55 / 74
第55話 清二お父さんと呼ばれた
しおりを挟む◆◆◆◆◆◆
ん?
おとうさん??え、清二お父さんって、今呼ばれたのか?
ひょっとして、俺は快感のあまり、腰を振りまくってしまったのか?う、速水が泣きながらベッドで腰を捻ってる。ペニスを体内から抜こうとしているのか?
しかし、この動きは俺の情欲を刺激するだけだと、何故気づかない。速水を落ち着かせようと、覆いかぶさる。すると、余計に怖がって逃げようとする。ショックを受けつつ、俺は夢中になって、速水の首筋に何度もキスをした。何度も、何度も。
速水は過呼吸を起こしかけている。息遣いが荒い。それが、少しずつ落ち着いていく。
「はぁはぁ、はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・」
そろそろ、声を掛けても大丈夫だろうか?
「・・・速水、悪かった、大丈夫か?」
「怖い・やだ・・・許して・・」
「速水、すまなかった・・・怖くして悪かった。速水、落ち着け。一度、ペニス抜くぞ?」
「駄目、入れたままにして!大丈夫、もう怖くない!」
「俺に嘘をつくな、速水」
「違う、うそじゃない・・抜かないで、清二さん、お願い」
速水に懇願されて、俺は頷くしかなかった。
「いいんだな?・・また動くぞ」
「うん、うん、動いて・・」
俺はゆっくりと腰を回しながら速水の様子を伺う。その緩い動きに、何かが触れたのか、一瞬で速水の快感が全身を走った事がわかった。もう一度腰を回してペニスがそこを突くのを狙った。
速水の体が震えて止まらない。それが、快感からなのか、恐怖からなのか、俺には分からない。それでも、何かが高まり熱を帯びるのを感じた。
「あぁあ、それ、好き、その動き、すき。ぁあ、また、触れた・・ぁあ、やぁんん!!」
「速水は、ラウンドが好きなのか?わかった、ゆっくり回す。すこし、中が広がったな・・うっ、また締まってきたまじか!くそ、いきたい・・」
「せ、清二さん、ひぁあ、ま、また出るっーーーー、んぁあ!」
速水は二度目の射精をしたようだ。ペニスからとろりと精液がシーツに流れ落ちる。速水は恥ずかしそうに、顔をシーツに埋めた。俺も、そろそろ限界だ。抽挿を激しくするまでもなく、俺のペニスは限界まで高まっていた。気持ち良すぎだ。そう思って気を抜いた時、不意にきゅっと、腸壁が締まり俺のペニスを締め付けた。
「うお、まて、締まる・はぁ、気持ち良すぎる・・ううっ・我慢できん、出す!!」
「ひやぁん!!」
速水の体内に精液が飛び散った。快感が全身を溶かしていく気分で、何時までも挿入したままでいたかった。だが、速水の様子が心配で、ゆっくりとペニスを抜き出す。
「んっ」
うつ伏せの速水の唇から吐息が漏れ思わず胸が熱くなった。速水をゆっくりと仰向けにして、顔を覗き込んで話しかけた。速水は、セックスの余韻に酔いながらも、何かを思案するように、視線を彷徨わせている。やはり、様子がおかしい。
「速水、大丈夫か?」
「・・・セックスドラック、ほしい」
「!!」
俺は驚いて言葉を発することができなかった。速水は、興奮ぎみに話し出す。
「清二さんは、やっぱり男だった。がつがつきた。怖かった。痛かった。でも、清二さんと思いっきりセックスを楽しみたいと思ってる。セックスドラックを飲んだ時は、『恐怖』は感じなかったよ?ドラックを飲めば、清一さんが僕の中からいなくなるんだって分かった。『恐怖』は清一さんそのものだから、この感情は要らないもので、捨てていいんだ。僕は清二さんとセックスを楽しみたいんだ。もっと、もっと、清二さんを喜ばせてあげられるよ?ねえ、僕は本当はセックスがすごく上手なんだよ!クスリを飲んだ時の僕は、もっとすごくて、清二さんとがつがつ深く愛しあえるよ。ねえ、清二さん・・セックスドラック、盛って?」
俺は衝撃を受けていた。速水とセックスをして、まさかこんな言葉が飛び出すとは思いもしなかった。だが、速水は一度セックスドラックを経験している。その快感に縋りたいと思うのも、無理はないのかもしれない。セックスに恐怖を持つ者なら尚更に。だが、俺の答えは決まっていた。
「駄目だ!!」
それは余りにも大きな声で、速水を怯えさせる結果となったが仕方ない。だが、速水は涙ぐみ声を荒げて暴れ出したので、俺は抱きしめて受け止めるしかなかった。ベッドに沈んだ速水は、饒舌だった。
「速水・・」
「どうして駄目なの?セックスドラックを飲んだ時は、『恐怖』もなく、何も考えずにセックスを楽しめたよ。清二さんも、セックスを怖がって泣くような相手は嫌でしょ?僕は、清二さんと思いっきりセックスを楽しみたい。急に『恐怖』に襲われるのはいや。『恐怖』はセックスドラックで抑えられるって竜二さんが教えてくれた。だから、クスリ頂戴、清二さん?」
「セックスドラックを必要とするほどセックスが怖いなら、セックスなんてしなくていい、速水」
「でも、清二さんに抱かれたいのは本当だよ?清二さんの裸みただけで、勃起しちゃったもの・・」
余りの素直な告白に俺の方が赤面しそうになった。
それにしても、今更ながら竜二が憎くなってきた。薬物が余りに身近な環境に育って、危険性の認知が甘くなっていた。速水に対して、薬物の対策が必要だ。このままでは、セックスドラックをちらつかせて近づく男たちに、あっさり拉致されそうだ。
俺の大切な『内縁の妻』を、もう喪うのはごめんだ。俺は速水を強く抱きしめた。裸で抱き合っているが、速水が震えている様子はない。
「今の俺は怖くないのか?」
「ん?今の清二さんは怖くないよ。優しいもの。『清二お父さん』って感じ?」
「は、速水、その言い方はよせ。心が折れる」
「え!?褒め言葉なのに・・」
「そ、そうなのか?あー、じゃあ、こうするか?セックス中に恐怖に襲われたり、今回のように俺ががつがつ暴走したら、俺の事を『清二お父さん』と呼んでいいぞ。あー、怖い時だけだぞ。それ以外は駄目だ。『清二お父さん』と呼ばれたら、俺はセックスを中断する。意地でもセックスを止める。どうだ、速水?」
「清二さんがいいならそうする。あの、こんなに面倒な僕を本当に『内縁の妻』にするの?その、僕はなりたいけど、本当にいいの?後悔しない?」
俺は思わず、速水に笑いかけていた。速水から、俺の『内縁の妻』になりたいと言ってもらえるとは思いもしなかった。じんわりと、嬉しさが胸に広がっていく。また俺は、『妻』を持てるのか。
「速水。お前は『恐怖』は清一そのものの感情だから要らないと言っていたが、それは違う。『恐怖』もお前の大切な感情だ。いいか、清一は死んだんだ。お前はもう『性奴隷』じゃない。そして、俺の『愛人』でもなくなった。俺の大切な『内縁の妻』になったんだ。籍は無いがお前は俺の大切な妻だ。もう、戻れないほどにお前に情を移してしまった。その事に俺は『恐怖』を覚えている。『内縁の妻』を俺は一度亡くした。愛する人を亡くす事は『恐怖』でしかない。だから、俺より先に死ぬなよ、速水」
「清二さん、うん・・わかった」
そうだ、リビングにある彼女の写真を、アルバムに戻さなければならないな。死んだ女の事は決して忘れない。俺の子を唯一妊娠したあいつには感謝している。その子には生きて会う事はできなかったが。だが、彼女も、死んだ子も想い出の中で生きている。
「清二さん?」
俺が物思いに耽っていると、悪戯をするように速水が俺の唇に軽くキスをして優しく微笑んだ。俺は速水を胸に抱きしめ、その柔らかい髪を撫でた。速水がくすぐったそうに笑う。それを可愛いと思う俺は相当ヤバい。
『内縁の妻』が男か・・・まあ、速水なら悪くない。
◆◆◆◆◆◆
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる