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2. 桔梗屋の若旦那
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◆◆◆◆◆
「水揚げですか?あの、何かの間違えではありませんか?私は年増の陰間『散る花』です。最近は指名も入らんので、そろそろ転業を考えているところで‥‥‥」
散花がしろともどろになりながらそう答えると、茶屋の旦那はにっこり笑って応じた。
「転業を考えてたなら、ちょうどええやないか。陰間の水揚げなんぞ滅多にないことや。散花は親の借金は払い終わっとるけど、蓄えはそないにないやろ?」
「はぁ‥‥蓄えはないです。なので、幇間の仕事を旦那様に紹介してもらおうと思ってたところです」
「幇間は宴会の盛り上げ役やで?恥ずかしがりやの散花には無理やろ。裸踊り見せろと言われて、すぐに着物を脱げるか?」
「裸踊り‥‥」
散花は宴会で着物を脱ぎ散らす自身の姿を思い浮かべてた。そして、なんとも情けない表情を浮かべて首をふる。
「確かに私に幇間は向かんかもしれません。でも、私に水揚げの話があることが今だに信じられんのですが。私のご贔屓さんですか?」
散花はふと鳶職の喜助を思い浮かべる。喜助は『蕾める花』『盛りの花』『散る花』と、それぞれの散花を指名してくれる贔屓客だ。
「もしかして、喜助さん?」
「‥‥悪いが、違うお人や」
「あっ、そうですか!今の事は聞かんかった事にして下さい。お願いします」
散花は慌てて頭を下げる。余計なことを口走ったと後悔する散花に、茶屋の旦那は声を掛ける。
「お前を水揚げしたいと望んでるのは、桔梗屋の若旦那や」
「ひっ!桔梗屋!?」
散花は膝をついたまま後退り、その場で畳に額を擦り付けて旦那に懇願する。
「桔梗屋の旦那だけは勘弁して下さい。あの人は助平な変態ですから!」
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「水揚げですか?あの、何かの間違えではありませんか?私は年増の陰間『散る花』です。最近は指名も入らんので、そろそろ転業を考えているところで‥‥‥」
散花がしろともどろになりながらそう答えると、茶屋の旦那はにっこり笑って応じた。
「転業を考えてたなら、ちょうどええやないか。陰間の水揚げなんぞ滅多にないことや。散花は親の借金は払い終わっとるけど、蓄えはそないにないやろ?」
「はぁ‥‥蓄えはないです。なので、幇間の仕事を旦那様に紹介してもらおうと思ってたところです」
「幇間は宴会の盛り上げ役やで?恥ずかしがりやの散花には無理やろ。裸踊り見せろと言われて、すぐに着物を脱げるか?」
「裸踊り‥‥」
散花は宴会で着物を脱ぎ散らす自身の姿を思い浮かべてた。そして、なんとも情けない表情を浮かべて首をふる。
「確かに私に幇間は向かんかもしれません。でも、私に水揚げの話があることが今だに信じられんのですが。私のご贔屓さんですか?」
散花はふと鳶職の喜助を思い浮かべる。喜助は『蕾める花』『盛りの花』『散る花』と、それぞれの散花を指名してくれる贔屓客だ。
「もしかして、喜助さん?」
「‥‥悪いが、違うお人や」
「あっ、そうですか!今の事は聞かんかった事にして下さい。お願いします」
散花は慌てて頭を下げる。余計なことを口走ったと後悔する散花に、茶屋の旦那は声を掛ける。
「お前を水揚げしたいと望んでるのは、桔梗屋の若旦那や」
「ひっ!桔梗屋!?」
散花は膝をついたまま後退り、その場で畳に額を擦り付けて旦那に懇願する。
「桔梗屋の旦那だけは勘弁して下さい。あの人は助平な変態ですから!」
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