17 / 20
散花の答え
しおりを挟む
◆◆◆◆◆
散花は動揺を隠せぬまま、それでも肌襦袢の帯を解き始める。
「左様ですか、三人で。わかりました!ここは散花にお任せください。年増の陰間として、経験だけは豊富ですので!」
シュルシュルと帯を解く散花に、弥太郎と若旦那は慌てて言葉を発した。
「待ちなさい、誤解だ!」
「脱ぐな、散花!」
散花は解き終わると襦袢の帯を若旦那に手渡し微笑む。
「遠慮はなしで、若旦那樣。『蕾める花』の時期には、桔梗屋の旦那様にたいそう可愛がって頂きました。」
「え、父上と!?」
「年増になってからは一向に声はかかりませんが。まあ、旦那様はオイタが過ぎて蔦屋を出禁になりましたが。」
「‥‥出禁」
左衛門が呆然と聞き返すと、散花は旦那が出禁になった経緯を丁寧に答えた。
「若旦那のお父様は、お店の『蕾める花』に解釈違いの江戸四十八手を試して、陰間に大怪我をさせたのです。その後も色々とあり、出禁となりました。」
左衛門は男色をあまり知らず、肛交で四十八手が可能なのかと想像して慌てて首をふる。
「その様は事が‥‥」
「桔梗屋の旦那様は襦袢の帯で私の体を縛り、二人がかりで愛でる事を好まれました。若旦那様がお父様の趣向を継いでおられても、散花は大丈夫です。2輪刺しもできますよ、左衛門樣?」
散花は左衛門の手に帯を握らせると、手首を括って欲しいと両手を差し出した。その姿に左衛門は後退りする。
「‥‥父上の所業について謝りたい。それと、散花と父上に交わりがある事は知らなかった。危うく親子で‥‥」
若旦那が不意に黙ったので、散花はにっこりと笑うとその場に立ち襦袢を脱ぎ捨てた。顕になる裸体に左衛門の表情は凍りつく。
「散花は陰間です。ほら、男の体つきをしているでしょ?若旦那様、散花は『菊乃』にはなれません。『菊乃』を求めて若旦那様が私を水揚げなさるおつもりならば、私はお受けできません。どうぞ私の事はお忘れ下さい。」
散花は裸体のまま寝床に正座すると、深く頭を下げた。その姿を左衛門は切なく見つめる。
◆◆◆◆◆
散花は動揺を隠せぬまま、それでも肌襦袢の帯を解き始める。
「左様ですか、三人で。わかりました!ここは散花にお任せください。年増の陰間として、経験だけは豊富ですので!」
シュルシュルと帯を解く散花に、弥太郎と若旦那は慌てて言葉を発した。
「待ちなさい、誤解だ!」
「脱ぐな、散花!」
散花は解き終わると襦袢の帯を若旦那に手渡し微笑む。
「遠慮はなしで、若旦那樣。『蕾める花』の時期には、桔梗屋の旦那様にたいそう可愛がって頂きました。」
「え、父上と!?」
「年増になってからは一向に声はかかりませんが。まあ、旦那様はオイタが過ぎて蔦屋を出禁になりましたが。」
「‥‥出禁」
左衛門が呆然と聞き返すと、散花は旦那が出禁になった経緯を丁寧に答えた。
「若旦那のお父様は、お店の『蕾める花』に解釈違いの江戸四十八手を試して、陰間に大怪我をさせたのです。その後も色々とあり、出禁となりました。」
左衛門は男色をあまり知らず、肛交で四十八手が可能なのかと想像して慌てて首をふる。
「その様は事が‥‥」
「桔梗屋の旦那様は襦袢の帯で私の体を縛り、二人がかりで愛でる事を好まれました。若旦那様がお父様の趣向を継いでおられても、散花は大丈夫です。2輪刺しもできますよ、左衛門樣?」
散花は左衛門の手に帯を握らせると、手首を括って欲しいと両手を差し出した。その姿に左衛門は後退りする。
「‥‥父上の所業について謝りたい。それと、散花と父上に交わりがある事は知らなかった。危うく親子で‥‥」
若旦那が不意に黙ったので、散花はにっこりと笑うとその場に立ち襦袢を脱ぎ捨てた。顕になる裸体に左衛門の表情は凍りつく。
「散花は陰間です。ほら、男の体つきをしているでしょ?若旦那様、散花は『菊乃』にはなれません。『菊乃』を求めて若旦那様が私を水揚げなさるおつもりならば、私はお受けできません。どうぞ私の事はお忘れ下さい。」
散花は裸体のまま寝床に正座すると、深く頭を下げた。その姿を左衛門は切なく見つめる。
◆◆◆◆◆
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
陰間で一杯
志波中佐
BL
江戸時代のとある武士が陰間茶屋である青年と出逢うお話。
当時、男色ブームが起きていたということを知り、思いついた次第です。
こういう事を思っていた男娼も少なからずいたのではないでしょうか。
当時の男同士の営みについての記事を読んでいるとそんな気がしてきます…

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。


ド天然アルファの執着はちょっとおかしい
のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。
【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】

愛人は嫌だったので別れることにしました。
伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。
しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる