性奴隷は泣かない〜現代ファンタジーBL〜

月歌(ツキウタ)

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第67話 『マトリ』と速水

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◆◆◆◆◆◆




青山清一は、速水誠に出逢った。


清一の妾が経営する『かさぶらんか』の地下では、大人が子供を犯していた。清一の妾が勧めた『初物』は小学生だった。『速水誠』だと、客に名乗ったその子はガタガタと体を震わせていた。腕にムカデの刺青を入れた男は、縛る必要もない子供の両腕をガムテープで縛り上げて楽しんでいた。それだけで、速水は泣き出し悲鳴を上げて部屋を逃げ回った。だが、それは男たちを刺激するだけだった。


俺は必死になっていた。大人が子供を犯すなどあってはならない事だと頭では理解していた。それでも、清一が向ける見えない拳銃が怖かった。『マトリ』だとばれる事が怖かった。俺は、必死になって演じた。子供を犯して楽しむ人間を演じた。恐れで全く勃起しない子供のペニスに、ガムテープを巻いて無理矢理立たせて笑ってみせた。


泣き喚く子供を、俺は初めて犯した。怖かった。血が滲むその体内にペニスを突き込んで、腰を無理矢理動かした。自分がどうして勃起できたのかも良く分からない。だが、必死に子供を犯した。

腕にムカデの刺青を入れた男は、泣き叫ぶ子供に興奮していた。そのグロテスクなごつごつとした玉入りのペニスを、子供のアナルに激しく突き込んでいた。男は興奮して奇声を上げていた。子供の髪を掴み上げ、ペニスを体内の奥深くに突き込んでいった。子供が死ぬと俺は思った。子供が目の前で、犯され死んでいく。その恐怖は耐え難いものだった。

男に犯され朦朧となった少年は泣きながら手を伸ばした。その先に、青山清一がいた。


既に一度子供を犯した清一は、速水にすっかり興味を失っていた。だが、不意に子供から手を伸ばされた清一は、まるでそれに惹きつけられるように、速水の手を取った。清一は、ムカデの刺青の男に子供を犯す事をやめさせると、代わりに自分が子供を犯しはじめた。そして、清一は悲鳴を上げ続ける子供の中に精を放った。清一は、精液にまみれた子供を抱いたまま『囲う』と宣言して、俺たちを部屋から追い出した。


速水誠は、青山清一に出逢った。




◇◇◇◇


青山清一の懐に入り込む事。
上司からの命令は変わらない。


清一に囲われた子供は悲惨だった。清一は異常なほどの執着を子供に見せた。組員に笑われようとも、お構いなしに、子供を愛した。子供が壊れそうになると、清一は妾の所に遊びに行き時を過ごした。そして、子供が少し心を回復させると、また子供を犯した。清一は子供の成長を願いながら、同時に成長することを嫌っている様だった。清一は速水を頑丈な囲いに入れて、その中だけで生きる事を強要した。


清一は、速水を奪う者に敏感だった。速水の父親は、訪問したその日に殺された。囲われた子供に同情的だった、清一の正妻は、実家に帰されて二度と青山家に来ることを許さなかった。囲われた子供に興味を示した自身の子供さえも疎み、清二が守らなければ殺されていたかもしれない。

そして、俺もまた速水を奪う者として疎まれた。俺は、囲われた子供を救いたかった。己が犯した子供が、清一に犯される。それは、自身が二度も三度も、子供を犯す罪を犯している様に思えてならなかった。俺は『マトリ』とはいえ、どうせ下っ端だ。ここで、子供を連れ出して現場から外れても許されると思った。そうしたかった。


だが、清一はそうはさせてはくれなかった。あいつは、俺が『マトリ』だと分かっていながら犬として飼っていた。恐らくは只の気紛れだったのだろう。清一と出会ったその時から、俺は身バレしていたのかもしれない。その清一が、俺の事を初めて『マトリ』と呼んだ。

「麻薬の取引現場の日時を教えてやる。情報をくれてやるから、速水の事は忘れろ・・『マトリ』」


◇◇◇◇


俺は青山組の上部組織の麻薬ルートを一つ潰した。

速水を犠牲にして、俺は清一から麻薬取引の情報を受け取った。それを上司に告げると、頃合いを見計らって清一の元から姿を消した。上司の指示のもと、しばらくは安全な場所で潜り続けた。その間ずっと俺は考えていた。青山清一は、何故『マトリ』の俺を殺さなかったのか。

その結論はすぐに出た。あいつは、自分の地位をぎりぎりのところまで落としたかったのだ。清一は組関係の仕事をこなしていないと思わせながら、清二から上部組織と麻薬ルートのやり取りを任されていた。だからこそ、上司は俺に青山清一の懐に入り続ける事を命じていた。俺は『マトリ』として最も重要な場所を任されていた。

上司は見抜いていたんだろう。俺が『マトリ』でありながら、同時に人の犬になれる事を。清一に命じられるままに、俺は犯罪を犯した。だが、全ては麻薬ルート撲滅の正義の元、俺が犯した犯罪は闇に葬られた。そして、俺はまた上司の命令の元、あらゆる場所に潜った。あらゆる名前、あらゆる経歴を使って、人の懐に入り込み続けた。


◇◇◇◇


丹野彰の元に潜り込んでいる時に、青山清一が死んだことを知った。

青山清一が死んだ。あいつが死んだ。そして、あの時の囲われた子供がまだ生きていた。いや、生死については常に調べていた。だが、清一の囲いの中で速水がまともに成長したとは到底思えなかった。だから、この街に確認にきた。

速水は、ちゃんと生きていた。花屋『かさぶらんか』で仲間と共に花束を作って店を経営してた。


◇◇◇◇◇


だが、未だに速水誠は青山組の囲いの中にいる。この街の中から出る事も許されず、青山清二の『内縁の妻』などにされて生きている。いずれは、青山竜一か、青山竜二があいつを囲う。

そんな事は、分かっているはずなのに、速水は外に出ようとはしない。出られないからだ。

あいつは、自身が『性奴隷』であることを否定した。だが、未だに男に囲われ生きる事を強要されている。

速水は、未だに子供のままだった。清一に囲われ、屋敷から出ることさえ許されなかった、あの頃のまま。青山清一の敷いた囲いは未だに、速水誠を取り囲んであいつを自由にしない。


◇◇◇◇


速水を自由にするには、それ相応の犠牲が必要だ。俺一人の犠牲だけでは、終わらないだろう。恐らく、今も潜り込んでいる仲間の『マトリ』も犠牲になる。

それでも、速水にチケットを渡す。自由になるチケットを速水に必ず受け取らせる。

俺は、もう狂っているのだろう。速水の為なら、他の奴らの犠牲なんてどうでもよいと思っているのだから。




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