2 / 7
太客を逃す
しおりを挟む
◆◆◆◆◆
ガブリエルは失意の表情で、店を後にした。俺はガブリエルを店先で見送った後、深いため息を付いた。店内に戻ると、店長のガリバーが俺を待っていた。
「ガブリエル様が、お前の借金を全て支払って下さった。これで、お前は自由だ、セツ。もう、男娼として体を売る必要はない」
俺はため息をついて肩を竦めた。
「この年で自由だと言われてもね。ずっと男娼をしてきたのに、今さら何をすればいいんですか、店長?居酒屋でも開けとでも?」
「ガブリエル様は、本気でセツを愛人にするつもりだった。素直に愛人になれば良いのに。何故断った、セツ?」
「ガリバー店長~、部屋の盗聴は止めてください。おっさんの喘ぎ声を聞いて何が楽しいのかさっぱりわからない。変態ですか、店長?」
ガリバー店長は不意に真面目な顔になった。
「ガブリエル様のような上客は特別だ。『おっさんパラダイス』にくる客は、おっさんを愛している奴など滅多にいない。客は男娼を下に見て激しく抱く。歳を取った男娼を、本気で愛する奴なんていやしない。だが、ガブリエル様は別だと思うぞ。お前はいますぐにガブリエル様にすがり付き、愛人になりたいと言うべきだ。俺はそう思うぞ、セツ?」
「うーん。まあ、ガブリエルの愛人になるのが一番賢い生き方なんだろうけれど。誰かの一番でないのはやはり辛いかな。特にガブリエルは・・」
そこまで言葉にして、俺は口を閉じた。それ以上は言わない方がいい。未練がましいおっさんなど気持ち悪いだけだ。
「ところで、ガリバー店長」
「なんだ、セツ?」
「俺を指名してくれる客って、やっぱガブリエルだけかな?」
店長がカウンターの帳簿をめぐりすぐに閉じた。
「ガブリエルだけだな」
「うーん。借金をガブリエルが帳消しにしてくれたのはすごく有り難いんだけど、これからどうしよう」
「借金の支払いだけではなく、ガブリエル様はセツの為に当面の生活費も用意されていた。ほら、この袋だ。とんでもない太客だったな、セツ」
店長が投げて寄越した袋はずっしりとしていた。中を覗くと金貨が入っていた。まじで、太客。とにかく、これで王都で部屋を借りれそうだ。でも、仕事がなぁ~。
「ガリバー店長。一度、男娼に落ちた人間は、結局風俗界隈でしか生きていけない。この世界に来て散々学んだことだ。だけど、俺も年だし・・なんか仕事を斡旋してくれない?」
「仕方ないなぁ。少々危険だが、おっさん男娼にも関わらずお姫様扱いされる現場はある。一度試すか、セツ?」
「お、燃えるね~」
◆◆◆◆◆
ガブリエルは失意の表情で、店を後にした。俺はガブリエルを店先で見送った後、深いため息を付いた。店内に戻ると、店長のガリバーが俺を待っていた。
「ガブリエル様が、お前の借金を全て支払って下さった。これで、お前は自由だ、セツ。もう、男娼として体を売る必要はない」
俺はため息をついて肩を竦めた。
「この年で自由だと言われてもね。ずっと男娼をしてきたのに、今さら何をすればいいんですか、店長?居酒屋でも開けとでも?」
「ガブリエル様は、本気でセツを愛人にするつもりだった。素直に愛人になれば良いのに。何故断った、セツ?」
「ガリバー店長~、部屋の盗聴は止めてください。おっさんの喘ぎ声を聞いて何が楽しいのかさっぱりわからない。変態ですか、店長?」
ガリバー店長は不意に真面目な顔になった。
「ガブリエル様のような上客は特別だ。『おっさんパラダイス』にくる客は、おっさんを愛している奴など滅多にいない。客は男娼を下に見て激しく抱く。歳を取った男娼を、本気で愛する奴なんていやしない。だが、ガブリエル様は別だと思うぞ。お前はいますぐにガブリエル様にすがり付き、愛人になりたいと言うべきだ。俺はそう思うぞ、セツ?」
「うーん。まあ、ガブリエルの愛人になるのが一番賢い生き方なんだろうけれど。誰かの一番でないのはやはり辛いかな。特にガブリエルは・・」
そこまで言葉にして、俺は口を閉じた。それ以上は言わない方がいい。未練がましいおっさんなど気持ち悪いだけだ。
「ところで、ガリバー店長」
「なんだ、セツ?」
「俺を指名してくれる客って、やっぱガブリエルだけかな?」
店長がカウンターの帳簿をめぐりすぐに閉じた。
「ガブリエルだけだな」
「うーん。借金をガブリエルが帳消しにしてくれたのはすごく有り難いんだけど、これからどうしよう」
「借金の支払いだけではなく、ガブリエル様はセツの為に当面の生活費も用意されていた。ほら、この袋だ。とんでもない太客だったな、セツ」
店長が投げて寄越した袋はずっしりとしていた。中を覗くと金貨が入っていた。まじで、太客。とにかく、これで王都で部屋を借りれそうだ。でも、仕事がなぁ~。
「ガリバー店長。一度、男娼に落ちた人間は、結局風俗界隈でしか生きていけない。この世界に来て散々学んだことだ。だけど、俺も年だし・・なんか仕事を斡旋してくれない?」
「仕方ないなぁ。少々危険だが、おっさん男娼にも関わらずお姫様扱いされる現場はある。一度試すか、セツ?」
「お、燃えるね~」
◆◆◆◆◆
2
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる