18 / 30
公爵の生き方
しおりを挟む
◆◆◆◆◆
第二王子とウルスラはがっくりと肩を落としていたが、俺は構わず会話を再開した。
「一度は目の前に現れた玉座に、ハロンステーン公爵は囚われてしまったのでしょうか、ブリギッタ殿下?」
会話を再開すると、二人は同時に顔を上げる。俺の言葉に応じたのは、ブリギッタ殿下だった。
「生まれた赤子のラミ・エクストランドは、病弱な方でした。その為、ハロンステーン公は玉座を諦めきれなかったのでしょう。だが、ダライ王は息子が10歳になると玉座を譲りました。そして、玉座についたラミ王は、王位継承権を持つ男子を三人得ました。それが、パウル陛下と第二王子の俺と、第三王子のダニエルです」
「なるほど。三人も男子が生まれては、公爵が玉座につく夢は完全に絶たれましたね。ですが、国王になれないからといって、公国を樹立して国から独立する事を夢見るとは・・あまりに、飛躍し過ぎではありませんか?」
俺の疑問にブリギッタ殿下が答える。ウルスラは傍観を決め込んでいるようだ。まあ、構わないけど。
「公爵は当初から公国の樹立を目指していた訳ではありません。彼は外戚として、宮廷で権力を得ようとしました。一度は他家に嫁いだ実の娘を離婚させ、ラミ王に嫁がせたのです。そして、外孫である第三王子のダニエルを得ました。又、娘の連れ子であるパール嬢を、第一王子の婚約者にすることにも成功しました」
俺は第一王子の婚約者の名を耳にして、思わず髪飾りにした純白の薔薇に触れた。
俺はウルスラに視線を向け尋ねる。
「私の頬を白バラで叩いた少女・・パール様は、祖父である公爵の野心に利用されて、パウル陛下の婚約者になったって事?」
「まあ、そうなりますね。ですが、パール様は、第一王子の婚約者の座に満足しておいででした。王妃の座を約束された上に、パウル様に惚れておられましたから」
パール様はパウル陛下に惚れていたのか。それなら、突然パウル陛下から婚約破棄を言い渡されたら怒るよね。
「うーん。それにしても、あまりに公爵はやりたい放題だと思うのだけれど?どうして、先々代の王や先代の王は、それを許したのかな?」
俺の疑問に答えたのは、第二王子だった。彼はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「先代王のラミ国王はともかく、先々代のダライ国王は、約束を反故にした公爵に対して負い目を感じていました。その為、彼が望むことにはできる限り応じられたのです。それにより、公爵の不平不満を抑えられると、お考えだったのかもしれません」
「私には悪手に思えます。公爵を自由にすべきではなかった」
俺がそう答えると、第二王子は少し考えてから応じた。
「公爵家の次期当主は、王家に対して忠誠を誓う律儀な人物でした。公爵を無下に扱うよりも、次期当主が実権を握った後に、公爵を抑えて貰う方が良いと考えたのでしょう。ですが、目算が甘かった」
「と、いいますと?」
「予想外の事が起こりました」
「予想外の事?」
「流行り病です」
「・・流行り病。確かに予想外の出来事ですね。でも、権力闘争に大きな影響を及ぼすものなのですか?」
ブリギッタ殿下が俺を見つめながらゆっくりと答えた。
◆◆◆◆◆
第二王子とウルスラはがっくりと肩を落としていたが、俺は構わず会話を再開した。
「一度は目の前に現れた玉座に、ハロンステーン公爵は囚われてしまったのでしょうか、ブリギッタ殿下?」
会話を再開すると、二人は同時に顔を上げる。俺の言葉に応じたのは、ブリギッタ殿下だった。
「生まれた赤子のラミ・エクストランドは、病弱な方でした。その為、ハロンステーン公は玉座を諦めきれなかったのでしょう。だが、ダライ王は息子が10歳になると玉座を譲りました。そして、玉座についたラミ王は、王位継承権を持つ男子を三人得ました。それが、パウル陛下と第二王子の俺と、第三王子のダニエルです」
「なるほど。三人も男子が生まれては、公爵が玉座につく夢は完全に絶たれましたね。ですが、国王になれないからといって、公国を樹立して国から独立する事を夢見るとは・・あまりに、飛躍し過ぎではありませんか?」
