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厄介な散花
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◆◆◆◆◆
弥太郎の差し出した手のひらに、散花は自らの手のひらを重ねる。
「手が大きいね、弥太郎さん」
「ごつごつしてるやろ?昔は女の手より柔いと、客によう舐められたのにな」
散る花は弥太郎の言葉に思わず笑みを洩らす。そして、弥太郎に手を引かれて料理屋の入口をくぐった。
「俺は幇間として宴席にあがる事にするわ。よろしくな、散花」
「茶屋の旦那の許しは得たの?」
「俺はお前の幼馴染みやから、特別扱いしても旦那さんも許してくれるって」
弥太郎の『特別』という言葉に、散花は頬を赤らめそうになる。
弥太郎と散花は同じ時期に茶屋に売られて陰間になった。『蕾める花』の頃の弥太郎と散花は同じ背丈をしていた。『盛りの花』になると弥太郎は急に男らしくなり、女客を抱くようになる。やがて『散る花』になると弥太郎は早々に陰間をやめて茶屋の回しに転業した。
「弥太郎さんは男らしくなったね」
「まあな」
そんな会話をしていると、二階から女中が慌てて階段を降りてきた。そして、散花を見つけると慌てて話しかける。
「散花さん、大変や!」
「どうしはったん?」
「散花さんを指名した桔梗屋の若旦那のことなんやけど。お酒を飲み始めたらあっという間にえらく酔って、『菊乃を呼べ』と騒いではるのよ!」
「え‥‥菊乃を?」
「散花を指名して『菊乃を呼べ』とは失礼な奴やな。俺が様子を見て来るから、散花は一階で待ってて」
弥太郎の言葉に散花は首をふり、はっきりとした口調で応じた。
「桔梗屋の若旦那は私の客やで?『菊乃を呼べ』と言われて引き下がれんわ」
「散花が厄介や」
「一緒に来て、弥太郎さん」
散花の言葉に弥太郎は苦笑いを浮かべたが、すぐに頷き二人で二階に向かう。
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弥太郎の差し出した手のひらに、散花は自らの手のひらを重ねる。
「手が大きいね、弥太郎さん」
「ごつごつしてるやろ?昔は女の手より柔いと、客によう舐められたのにな」
散る花は弥太郎の言葉に思わず笑みを洩らす。そして、弥太郎に手を引かれて料理屋の入口をくぐった。
「俺は幇間として宴席にあがる事にするわ。よろしくな、散花」
「茶屋の旦那の許しは得たの?」
「俺はお前の幼馴染みやから、特別扱いしても旦那さんも許してくれるって」
弥太郎の『特別』という言葉に、散花は頬を赤らめそうになる。
弥太郎と散花は同じ時期に茶屋に売られて陰間になった。『蕾める花』の頃の弥太郎と散花は同じ背丈をしていた。『盛りの花』になると弥太郎は急に男らしくなり、女客を抱くようになる。やがて『散る花』になると弥太郎は早々に陰間をやめて茶屋の回しに転業した。
「弥太郎さんは男らしくなったね」
「まあな」
そんな会話をしていると、二階から女中が慌てて階段を降りてきた。そして、散花を見つけると慌てて話しかける。
「散花さん、大変や!」
「どうしはったん?」
「散花さんを指名した桔梗屋の若旦那のことなんやけど。お酒を飲み始めたらあっという間にえらく酔って、『菊乃を呼べ』と騒いではるのよ!」
「え‥‥菊乃を?」
「散花を指名して『菊乃を呼べ』とは失礼な奴やな。俺が様子を見て来るから、散花は一階で待ってて」
弥太郎の言葉に散花は首をふり、はっきりとした口調で応じた。
「桔梗屋の若旦那は私の客やで?『菊乃を呼べ』と言われて引き下がれんわ」
「散花が厄介や」
「一緒に来て、弥太郎さん」
散花の言葉に弥太郎は苦笑いを浮かべたが、すぐに頷き二人で二階に向かう。
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