15 / 20
弥太郎と左衛門
しおりを挟む
◆◆◆◆◆
「うっ、んっ‥‥‥ぁ。」
弥太郎が散花の帯を解き始めると、陰間が少し艶っぽい声を洩らした。散花を見つめながら、左衛門は弥太郎に話しかける。
「弥太郎だったか?君が私の命令に黙って従うとは少し拍子抜けしたよ。弥太郎はこの水揚げに反対していると思ったが違うのかい?」
弥太郎は散花に視線を向けたまま、若旦那の問に応じる。
「俺は元陰間です。陰間の水揚げが稀なことで、ありがたい事だと承知しています。桔梗屋の若旦那が散花自身を想って懇ろになりたいと仰るなら‥‥手伝いは致します。」
弥太郎は寝床に横たわる散花から、鮮やかな手付きで帯を解いて抜き取った。振り袖の襟元がくたりと崩れて、襦袢姿の陰間が現れる。
「『散花自身を想って懇ろに』‥‥随分含みのある言い方をするね、弥太郎?」
弥太郎は左衛門の言葉には応じず別の事を聞いた。
「長襦袢の帯も解きますか?」
「いや、そのままでいい」
「承知しました」
弥太郎はそう答えると帯を畳んでその場で一礼する。しかし、衝立のそばに座り直すと動く様子がない。左衛門は散花を抱き寄せると、からかいを込めて弥太郎に問う。
「言動不一致とはこの事だな。私と散花が懇ろになる手伝いをするのではないのかい?そう不機嫌な顔でそばにいられては不快だ。なにか言いたいことがあるなら、はっきりと言ってはどうだ?」
若旦那の言葉に弥太郎は怯むことなく応じる。
「もしも、若旦那様が散花を『菊乃』として扱うならば、散花を担いででも蔦屋に連れて戻ります。俺は散花の幼馴染として、散花の事を散花として愛してくださる御仁と添い遂げて欲しいのです」
左衛門は弥太郎の言葉に目を丸くした。
◆◆◆◆◆
「うっ、んっ‥‥‥ぁ。」
弥太郎が散花の帯を解き始めると、陰間が少し艶っぽい声を洩らした。散花を見つめながら、左衛門は弥太郎に話しかける。
「弥太郎だったか?君が私の命令に黙って従うとは少し拍子抜けしたよ。弥太郎はこの水揚げに反対していると思ったが違うのかい?」
弥太郎は散花に視線を向けたまま、若旦那の問に応じる。
「俺は元陰間です。陰間の水揚げが稀なことで、ありがたい事だと承知しています。桔梗屋の若旦那が散花自身を想って懇ろになりたいと仰るなら‥‥手伝いは致します。」
弥太郎は寝床に横たわる散花から、鮮やかな手付きで帯を解いて抜き取った。振り袖の襟元がくたりと崩れて、襦袢姿の陰間が現れる。
「『散花自身を想って懇ろに』‥‥随分含みのある言い方をするね、弥太郎?」
弥太郎は左衛門の言葉には応じず別の事を聞いた。
「長襦袢の帯も解きますか?」
「いや、そのままでいい」
「承知しました」
弥太郎はそう答えると帯を畳んでその場で一礼する。しかし、衝立のそばに座り直すと動く様子がない。左衛門は散花を抱き寄せると、からかいを込めて弥太郎に問う。
「言動不一致とはこの事だな。私と散花が懇ろになる手伝いをするのではないのかい?そう不機嫌な顔でそばにいられては不快だ。なにか言いたいことがあるなら、はっきりと言ってはどうだ?」
若旦那の言葉に弥太郎は怯むことなく応じる。
「もしも、若旦那様が散花を『菊乃』として扱うならば、散花を担いででも蔦屋に連れて戻ります。俺は散花の幼馴染として、散花の事を散花として愛してくださる御仁と添い遂げて欲しいのです」
左衛門は弥太郎の言葉に目を丸くした。
◆◆◆◆◆
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
陰間で一杯
志波中佐
BL
江戸時代のとある武士が陰間茶屋である青年と出逢うお話。
当時、男色ブームが起きていたということを知り、思いついた次第です。
こういう事を思っていた男娼も少なからずいたのではないでしょうか。
当時の男同士の営みについての記事を読んでいるとそんな気がしてきます…

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。


ド天然アルファの執着はちょっとおかしい
のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。
【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】

愛人は嫌だったので別れることにしました。
伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。
しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる