6 / 7
騎士との夜は穏やかに
しおりを挟む
◆◆◆◆◆
ローランドが俺の言葉に顔をひきつらせた。あれ?そういう要請ではなかったのかな?
「まて、セツ!私はその様な事は望んではいない!」
ありゃ、やっぱり。
「そうでしたか。失礼しました、ローランド様。もしも、俺が若くないために気がのらないのであれば、若い男娼を呼びます。彼らはプロですし、美丈夫の騎士様になら喜んで尽くすはずです。呼んで参りましょうか?」
「私にその気はないと言っている!」
「そうですか。ローランド様、男娼の戯言と思い聞き流して下さい。では、俺はテントの端で眠らせて貰います」
「いや、セツはベッドを使いなさい。ベッドと言っても毛布を重ねただけの代物だが、地面に直接体を横たえるよりよほどよい」
「それでは、ローランド様はどうされるのですか?」
「私はテントの端で寝る」
俺は少々あきれた表情で、ローランドをみた。おっさんを気遣う騎士が憐れでもあった。これが自己犠牲の騎士道か。まじで、かわいそう。
「ローランド様。俺は職業以外では男性とベッドを共にすることはありません。夜這いをすることもありませんから、ベッドを共にしていただけますか?そうでなくては、申し訳なくて一晩中眠れぬ気がします。如何でしょうか、ローランド様」
「そ、そうか。そうだな・・ところで、セツは男の恋人はいないのか?」
「男の恋人も女の恋人もいません。生活に余裕がなく、お金を稼ぐのがやっとです。ですが、最近よい客に当たりその方が俺の借金を全て支払ってくれたのです。その方から、お金も頂きましたので、頃合いをみて男娼を引退しようと考えております」
「・・話の続きはベッドで聞いてもよいか?セツはずいぶん疲れた顔をしている。休んだ方がよい」
「わかりました」
ローランドに導かれて、毛布を重ねたベッドに横になった。中々にふかふかで心地よい。
「その男とはどうなった?」
「え、ガブリエルですか?」
「ガブリエルと言うのか」
「迂闊にも名前を口にしてしまいました。確かに、俺は疲れているようです。顧客の情報になりますので、内緒にしてくださいね?」
「承知した」
「ガブリエルは伴侶を得て結婚いたしました。幸せになって欲しいですね」
「そいつはセツは捨てたのか!」
何故かローランドが興奮して、詰問してきた。
「そうではないです。ガブリエル様は、俺を愛人にしたいとおっしゃって下さいました。それがとても嬉しくて・・でも、お断りしました」
「何故、ことわる?よい話だと思うが?男を愛人にするものは多いぞ?」
「だって、伴侶になられた方が嫌な思いをされるでしょ?それに、愛人への情愛などいつか尽きるもの。俺はおっさんですし、愛にすがって生きるには若さが足りないのです」
不意にローランドが俺の髪を優しく撫でた。その手がガブリエルの指先のように思えて、俺は自身の指を絡めていた。
「ガブリエル・・本当は貴方と」
そこまで口にして俺は目を閉じた。おっさんの愚痴を若い騎士に聞かせて何になる。俺は涙が流れるのを感じながら、そのまま眠りについた。
◆◆◆◆◆
ローランドが俺の言葉に顔をひきつらせた。あれ?そういう要請ではなかったのかな?
「まて、セツ!私はその様な事は望んではいない!」
ありゃ、やっぱり。
「そうでしたか。失礼しました、ローランド様。もしも、俺が若くないために気がのらないのであれば、若い男娼を呼びます。彼らはプロですし、美丈夫の騎士様になら喜んで尽くすはずです。呼んで参りましょうか?」
「私にその気はないと言っている!」
「そうですか。ローランド様、男娼の戯言と思い聞き流して下さい。では、俺はテントの端で眠らせて貰います」
「いや、セツはベッドを使いなさい。ベッドと言っても毛布を重ねただけの代物だが、地面に直接体を横たえるよりよほどよい」
「それでは、ローランド様はどうされるのですか?」
「私はテントの端で寝る」
俺は少々あきれた表情で、ローランドをみた。おっさんを気遣う騎士が憐れでもあった。これが自己犠牲の騎士道か。まじで、かわいそう。
「ローランド様。俺は職業以外では男性とベッドを共にすることはありません。夜這いをすることもありませんから、ベッドを共にしていただけますか?そうでなくては、申し訳なくて一晩中眠れぬ気がします。如何でしょうか、ローランド様」
「そ、そうか。そうだな・・ところで、セツは男の恋人はいないのか?」
「男の恋人も女の恋人もいません。生活に余裕がなく、お金を稼ぐのがやっとです。ですが、最近よい客に当たりその方が俺の借金を全て支払ってくれたのです。その方から、お金も頂きましたので、頃合いをみて男娼を引退しようと考えております」
「・・話の続きはベッドで聞いてもよいか?セツはずいぶん疲れた顔をしている。休んだ方がよい」
「わかりました」
ローランドに導かれて、毛布を重ねたベッドに横になった。中々にふかふかで心地よい。
「その男とはどうなった?」
「え、ガブリエルですか?」
「ガブリエルと言うのか」
「迂闊にも名前を口にしてしまいました。確かに、俺は疲れているようです。顧客の情報になりますので、内緒にしてくださいね?」
「承知した」
「ガブリエルは伴侶を得て結婚いたしました。幸せになって欲しいですね」
「そいつはセツは捨てたのか!」
何故かローランドが興奮して、詰問してきた。
「そうではないです。ガブリエル様は、俺を愛人にしたいとおっしゃって下さいました。それがとても嬉しくて・・でも、お断りしました」
「何故、ことわる?よい話だと思うが?男を愛人にするものは多いぞ?」
「だって、伴侶になられた方が嫌な思いをされるでしょ?それに、愛人への情愛などいつか尽きるもの。俺はおっさんですし、愛にすがって生きるには若さが足りないのです」
不意にローランドが俺の髪を優しく撫でた。その手がガブリエルの指先のように思えて、俺は自身の指を絡めていた。
「ガブリエル・・本当は貴方と」
そこまで口にして俺は目を閉じた。おっさんの愚痴を若い騎士に聞かせて何になる。俺は涙が流れるのを感じながら、そのまま眠りについた。
◆◆◆◆◆
3
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。
あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。
だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。
よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。
弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。
そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。
どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。
俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。
そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。
◎1話完結型になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる