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兄弟は仲良くが理想だけど
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◆◆◆◆◆
リナトは観念したのか、口を開きクッキーにかぶり付いた。ついでに、僕の指までかぶりつく。そして、舌で指先を舐められた。
「ひぇ!なにするんだよ、リナト!」
「甘い」
「リナトは下品だな。マーシャ、指を出しなさい」
「え、ワレリー兄上も僕の指を舐めたいのですか?まあ、いいですけど」
僕が指を差し出すと、ワレリー兄上はしばらく硬直した。それから、無言でハンカチを取り出すと僕の指先を拭ってくれた。ふむ、勘違いだったか。
「ありがとうございます、兄上」
「どういたしまして」
ワレリー兄上がなんだか照れ臭そうに、紅茶を口にした。そんな兄上を見つめていると視線を感じて、リナトに向き直った。
「どうしたの?」
「勉強を教える約束はまだ有効?」
「あ、忘れてた・・」
「マーシャ兄さん」
「ごめんね~」
僕たちのやり取りに、ワレリー兄上が眉を寄せて口を開いた。
「リナトには専属の教師をつけている。勉強で躓いたなら、教師に質問しろ。初等部の時は、マーシャに勉強を教わる事を許していた。だが、お前はもう中等部だ。たとえ兄弟でも、孕み子のマーシャと二人きりになることは避けなさい」
ワレリー兄上の言葉に、リナトがきつい眼差しを向けた。言い合いが始まりそうで、僕はため息をついた。紅茶に口をつけたが、何時もより苦い味がした。
「ワレリー兄上は特別って訳?」
「何がだ?」
「ワレリー兄上とマーシャ兄さんは、よく二人で部屋に籠ってるだろ?なのに、俺がマーシャと二人きりになると説教するとか、絶対おかしいだろ」
「リナト、やめなさい」
「マーシャは黙ってろよ。俺は兄上に色々言いたいんだよ!」
弟に呼び捨てにされたよ。ワレリー兄上とリナトはどうも馬が会わないんだよな。
「ならば、こう言い変えようか?リナトとマーシャでは身分が違う。侯爵家の子息と庶民が席を同じくするなど、本来ならあり得ないことだ。身分を弁えて、大人しく後見人である俺の命令に従え」
「な!?」
リナトがソファーから立ち上がり、体を震わす。そして、言葉を絞り出した。
「俺も侯爵家の子息だ」
「お前が産みの親に唆されて、弁護士を訪ね回っていることは承知している。だが、父上はマグヌス = アイプと婚姻をする前に亡くなった。父上はマグヌスやお前に遺言書を遺す事なく亡くなった。たとえ、法廷で権利を主張しても意見は通りはしない、リナト = アイプ」
『リナト = アイプ』と呼ばれて、リナトは表情を固くした。そして、ワレリー兄上を睨み付けた。
「俺は正当な権利を主張しているだけだ」
「・・リナトの産みの親が育児放棄した為に、俺が後見人に名乗り出た。衣食住を与え、教育も十分に受けさせている。それでも、不満ならば産みの親の元に行くか、独立をしてマリツェフ家を出ていくことだ。俺はリナトをマリツェフ家の一員に加えるつもりは一切ない。俺の兄弟はマーシャだけだ。マーシャだけが・・俺の弟だ」
「マーシャこそ、俺たちの兄弟かどうか怪しいじゃないか!両目の色の違いが、産みの親の不義を示している。俺を弟ではないという理由で家から追い出すなら、マーシャも共に追い出すべきだろ!」
不意にワレリー兄上が立ち上がり、リナトを思いっきり殴った。リナトはバランスを崩してソファーに倒れ込む。僕は呆然として二人の様子を見つめていた。
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リナトは観念したのか、口を開きクッキーにかぶり付いた。ついでに、僕の指までかぶりつく。そして、舌で指先を舐められた。
「ひぇ!なにするんだよ、リナト!」
「甘い」
「リナトは下品だな。マーシャ、指を出しなさい」
「え、ワレリー兄上も僕の指を舐めたいのですか?まあ、いいですけど」
僕が指を差し出すと、ワレリー兄上はしばらく硬直した。それから、無言でハンカチを取り出すと僕の指先を拭ってくれた。ふむ、勘違いだったか。
「ありがとうございます、兄上」
「どういたしまして」
ワレリー兄上がなんだか照れ臭そうに、紅茶を口にした。そんな兄上を見つめていると視線を感じて、リナトに向き直った。
「どうしたの?」
「勉強を教える約束はまだ有効?」
「あ、忘れてた・・」
「マーシャ兄さん」
「ごめんね~」
僕たちのやり取りに、ワレリー兄上が眉を寄せて口を開いた。
「リナトには専属の教師をつけている。勉強で躓いたなら、教師に質問しろ。初等部の時は、マーシャに勉強を教わる事を許していた。だが、お前はもう中等部だ。たとえ兄弟でも、孕み子のマーシャと二人きりになることは避けなさい」
ワレリー兄上の言葉に、リナトがきつい眼差しを向けた。言い合いが始まりそうで、僕はため息をついた。紅茶に口をつけたが、何時もより苦い味がした。
「ワレリー兄上は特別って訳?」
「何がだ?」
「ワレリー兄上とマーシャ兄さんは、よく二人で部屋に籠ってるだろ?なのに、俺がマーシャと二人きりになると説教するとか、絶対おかしいだろ」
「リナト、やめなさい」
「マーシャは黙ってろよ。俺は兄上に色々言いたいんだよ!」
弟に呼び捨てにされたよ。ワレリー兄上とリナトはどうも馬が会わないんだよな。
「ならば、こう言い変えようか?リナトとマーシャでは身分が違う。侯爵家の子息と庶民が席を同じくするなど、本来ならあり得ないことだ。身分を弁えて、大人しく後見人である俺の命令に従え」
「な!?」
リナトがソファーから立ち上がり、体を震わす。そして、言葉を絞り出した。
「俺も侯爵家の子息だ」
「お前が産みの親に唆されて、弁護士を訪ね回っていることは承知している。だが、父上はマグヌス = アイプと婚姻をする前に亡くなった。父上はマグヌスやお前に遺言書を遺す事なく亡くなった。たとえ、法廷で権利を主張しても意見は通りはしない、リナト = アイプ」
『リナト = アイプ』と呼ばれて、リナトは表情を固くした。そして、ワレリー兄上を睨み付けた。
「俺は正当な権利を主張しているだけだ」
「・・リナトの産みの親が育児放棄した為に、俺が後見人に名乗り出た。衣食住を与え、教育も十分に受けさせている。それでも、不満ならば産みの親の元に行くか、独立をしてマリツェフ家を出ていくことだ。俺はリナトをマリツェフ家の一員に加えるつもりは一切ない。俺の兄弟はマーシャだけだ。マーシャだけが・・俺の弟だ」
「マーシャこそ、俺たちの兄弟かどうか怪しいじゃないか!両目の色の違いが、産みの親の不義を示している。俺を弟ではないという理由で家から追い出すなら、マーシャも共に追い出すべきだろ!」
不意にワレリー兄上が立ち上がり、リナトを思いっきり殴った。リナトはバランスを崩してソファーに倒れ込む。僕は呆然として二人の様子を見つめていた。
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