召喚聖女が十歳だったので、古株の男聖女はまだ陛下の閨に呼ばれるようです

月歌(ツキウタ)

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アイナ・ロンステーン公

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◆◆◆◆

俺は第二王子を真っ直ぐに見つめる。そして、俺は自分の気持ちをはっきりと言葉にした。

「陛下が心から私を愛して結婚を申し込んでくれたのなら・・とても嬉しいです。ですが、もしも男聖女の私を妻にして、統治者としての重圧から逃れるつもりならば・・私は結婚には応じません。少なくとも、戦争の後始末が終わるまでは」

「聖女様・・」

ブリギッタ殿下が、真剣な眼差しで俺を見つめてくる。俺はそれを受けて、殿下に微笑みかけた。そして、本題に入る。

「パウル陛下の統治が上手くいっているのなら、アイナ・ハロンステーン公は内乱を起こしてまで公国の樹立を目指すのは何故ですか?」

「ハロンステーン公爵とエクストランド王国の因縁は、先々代のダライ国王の時代に始まりました」

俺は王家の家系図を頭に浮かべながら、第二王子に尋ねた。

「先々代のダライ国王は、パウル陛下と殿下の祖父に当たる方ですね?」

「そうです、聖女様。兄上と俺の祖父にあたる先々代のダライ国王には、次期王となる男子に長く恵まれませんでした。その為、利権絡みの後継者争いが発生。その騒動を収める為に、ダライ王は後継者を急ぎ指名する必要に迫られたのです。そして、次期王として指名されたのが、アイナ・ロンステーン公でした」

「なるほど。ロンステーン公爵は、エクストランド王国の王位継承権をお持ちだったのですね?」

俺の言葉に、ブリギッタ殿下は頷く。そして、少し言いにくそうに言葉を紡いだ。

「ロンステーン公爵は優秀な人物で、多くの臣下はこの決定を歓迎しました。これで、エクストランド王国の後継者騒動は終息するはずだったのです。ですが、予想外の出来事が起こりました。先々代の王と若き側室の間に男子が生まれたのです。その男子が、先代王のラミ・エクストランドです」

「それでは・・王位の行方は?」

「先々代のラミ国王は、ロンステーン公爵との約束を反故になさいました。そして、生まれたばかりの我が子を後継者に指名されたのです」

そりゃそうか。我が子に王位を継がせたいのは当然だよね。

「なるほど・・後継者の誕生により、ロンステーン公爵は微妙な立場に追い込まれましたね。あれですね。『豊臣秀吉と豊臣秀次』の関係みたいですね。波乱含みの展開だな」

俺の言葉にブリギッタ殿下とウルスラが同時に首を傾けた。しかも、同じタイミング、同じ方向に。いや、仲が良すぎるでしょ!

「申し訳ありません、セツ様。聞き取れない言葉がありました。※※※※※とはどのような意味でしょうか?」

「ブリギッタには※※※※※と聞こえたのか?俺には♂♂♂♂♂と聞こえた」

ふむ。人物名をこちらの言葉で伝えるのは、やはり難しいな。俺の名も『セツ』と覚えて貰うのにすごく時間がかかったからな。

俺の名字は覚えてくれたのは、俺に言葉を教えてくれた神官長様だけ。マルヘリート様はお元気かな?あの麗しい美丈夫にまた逢いたいな~。

新しく召喚された聖女に会いに行く名目で、マルヘリート様に逢いにいくのは可能かな?



◆◆◆◆◆

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