俺の疑問にブリギッタ殿下が答える。ウルスラは傍観を決め込んでいるようだ。まあ、構わないけど。
「公爵は当初から公国の樹立を目指していた訳ではありません。彼は外戚として、宮廷で権力を得ようとしました。一度は他家に嫁いだ実の娘を離婚させ、ラミ王に嫁がせたのです。そして、外孫である第三王子のダニエルを得ました。又、娘の連れ子であるパール嬢を、第一王子の婚約者にすることにも成功しました」
俺は第一王子の婚約者の名を耳にして、思わず髪飾りにした純白の薔薇に触れた。
俺はウルスラに視線を向け尋ねる。
「私の頬を白バラで叩いた少女・・パール様は、祖父である公爵の野心に利用されて、パウル陛下の婚約者になったって事?」
「まあ、そうなりますね。ですが、パール様は、第一王子の婚約者の座に満足しておいででした。王妃の座を約束された上に、パウル様に惚れておられましたから」
パール様はパウル陛下に惚れていたのか。それなら、突然パウル陛下から婚約破棄を言い渡されたら怒るよね。
「うーん。それにしても、あまりに公爵はやりたい放題だと思うのだけれど?どうして、先々代の王や先代の王は、それを許したのかな?」
俺の疑問に答えたのは、第二王子だった。彼はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「先代王のラミ国王はともかく、先々代のダライ国王は、約束を反故にした公爵に対して負い目を感じていました。その為、彼が望むことにはできる限り応じられたのです。それにより、公爵の不平不満を抑えられると、お考えだったのかもしれません」
「私には悪手に思えます。公爵を自由にすべきではなかった」
俺がそう答えると、第二王子は少し考えてから応じた。
「公爵家の次期当主は、王家に対して忠誠を誓う律儀な人物でした。公爵を無下に扱うよりも、次期当主が実権を握った後に、公爵を抑えて貰う方が良いと考えたのでしょう。ですが、目算が甘かった」
「と、いいますと?」
「予想外の事が起こりました」
「予想外の事?」
「流行り病です」
「・・流行り病。確かに予想外の出来事ですね。でも、権力闘争に大きな影響を及ぼすものなのですか?」
ブリギッタ殿下が俺を見つめながらゆっくりと答えた。
◆◆◆◆◆
23
お気に入りに追加
1,237
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


捨て猫はエリート騎士に溺愛される
135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。
目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。
お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。
京也は総受け。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息

ヤンキーに飽きたので真面目に生きることにしました
15
BL
真面目に生きることなんてバカらしいと思っていた
だけど…喧嘩にも飽きたし、この際真面目に生きるのもいいかなと思い直して
オレの想像の真面目像で生き直す事にした
七三分け
分厚い眼鏡
しっかりと着込まれた制服
その下の素顔を見た者は一人としておらず
笑っているところはおろか、授業以外で見かけることもなく
謎に包まれた真面目人間な生徒
それが、この男。
元ヤン現真面目素顔は…。
中身ポヤポヤ元ヤン現真面目人間。
「…一番上のって、誰が言ってたん?」
不器用ヤンキー×ポヤポヤ元ヤン
一話一話が短いです。

【完結済】王子を嵌めて国中に醜聞晒してやったので殺されると思ってたら溺愛された。
うらひと
BL
学園内で依頼をこなしていた魔術師のクリスは大物の公爵の娘からの依頼が入る……依頼内容は婚約者である王子からの婚約破棄!!
高い報酬に目が眩んで依頼を受けてしまうが……18Rには※がついています。
ムーン様にも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる