐに見つめてきた。俺は思わず首を傾げ問う。
「聖女召喚の儀を行う事で、何が変わるというのですか?」
「パウル陛下は聖女を召喚して、疫病により穢れた大地の澱みを払うと宣言されました」
「はい!?」
俺は驚いて目を丸くした。ちょっと待て。俺に疫病を吹き飛ばす力なんてないぞ?
「そして、それが成し遂げられぬ場合には、公爵の孫である第三王子に王位を譲るとも仰いました。全ては公の場での発言であり、パウル陛下の強い意志が見受けられました。兄上は傀儡の王を脱するために賭けに出たのです」
「ブリギッタ殿下、何故止めてくれなかったのですか!陛下はとんでもない賭けに出たのですよ?聖女に・・男聖女に疫病が蔓延した大地を浄化する力などありません!」
「ですが、奇跡は起こりました」
「はい?」
「陛下の聖女召喚の提案は最後の足掻きだと、誰もが影では嘲笑っていました。何故なら、この五百年間、我が国では聖女召喚に一度も成功していなかったからです」
「そうなんだ?」
「そうです」
「でも、私は召喚された」
「五百年越しの奇跡です!」
「お、男聖女だけど?」
「性別など関係ありません。いえ、男聖女であったからこそ、病が蔓延した大地から疫病を浄化できたのかもしれません。何故なら、百年に一度は聖女召喚に成功しているシャフツベリー王国では、疫病が未だに流行していますので。セツ様の偉大な力に身が震える思いです。そして、パウル陛下の英断に感謝します」
「あのぉ・・全然、実感がないのだけど。大体、聖女召喚されてからは、ずっと王城にいたよ?その間に私がしていた事といえば、言葉の勉強と、パウル陛下とのセック~ヴゥ。と、兎に角・・疫病の終焉は偶然です。集団免疫の獲得時期に、たまたま私が召喚されただけです!」
俺の言葉にブリギッタ殿下はにっこりと微笑んだ。そして、優しい口調で話しかけてくる。
「大切な、大切な聖女様。疫病を浄化する巨大な力をお持ちのセツ様を、大国のシャフツベリー王国が狙っていることは陛下より伝え聞いております。ですが、絶対に渡しはしません。セツ様をお守りいたします」
ブリギッタ殿下は立ち上がり、テーブルを迂回した。そして、俺の手を取るとその場に膝を付いて軽く手の甲にキスをした。
「あ、あう~」
俺は顔を火照らせて視線をブリギッタ殿下からそらせた。不意に、ウルスラと視線が合う。彼は苦笑いを浮かべ肩を竦める。
おい、ウルスラ。この状況を何とかしてくれ!
◆◆◆◆◆
ブリギッタ殿下とウルスラが、俺を真っ直ぐに見つめてきた。俺は思わず首を傾げ問う。
「聖女召喚の儀を行う事で、何が変わるというのですか?」
「パウル陛下は聖女を召喚して、疫病により穢れた大地の澱みを払うと宣言されました」
「はい!?」
俺は驚いて目を丸くした。ちょっと待て。俺に疫病を吹き飛ばす力なんてないぞ?
「そして、それが成し遂げられぬ場合には、公爵の孫である第三王子に王位を譲るとも仰いました。全ては公の場での発言であり、パウル陛下の強い意志が見受けられました。兄上は傀儡の王を脱するために賭けに出たのです」
「ブリギッタ殿下、何故止めてくれなかったのですか!陛下はとんでもない賭けに出たのですよ?聖女に・・男聖女に疫病が蔓延した大地を浄化する力などありません!」
「ですが、奇跡は起こりました」
「はい?」
「陛下の聖女召喚の提案は最後の足掻きだと、誰もが影では嘲笑っていました。何故なら、この五百年間、我が国では聖女召喚に一度も成功していなかったからです」
「そうなんだ?」
「そうです」
「でも、私は召喚された」
「五百年越しの奇跡です!」
「お、男聖女だけど?」
「性別など関係ありません。いえ、男聖女であったからこそ、病が蔓延した大地から疫病を浄化できたのかもしれません。何故なら、百年に一度は聖女召喚に成功しているシャフツベリー王国では、疫病が未だに流行していますので。セツ様の偉大な力に身が震える思いです。そして、パウル陛下の英断に感謝します」
「あのぉ・・全然、実感がないのだけど。大体、聖女召喚されてからは、ずっと王城にいたよ?その間に私がしていた事といえば、言葉の勉強と、パウル陛下とのセック~ヴゥ。と、兎に角・・疫病の終焉は偶然です。集団免疫の獲得時期に、たまたま私が召喚されただけです!」
俺の言葉にブリギッタ殿下はにっこりと微笑んだ。そして、優しい口調で話しかけてくる。
「大切な、大切な聖女様。疫病を浄化する巨大な力をお持ちのセツ様を、大国のシャフツベリー王国が狙っていることは陛下より伝え聞いております。ですが、絶対に渡しはしません。セツ様をお守りいたします」
ブリギッタ殿下は立ち上がり、テーブルを迂回した。そして、俺の手を取るとその場に膝を付いて軽く手の甲にキスをした。
「あ、あう~」
俺は顔を火照らせて視線をブリギッタ殿下からそらせた。不意に、ウルスラと視線が合う。彼は苦笑いを浮かべ肩を竦める。
おい、ウルスラ。この状況を何とかしてくれ!
◆◆◆◆◆
23
お気に入りに追加
1,237
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!


最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
羽海汐遠
ファンタジー
最強の魔王ソフィが支配するアレルバレルの地。
彼はこの地で数千年に渡り統治を続けてきたが、圧政だと言い張る勇者マリスたちが立ち上がり、魔王城に攻め込んでくる。
残すは魔王ソフィのみとなった事で勇者たちは勝利を確信するが、肝心の魔王ソフィに全く歯が立たず、片手であっさりと勇者たちはやられてしまう。そんな中で勇者パーティの一人、賢者リルトマーカが取り出したマジックアイテムで、一度だけ奇跡を起こすと言われる『根源の玉』を使われて、魔王ソフィは異世界へと飛ばされてしまうのだった。
最強の魔王は新たな世界に降り立ち、冒険者ギルドに所属する。
そして最強の魔王は、この新たな世界でかつて諦めた願いを再び抱き始める。
彼の願いとはソフィ自身に敗北を与えられる程の強さを持つ至高の存在と出会い、そして全力で戦った上で可能であれば、その至高の相手に完膚なきまでに叩き潰された後に敵わないと思わせて欲しいという願いである。
人間を愛する優しき魔王は、その強さ故に孤独を感じる。
彼の願望である至高の存在に、果たして巡り合うことが出来るのだろうか。
『カクヨム』
2021.3『第六回カクヨムコンテスト』最終選考作品。
2024.3『MFブックス10周年記念小説コンテスト』最終選考作品。
『小説家になろう』
2024.9『累計PV1800万回』達成作品。
※出来るだけ、毎日投稿を心掛けています。
小説家になろう様 https://ncode.syosetu.com/n4450fx/
カクヨム様 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896551796
ノベルバ様 https://novelba.com/indies/works/932709
ノベルアッププラス様 https://novelup.plus/story/998963655
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる