陰間の散花♂は大店の旦那に溺愛される【江戸風ファンタジー】

月歌(ツキウタ)

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散花の答え

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◆◆◆◆◆ 

散花は動揺を隠せぬまま、それでも肌襦袢の帯を解き始める。

「左様ですか、三人で。わかりました!ここは散花にお任せください。年増の陰間として、経験だけは豊富ですので!」

シュルシュルと帯を解く散花に、弥太郎と若旦那は慌てて言葉を発した。

「待ちなさい、誤解だ!」
「脱ぐな、散花!」

散花は解き終わると襦袢の帯を若旦那に手渡し微笑む。

「遠慮はなしで、若旦那樣。『蕾める花』の時期には、桔梗屋の旦那様にたいそう可愛がって頂きました。」

「え、父上と!?」

「年増になってからは一向に声はかかりませんが。まあ、旦那様はオイタが過ぎて蔦屋を出禁になりましたが。」

「‥‥出禁」

左衛門が呆然と聞き返すと、散花は旦那が出禁になった経緯を丁寧に答えた。

「若旦那のお父様は、お店の『蕾める花』に解釈違いの江戸四十八手を試して、陰間に大怪我をさせたのです。その後も色々とあり、出禁となりました。」

左衛門は男色をあまり知らず、肛交で四十八手が可能なのかと想像して慌てて首をふる。

「その様は事が‥‥」

「桔梗屋の旦那様は襦袢の帯で私の体を縛り、二人がかりで愛でる事を好まれました。若旦那様がお父様の趣向を継いでおられても、散花は大丈夫です。2輪刺しもできますよ、左衛門樣?」

散花は左衛門の手に帯を握らせると、手首を括って欲しいと両手を差し出した。その姿に左衛門は後退りする。

「‥‥父上の所業について謝りたい。それと、散花と父上に交わりがある事は知らなかった。危うく親子で‥‥」

若旦那が不意に黙ったので、散花はにっこりと笑うとその場に立ち襦袢を脱ぎ捨てた。顕になる裸体に左衛門の表情は凍りつく。

「散花は陰間です。ほら、男の体つきをしているでしょ?若旦那様、散花は『菊乃』にはなれません。『菊乃』を求めて若旦那様が私を水揚げなさるおつもりならば、私はお受けできません。どうぞ私の事はお忘れ下さい。」

散花は裸体のまま寝床に正座すると、深く頭を下げた。その姿を左衛門は切なく見つめる。


◆◆◆◆◆

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