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迅速なる行動で
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◆◆◆◆◆
少年たちを鎖から解放し、傷ついた者には手当てをした。誰かに手伝って貰いたいところだったが、サド伯爵は本当に一人が好きらしく、大きな屋敷にも関わらず使用人が一人もいなかった。
父上や母上がいたときは使用人が沢山いた。
だけど、父上と母上が馬車の事故で同時に亡くなると、親族が伯爵家に群がり財産を奪おうとした。オメガ性ながらも伯爵位を継いだサド伯爵は、うるさい親族達を追い払った。
しかし、サド伯爵はすっかり人間不信に陥り、使用人を全員解雇した。そして、かねてからの欲望を叶えるために元拷問官を雇ったようだ。人間不信から美少年を拉致監禁する思考に至った経緯は正直わからない。
サド伯爵は俺ではあるけど、趣味は全く違う。いや、あれを趣味で片付けるのは無理があるか。とにかく、性癖が異なる。危うく殺人犯になるところだった。
しかし、俺が殺した元拷問官の名前が全く思い出せない。
「俺が知ってる名前は・・父上と母上と、従兄弟のアナトリー = グルボコフスキー!そうだ、奴に手伝ってもらおう。元婚約者の窮地の上に、グルボコフスキー家の名誉が掛かっている。なんとか丸め込み味方に引き入れるしかない!」
俺は従兄弟のアナトリーに会うために、馬を走らせる事にした。なぜなら、使用人がいないから使いを出せない。なかなかに不便だ。
「では、少年たちよ。すぐに帰って来るので、この部屋から出ないようにね。死体が腐敗し始める前には、屋敷に帰って来るからね。準備が整い次第解放するから、安心しなさい。じゃ、留守番をよろしく」
俺は少年たちのすすり泣きと悲鳴を聞きながら、扉を閉めて鍵を掛けた。とにかく、急がねばならない。少年たちに死人が出ては言い訳が通用しなくなる。
「休暇の時期で幸いだった。王都の邸に住んでいる奴も、今は領地に戻っているはず!さあ、馬に乗って駆けよう」
屋敷からでて馬小屋を覗いたら、馬が死んでいた。使用人を全て辞めさせた為に、馬を世話する人がいなかったのだ。屋敷全体が蔦や木々に覆われ薄暗い。庭も草だらけ。
「使用人がいないとやべーな。完全に廃墟じゃないか。しかし、これは詰んだな。隣の領地まで、歩いていけってか?絶対、子供に死人が出るだろ。なんか、痩せ細っていたしなぁ。どうするか・・」
屋敷の門までたどり着いたが、すっかり体力が無くなっていた。自分の手足を見てぎょっとする。まるで、骨と皮だ。やべえ、子供が死ぬ前に俺が死ぬかも。
「神様~、ひどいよ。こんな人生は望んでいないってば。俺はキラキラの素敵な欲望を満喫したかっただけなんだよぉ」
ついに、幻覚が見えてしまった。門扉の前に馬車が止まり、美丈夫な男が降りる。
「ほら、ああいう美丈夫と恋愛したかっただけなんだ。ショタはまじで対象外だから勘弁してよ」
「サド?」
「ん?」
「いや、お前!なんて姿だよ?ガリガリに痩せてるじゃないか!」
「アナトリー = グルボコフスキー!」
奇跡か!俺はアナトリーに抱きついていた。いや、これはマジに奇跡!
◆◆◆◆◆
少年たちを鎖から解放し、傷ついた者には手当てをした。誰かに手伝って貰いたいところだったが、サド伯爵は本当に一人が好きらしく、大きな屋敷にも関わらず使用人が一人もいなかった。
父上や母上がいたときは使用人が沢山いた。
だけど、父上と母上が馬車の事故で同時に亡くなると、親族が伯爵家に群がり財産を奪おうとした。オメガ性ながらも伯爵位を継いだサド伯爵は、うるさい親族達を追い払った。
しかし、サド伯爵はすっかり人間不信に陥り、使用人を全員解雇した。そして、かねてからの欲望を叶えるために元拷問官を雇ったようだ。人間不信から美少年を拉致監禁する思考に至った経緯は正直わからない。
サド伯爵は俺ではあるけど、趣味は全く違う。いや、あれを趣味で片付けるのは無理があるか。とにかく、性癖が異なる。危うく殺人犯になるところだった。
しかし、俺が殺した元拷問官の名前が全く思い出せない。
「俺が知ってる名前は・・父上と母上と、従兄弟のアナトリー = グルボコフスキー!そうだ、奴に手伝ってもらおう。元婚約者の窮地の上に、グルボコフスキー家の名誉が掛かっている。なんとか丸め込み味方に引き入れるしかない!」
俺は従兄弟のアナトリーに会うために、馬を走らせる事にした。なぜなら、使用人がいないから使いを出せない。なかなかに不便だ。
「では、少年たちよ。すぐに帰って来るので、この部屋から出ないようにね。死体が腐敗し始める前には、屋敷に帰って来るからね。準備が整い次第解放するから、安心しなさい。じゃ、留守番をよろしく」
俺は少年たちのすすり泣きと悲鳴を聞きながら、扉を閉めて鍵を掛けた。とにかく、急がねばならない。少年たちに死人が出ては言い訳が通用しなくなる。
「休暇の時期で幸いだった。王都の邸に住んでいる奴も、今は領地に戻っているはず!さあ、馬に乗って駆けよう」
屋敷からでて馬小屋を覗いたら、馬が死んでいた。使用人を全て辞めさせた為に、馬を世話する人がいなかったのだ。屋敷全体が蔦や木々に覆われ薄暗い。庭も草だらけ。
「使用人がいないとやべーな。完全に廃墟じゃないか。しかし、これは詰んだな。隣の領地まで、歩いていけってか?絶対、子供に死人が出るだろ。なんか、痩せ細っていたしなぁ。どうするか・・」
屋敷の門までたどり着いたが、すっかり体力が無くなっていた。自分の手足を見てぎょっとする。まるで、骨と皮だ。やべえ、子供が死ぬ前に俺が死ぬかも。
「神様~、ひどいよ。こんな人生は望んでいないってば。俺はキラキラの素敵な欲望を満喫したかっただけなんだよぉ」
ついに、幻覚が見えてしまった。門扉の前に馬車が止まり、美丈夫な男が降りる。
「ほら、ああいう美丈夫と恋愛したかっただけなんだ。ショタはまじで対象外だから勘弁してよ」
「サド?」
「ん?」
「いや、お前!なんて姿だよ?ガリガリに痩せてるじゃないか!」
「アナトリー = グルボコフスキー!」
奇跡か!俺はアナトリーに抱きついていた。いや、これはマジに奇跡!
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