異世界風俗店でおっさんが男娼をしている件

月歌(ツキウタ)

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騎士との夜は穏やかに

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ローランドが俺の言葉に顔をひきつらせた。あれ?そういう要請ではなかったのかな?

「まて、セツ!私はその様な事は望んではいない!」

ありゃ、やっぱり。

「そうでしたか。失礼しました、ローランド様。もしも、俺が若くないために気がのらないのであれば、若い男娼を呼びます。彼らはプロですし、美丈夫の騎士様になら喜んで尽くすはずです。呼んで参りましょうか?」

「私にその気はないと言っている!」

「そうですか。ローランド様、男娼の戯言と思い聞き流して下さい。では、俺はテントの端で眠らせて貰います」

「いや、セツはベッドを使いなさい。ベッドと言っても毛布を重ねただけの代物だが、地面に直接体を横たえるよりよほどよい」

「それでは、ローランド様はどうされるのですか?」

「私はテントの端で寝る」

俺は少々あきれた表情で、ローランドをみた。おっさんを気遣う騎士が憐れでもあった。これが自己犠牲の騎士道か。まじで、かわいそう。

「ローランド様。俺は職業以外では男性とベッドを共にすることはありません。夜這いをすることもありませんから、ベッドを共にしていただけますか?そうでなくては、申し訳なくて一晩中眠れぬ気がします。如何でしょうか、ローランド様」

「そ、そうか。そうだな・・ところで、セツは男の恋人はいないのか?」

「男の恋人も女の恋人もいません。生活に余裕がなく、お金を稼ぐのがやっとです。ですが、最近よい客に当たりその方が俺の借金を全て支払ってくれたのです。その方から、お金も頂きましたので、頃合いをみて男娼を引退しようと考えております」

「・・話の続きはベッドで聞いてもよいか?セツはずいぶん疲れた顔をしている。休んだ方がよい」

「わかりました」

ローランドに導かれて、毛布を重ねたベッドに横になった。中々にふかふかで心地よい。

「その男とはどうなった?」
「え、ガブリエルですか?」
「ガブリエルと言うのか」

「迂闊にも名前を口にしてしまいました。確かに、俺は疲れているようです。顧客の情報になりますので、内緒にしてくださいね?」

「承知した」

「ガブリエルは伴侶を得て結婚いたしました。幸せになって欲しいですね」

「そいつはセツは捨てたのか!」

何故かローランドが興奮して、詰問してきた。

「そうではないです。ガブリエル様は、俺を愛人にしたいとおっしゃって下さいました。それがとても嬉しくて・・でも、お断りしました」

「何故、ことわる?よい話だと思うが?男を愛人にするものは多いぞ?」

「だって、伴侶になられた方が嫌な思いをされるでしょ?それに、愛人への情愛などいつか尽きるもの。俺はおっさんですし、愛にすがって生きるには若さが足りないのです」

不意にローランドが俺の髪を優しく撫でた。その手がガブリエルの指先のように思えて、俺は自身の指を絡めていた。

「ガブリエル・・本当は貴方と」

そこまで口にして俺は目を閉じた。おっさんの愚痴を若い騎士に聞かせて何になる。俺は涙が流れるのを感じながら、そのまま眠りについた。


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