異世界風俗店でおっさんが男娼をしている件

月歌(ツキウタ)

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太客を逃す

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ガブリエルは失意の表情で、店を後にした。俺はガブリエルを店先で見送った後、深いため息を付いた。店内に戻ると、店長のガリバーが俺を待っていた。

「ガブリエル様が、お前の借金を全て支払って下さった。これで、お前は自由だ、セツ。もう、男娼として体を売る必要はない」

俺はため息をついて肩を竦めた。

「この年で自由だと言われてもね。ずっと男娼をしてきたのに、今さら何をすればいいんですか、店長?居酒屋でも開けとでも?」

「ガブリエル様は、本気でセツを愛人にするつもりだった。素直に愛人になれば良いのに。何故断った、セツ?」

「ガリバー店長~、部屋の盗聴は止めてください。おっさんの喘ぎ声を聞いて何が楽しいのかさっぱりわからない。変態ですか、店長?」

ガリバー店長は不意に真面目な顔になった。

「ガブリエル様のような上客は特別だ。『おっさんパラダイス』にくる客は、おっさんを愛している奴など滅多にいない。客は男娼を下に見て激しく抱く。歳を取った男娼を、本気で愛する奴なんていやしない。だが、ガブリエル様は別だと思うぞ。お前はいますぐにガブリエル様にすがり付き、愛人になりたいと言うべきだ。俺はそう思うぞ、セツ?」

「うーん。まあ、ガブリエルの愛人になるのが一番賢い生き方なんだろうけれど。誰かの一番でないのはやはり辛いかな。特にガブリエルは・・」

そこまで言葉にして、俺は口を閉じた。それ以上は言わない方がいい。未練がましいおっさんなど気持ち悪いだけだ。

「ところで、ガリバー店長」
「なんだ、セツ?」

「俺を指名してくれる客って、やっぱガブリエルだけかな?」

店長がカウンターの帳簿をめぐりすぐに閉じた。

「ガブリエルだけだな」

「うーん。借金をガブリエルが帳消しにしてくれたのはすごく有り難いんだけど、これからどうしよう」

「借金の支払いだけではなく、ガブリエル様はセツの為に当面の生活費も用意されていた。ほら、この袋だ。とんでもない太客だったな、セツ」

店長が投げて寄越した袋はずっしりとしていた。中を覗くと金貨が入っていた。まじで、太客。とにかく、これで王都で部屋を借りれそうだ。でも、仕事がなぁ~。

「ガリバー店長。一度、男娼に落ちた人間は、結局風俗界隈でしか生きていけない。この世界に来て散々学んだことだ。だけど、俺も年だし・・なんか仕事を斡旋してくれない?」

「仕方ないなぁ。少々危険だが、おっさん男娼にも関わらずお姫様扱いされる現場はある。一度試すか、セツ?」

「お、燃えるね~」


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