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傀儡の王
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◆◆◆◆◆
「ある年の春先に、流行り病が国中に蔓延しました。それにより、多くの王国の民が亡くなりました。それだけではなく、王城でも病は猛威をふるったのです。その結果、ラミ国王、ダライ国王が病に罹患して時を置かず亡くなりました。又、公爵も次期当主を流行り病で喪いました。その後、公爵は生き残った若い三人の王子の後見人として、振る舞うようになったのです」
ブリギッタ殿下が苦々しげに答える。
だが、そこに悲しみの感情は見いだせなかった。祖父と父を喪ったのに・・殿下にとっては、二人は遠い存在だったのかな?
「先々代のラミ国王と先代のダライ国王が相次いで亡くなった為に、まだ若いパウル兄上が国王となりました。パウル陛下は、王国が疫病により乱れる最中、父上も祖父も喪った状態で玉座に就くことになりました。この意味がお分かりになりますか、聖女様?」
「後ろ楯がない状態という事?」
俺の言葉に第二王子は頷き、言葉を続けた。
「王位に就いた若いパウル陛下が、疫病が蔓延した王国をまとめるには、後ろ楯が欠かせなかった。ですが、祖父と父を相次いで亡くし、強力な後ろ楯を喪いました。その上、陛下と俺の母方の親族は、王国一の名門貴族ですが、既に財力を失い栄誉のみの没落貴族です。後ろ楯のないパウル陛下は、気がつけば公爵に取り込まれていました。そして、公爵はパウル陛下を傀儡の王として扱いました」
「パウル陛下が傀儡の王?」
俺は目を見開いて、ブリギッタ殿下とウルスラを見た。あのパウル陛下の『傀儡の王』の姿など想像できない。
「パウル陛下はプライドの高い方です。陛下が傀儡の王として過ごすなど、私には想像もできません」
「公爵の真の狙いが分かっていたからこそ、兄上は傀儡の王を演じていたともいえます、聖女様」
「公爵の真の狙いとは公国の樹立ですよね、ブリギッタ殿下?しかし、たとえパウル陛下が傀儡の王でも・・独立を許したりはしないのでは?公国の樹立を認めれば、各地で独立の機運が高まりかねない。疫病が流行した直後なら、尚更に深刻なはず・・」
パウル陛下がそんな選択をするはずがない。そんな俺の気持ちを見抜いたように、ウルスラが突然発言した。
「パウル陛下を取り除けば、或いは公国の樹立の夢は叶うかもしれない」
「!?」
俺ははっとしてウルスラを見つめた。パウル陛下を取り除くとは・・命を奪うという意味だろうか?
「ハロンステーン公爵の心を代弁しての発言だろうけど・・実際に実行するのはリスクが高いように思うよ、ウルスラ?」
「何もパウル陛下の命を奪う事だけが、『取り除く』を意味するわけではありませんよ、セツ様。実際に、公爵はパウル陛下とブリギッタ殿下の母君を、第三王子暗殺の容疑で捕らえています。そういう手段もあるのです」
「え!?」
俺は慌ててブリギッタ殿下に視線を向ける。殿下は僅かに視線をそらした。
◆◆◆◆◆
「ある年の春先に、流行り病が国中に蔓延しました。それにより、多くの王国の民が亡くなりました。それだけではなく、王城でも病は猛威をふるったのです。その結果、ラミ国王、ダライ国王が病に罹患して時を置かず亡くなりました。又、公爵も次期当主を流行り病で喪いました。その後、公爵は生き残った若い三人の王子の後見人として、振る舞うようになったのです」
ブリギッタ殿下が苦々しげに答える。
だが、そこに悲しみの感情は見いだせなかった。祖父と父を喪ったのに・・殿下にとっては、二人は遠い存在だったのかな?
「先々代のラミ国王と先代のダライ国王が相次いで亡くなった為に、まだ若いパウル兄上が国王となりました。パウル陛下は、王国が疫病により乱れる最中、父上も祖父も喪った状態で玉座に就くことになりました。この意味がお分かりになりますか、聖女様?」
「後ろ楯がない状態という事?」
俺の言葉に第二王子は頷き、言葉を続けた。
「王位に就いた若いパウル陛下が、疫病が蔓延した王国をまとめるには、後ろ楯が欠かせなかった。ですが、祖父と父を相次いで亡くし、強力な後ろ楯を喪いました。その上、陛下と俺の母方の親族は、王国一の名門貴族ですが、既に財力を失い栄誉のみの没落貴族です。後ろ楯のないパウル陛下は、気がつけば公爵に取り込まれていました。そして、公爵はパウル陛下を傀儡の王として扱いました」
「パウル陛下が傀儡の王?」
俺は目を見開いて、ブリギッタ殿下とウルスラを見た。あのパウル陛下の『傀儡の王』の姿など想像できない。
「パウル陛下はプライドの高い方です。陛下が傀儡の王として過ごすなど、私には想像もできません」
「公爵の真の狙いが分かっていたからこそ、兄上は傀儡の王を演じていたともいえます、聖女様」
「公爵の真の狙いとは公国の樹立ですよね、ブリギッタ殿下?しかし、たとえパウル陛下が傀儡の王でも・・独立を許したりはしないのでは?公国の樹立を認めれば、各地で独立の機運が高まりかねない。疫病が流行した直後なら、尚更に深刻なはず・・」
パウル陛下がそんな選択をするはずがない。そんな俺の気持ちを見抜いたように、ウルスラが突然発言した。
「パウル陛下を取り除けば、或いは公国の樹立の夢は叶うかもしれない」
「!?」
俺ははっとしてウルスラを見つめた。パウル陛下を取り除くとは・・命を奪うという意味だろうか?
「ハロンステーン公爵の心を代弁しての発言だろうけど・・実際に実行するのはリスクが高いように思うよ、ウルスラ?」
「何もパウル陛下の命を奪う事だけが、『取り除く』を意味するわけではありませんよ、セツ様。実際に、公爵はパウル陛下とブリギッタ殿下の母君を、第三王子暗殺の容疑で捕らえています。そういう手段もあるのです」
「え!?」
俺は慌ててブリギッタ殿下に視線を向ける。殿下は僅かに視線をそらした。
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