異世界風俗店でおっさんが男娼をしている件

月歌(ツキウタ)

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自警団の男娼

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◆◆◆◆


『おっさんパラダイス』のガリバー店長の斡旋で、俺は自警団の魔物討伐に同行することになった。

ガリバー店長はおっさんでも姫様扱いされる職場だと言っていた。だが、それは真っ赤な嘘だった。

「ガリバーの野郎!お姫様扱いされるのは、若い男娼だけじゃねーかよ!姫扱いされる夢を見た俺がバカだったのか?おっさんは夢をみることは許されないのか。くそおーー!」

俺が愚痴っていると、突然目の前に魔物が現れた。俺は慌ててにげようとして、背後にひっくり返った。樹木の根っこに足を取られた!

「ぐおっ、やべえー!?」

ケルベロス系の犬的何かが、長い舌をだらりと口からはみ出して攻撃体制に入っていた。

「誰か助けてくれ~ー!」

俺は迫る魔物を前に叫んでいた。だが、誰も助けに来ない。嘘だろ?夜のお楽しみの男娼を見殺しにするのか?

「誰か助けて、うっ!?」

よく見れば自警団員の連中も、魔物に取り囲まれていた。疲れはてた様子ながらも、若い男娼を何人も庇い魔物に立ち向かう者もいた。

だが、おっさん男娼は眼中にないようだが!いや、それよりもだ!

ここに必要なのは男娼じゃないだろ!回復魔法師はどうした?回復役が何故いない?ポーション不足って、物資管理はどうなってんの?

だいたい、魔物狩りに来て道に迷うって、自警団ってバカなの?

「やべえー」

魔物は狩っても狩っても沸きだして、兵士たちは自身の血と魔物の返り血を全身に浴びている。とても、俺を助ける余裕は無さそうだ。

「ああ、くそ!」

助けが来ないお姫様は、自分で身を守るしかない。俺は必死に立ち上がって、魔物に背を向けた。だが、それが不味かった。ケルベロス系の魔物が、地を蹴って俺の背に迫った。

「ぐおおぁぁーーー死んだぁ!」

殺られたと思った俺は、そう叫んでいた。俺は地面にひれ伏したが、痛みはやってこなかった。ただ、俺の横をコロコロとケルベロスっぽい首が転がっていた。

「怪我はないか?」

俺は声を掛けられて振り返った。そこにいた人物は、明らかに自警団の人間ではなかった。馬に乗ったその男は、白百合の紋章を刻んだ甲冑を身に纏っていた。白百合の紋章は、王国騎士団の証だ! 

「俺に怪我はない。だが、魔物狩りの自警団が道に迷って、深い森に入り込みすぎた。二十五人の自警団員と六人の男娼がいる。回復師もポーションもない。つまり、ボロボロにやられてる!以上だ、助けてくれ!」

「お前は自警団員か?」
「いや、おっさんだが男娼だ」
「わかった。お前は私が保護する」

「いや、保護は要らないから魔物を倒してくれる?」

俺は男に腕を掴まれて、馬に無理矢理乗せられた。高い視線から回りをみると、既に騎士団が魔物の排除に動いていた。すばやい。

「おお、騎士団。強い!」

「お前も中々の度胸だった。だが、魔物に背を向けたのは不味かった。あれでは、襲ってくれと魔物を誘っているようなものだ」

「男娼の性って奴かな。魔物まで誘うとか、俺ってすごくない?」

「・・・」

沈黙が返ってきた。まあ、おやじギャグなんて笑えねーわな。


◆◆◆◆

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