8 / 20
寝所で添い寝
しおりを挟む
◆◆◆◆◆
「散花、大丈夫か?」
「え?」
弥太郎に声を掛けられ、散花は我に返る。散花は若旦那に抱きつかれたまま苦笑いを浮かべる。
「弥太郎さん。私はこのまま若旦那と床入するから、一緒に寝所に運んでくれる?」
散花の言葉に弥太郎は渋い顔をする。そして、眉を寄せたまま本音を洩らした。
「若旦那はお前を見て『菊乃』って呼んでた。今回は客に問題があった。このまま帰っても、茶屋の旦那は怒らへんよ。俺がちゃんと庇うから‥‥散花、帰ろう」
「私は左衛門さんに姉の事を聞きたいから、床入したい。二人っきりで話がしたくて。若旦那が目覚めるまでは添い寝でもしてるわ。いいやろ、弥太郎さん?」
弥太郎は気難しい表情を浮かべていたが、やがてため息を付いて口を開く。
「若旦那を担いで寝所に運ぶわ」
「ありがとう、弥太郎さん」
「散花は‥‥まあ、ええわ。行くで」
「うん!」
料理屋の旦那に挨拶をしたあと、女中に案内を頼み座敷の横の寝所に向う。寝所に入るとお香の良い香りがした。すでに床の準備は整っており、弥太郎はやや乱暴に若旦那を布団の上に寝転した。
「乱暴にしない!」
「いや、これくらいは許されるやろ!大体、こいつはお前の名前を一回も呼んでないんやで?腹立つやろ、普通は」
「元陰間の発言とは思えんよ、弥太郎さん。酔っ払いの相手は慣れてるやろ?」
弥太郎は少し唇を噛んだ後に、散花を引き寄せて耳元で囁いた。
「酔っ払いの相手を散々してきたから心配なんや‥‥お前のことが。寝所のそばの廊下で控えてるから、何かあったらすぐに呼べ、散花」
「弥太郎さん」
「返事」
「分かった。頼りにしてます。」
「よし、任せとけ」
弥太郎は軽く笑って散花の肩を軽く叩いた。弥太郎の言葉に安心して、散花は寝転ぶ左衛門の横に正座する。その様子を見た弥太郎はそっと寝所を出て襖を閉める。
「左衛門さん、お目覚めでしょ?」
「ああ、気付かれてしまった。恥じ入ってこのまま狸寝入りをしたがったのですが。許してはくれないようだね。散花と呼んでいいかい?それとも、琴風?」
「散花と呼んでください、若旦那様」
散花は左衛門に向けて頭を下げた。
◆◆◆◆◆
「散花、大丈夫か?」
「え?」
弥太郎に声を掛けられ、散花は我に返る。散花は若旦那に抱きつかれたまま苦笑いを浮かべる。
「弥太郎さん。私はこのまま若旦那と床入するから、一緒に寝所に運んでくれる?」
散花の言葉に弥太郎は渋い顔をする。そして、眉を寄せたまま本音を洩らした。
「若旦那はお前を見て『菊乃』って呼んでた。今回は客に問題があった。このまま帰っても、茶屋の旦那は怒らへんよ。俺がちゃんと庇うから‥‥散花、帰ろう」
「私は左衛門さんに姉の事を聞きたいから、床入したい。二人っきりで話がしたくて。若旦那が目覚めるまでは添い寝でもしてるわ。いいやろ、弥太郎さん?」
弥太郎は気難しい表情を浮かべていたが、やがてため息を付いて口を開く。
「若旦那を担いで寝所に運ぶわ」
「ありがとう、弥太郎さん」
「散花は‥‥まあ、ええわ。行くで」
「うん!」
料理屋の旦那に挨拶をしたあと、女中に案内を頼み座敷の横の寝所に向う。寝所に入るとお香の良い香りがした。すでに床の準備は整っており、弥太郎はやや乱暴に若旦那を布団の上に寝転した。
「乱暴にしない!」
「いや、これくらいは許されるやろ!大体、こいつはお前の名前を一回も呼んでないんやで?腹立つやろ、普通は」
「元陰間の発言とは思えんよ、弥太郎さん。酔っ払いの相手は慣れてるやろ?」
弥太郎は少し唇を噛んだ後に、散花を引き寄せて耳元で囁いた。
「酔っ払いの相手を散々してきたから心配なんや‥‥お前のことが。寝所のそばの廊下で控えてるから、何かあったらすぐに呼べ、散花」
「弥太郎さん」
「返事」
「分かった。頼りにしてます。」
「よし、任せとけ」
弥太郎は軽く笑って散花の肩を軽く叩いた。弥太郎の言葉に安心して、散花は寝転ぶ左衛門の横に正座する。その様子を見た弥太郎はそっと寝所を出て襖を閉める。
「左衛門さん、お目覚めでしょ?」
「ああ、気付かれてしまった。恥じ入ってこのまま狸寝入りをしたがったのですが。許してはくれないようだね。散花と呼んでいいかい?それとも、琴風?」
「散花と呼んでください、若旦那様」
散花は左衛門に向けて頭を下げた。
◆◆◆◆◆
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)
年上が敷かれるタイプの短編集
あかさたな!
BL
年下が責める系のお話が多めです。
予告なくr18な内容に入ってしまうので、取扱注意です!
全話独立したお話です!
【開放的なところでされるがままな先輩】【弟の寝込みを襲うが返り討ちにあう兄】【浮気を疑われ恋人にタジタジにされる先輩】【幼い主人に狩られるピュアな執事】【サービスが良すぎるエステティシャン】【部室で思い出づくり】【No.1の女王様を屈服させる】【吸血鬼を拾ったら】【人間とヴァンパイアの逆転主従関係】【幼馴染の力関係って決まっている】【拗ねている弟を甘やかす兄】【ドSな執着系執事】【やはり天才には勝てない秀才】
------------------
新しい短編集を出しました。
詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
【R18淫乱恋事情】陰間茶屋の散花さん
月歌(ツキウタ)
BL
江戸時代風の上方の花街に陰間茶屋がありまして。屋号は『蔦屋』。春を売る陰間たちが男客の指名を待っている。
蕾める花(11〜14歳)
盛りの花(15〜18歳)
散る花 (19〜22歳)
そこにおります散花さん(琴風)は、陰間界隈では年増の22歳!陰間茶屋で最年長の『琴風』は、皆から『散花』と呼ばれている。そろそろ引退を考えつつ、男に抱かれるのが心地よくもあり‥‥。でも、指名客は減るばかり。
どうする、散花?
俺と父さんの話
五味ほたる
BL
「あ、ぁ、っ……、っ……」
父さんの体液が染み付いたものを捨てるなんてもったいない。俺の一部にしたくて、ゴクンと飲み込んだ瞬間に射精した。
「はあっ……はー……は……」
手のひらの残滓をぼんやり見つめる。セックスしたい。セックスしたい。裸の父さんに触りたい。入れたい。ひとつになりたい。
■エロしかない話、トモとトモの話(https://www.alphapolis.co.jp/novel/828143553/192619023)のオメガバース派生。だいたい「父さん、父さん……っ」な感じです。前作を読んでなくても読めます。
■2022.04.16
全10話を収録したものがKindle Unlimited読み放題で配信中です!全部エロです。ボリュームあります。
攻め×攻め(樹生×トモ兄)、3P、鼻血、不倫プレイ、ananの例の企画の話などなど。
Amazonで「五味ほたる」で検索すると出てきます。
購入していただけたら、私が日高屋の野菜炒め定食(600円)を食べられます。レビュー、★評価など大変励みになります!
短編集
枝浬菰
BL
ここではBL小説の短編を載せていきます。
あらすじは各1話目に設定してあります。
目次
❁陰間茶屋→完結
❁ずっと笑っていてほしいから→完結
❁⃘メイド喫茶にようこそ
続きは本編にて…→
-------------*-----------------------*-----------------------------*--------------------*----------
好きかも、続きが気になるかもと思ったら【お気に入り】一票をお願いします。
※性描写多く含みます。
※文章の無断転載禁止。
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
オークなんかにメス墜ちさせられるわけがない!
空倉改称
BL
異世界転生した少年、茂宮ミノル。彼は目覚めてみると、オークの腕の中にいた。そして群れのリーダーだったオークに、無理やりながらに性行為へと発展する。
しかしやはりと言うべきか、ミノルがオークに敵うはずがなく。ミノルはメス墜ちしてしまった。そしてオークの中でも名器という噂が広まり、なんやかんやでミノルは彼らの中でも立場が上になっていく。
そしてある日、リーダーのオークがミノルに結婚を申し入れた。しかしそれをキッカケに、オークの中でミノルの奪い合いが始まってしまい……。
(のんびりペースで更新してます、すみません(汗))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる