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44話 伍代の怒り
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「あら、久しぶりに指名が入ったと思ったら、伍代さんだったのね。まあ、こんな年増の女を指名するのは、あなたぐらいよね。そうだ、伍代さんの噂は聞いているわよ。『性奴隷』時代の坊やが大人になって、昔の買春相手を喰らいまくってるって?」
「だから?・・問題でもある?」
「伍代さん、これって復讐?」
「まさか、酷い誤解だよ」
『性奴隷』時代に俺をよく買春に来た女たち。その女達の凋落した姿を見ると、妙に興奮を煽られる。熟女好きも相まって、よく昔の顧客を買春している。それが噂になっているらしい。だが、それがどうした。とにかく、今は女を抱きたい。
「休みをもらって一番に貴女に会いに来たのに、なに・・この塩対応。まあ、いいけどさあー。で、三日間の休暇を有意義に使いたいから、あんま時間ないんだよね。今すぐアンタのそのだるんだるんに伸びきった乳房に、むしゃっぶりつきたいんだけどいいかな?」
「好きにしなさいよ」
安物のベッドはギシギシと音が鳴って耳障りだったが、裸の女を前にすればそんな事はどうでもいい。俺は艶を失いつつも、未だ僅かに色香を漂わせる女の乳房を口に含み貪った。膣口に手を這わすとそこは既に濡れていて、俺は思わず意地悪な笑みを浮かべていた。俺の事を『性奴隷』と蔑むわりには、随分興奮して濡らしてやがる。
「ああっん・・」
甘い声が女の口から洩れる。俺のペニスは準備万端だ。ズボンの前を寛がせたときに、スマホに着信が入った。
「いやいや、なんでこのタイミング!?」
スマホは、上着の隠しに入れていた。女の前ではその事もすっかり忘れて、上着は床に脱ぎ捨てた。くそ、スマホが落下の衝撃で壊れていたら、言い訳も出来たものを。うーん。俺は組長から直々に三日間の休暇を貰った。故に、相手が、組長でも俺の休暇を取り消すことはできないはずだ。俺は、一応スマホの着信画面を見ることにした。上着を引き寄せ隠しからスマホを取り出す。組長だった。くそが!!くそが!!くそーーーー!!
「組長、ご苦労様です。どのようなご用件でしょうか?」
「さっさと電話に出ろ、伍代。今すぐ、マンションの竜二の部屋に向かえ。本人から連絡があった。竜二の奴、『かさぶらんか』で所轄の署長の胸倉を掴んで揉め事を起こした。竜二はパクられなかったが、警察に貸しが出来た。しばらく、竜二にはこの街を出てもらう」
『かさぶらんか』は厄災の塊か?それにしても、竜二が署長の胸倉を掴むとはどういう状況なんだ??
「状況は・・理解しました。しかし、俺が竜二さんの部屋に行く必要があるとは思えませんが?」
「竜二が『かさぶらんか』から速水を拉致した。今さっき、竜二から俺に連絡があった。伍代に速水を迎えに来させろと言って譲らん。お前以外には、速水を渡さんと竜二がごねてやがる」
「しかし、速水さんには専属護衛がいるでしょ?俺は三日間の休暇の後に、速水さんの護衛に戻る予定のはずです」
「速水の危機に、その護衛はのんびりパチンコやってやがった。相当玉が好きらしいから、男の玉を舐める仕事に就かせる予定だ。それより、早く竜二の部屋へ向かえ!!」
「そう焦ることもないでしょ?竜二さんは、速水さんに惚れてますけど無体はしませんよ。俺は今から大事な下半身の用事があって。それが終わってからでもいいでしょ?」
一瞬、組長が押し黙った。しまった、口が滑った。下半身の用事とか言っちまった。あー、言い訳。言い訳。
「竜二が速水をレイプした」
「!?」
「聞こえたか・・伍代?」
「すぐ、竜二さんの部屋に向かいます、組長」
「俺は最上階の部屋に居る。速水を早く連れてこい、伍代」
組長からの電話が途切れると、俺は急いで身を整えた。女の非難の声を無視して、風俗店を後にすると竜二の部屋に向かった。正直、状況が読めない。竜二が速水をレイプした?何故そんな事になった?竜二は速水に惚れているが、無理矢理抱くような奴じゃないはずだ。そんな事をしても、速水に恐怖を与えるだけだ。意味がわからん。
◇◇◇◇
もやもやとした気持ちのまま、見慣れたマンションのエントランスに飛び込む。重要人物が入居する部屋は、すべて把握している。竜二の部屋は組長の新しい愛人が入居した階と同じだ。イライラしつつ、高層用のエレベーターに乗り込んで俺は、ある問題に直面していた。
まだ、ペニスが勃起したままなのだがどうしよう。
この姿で竜二と会ったとして、勃起した俺に速水を預けるだろうか。いや、無理だろう。と、いう事で公共の場ではあるが早急に射精しよう。俺はペニスを取り出すとエレベーターの中でペニスを擦り上げて早々に射精した。何たる早業。エレベーター内がイカ臭くなったが、まあいいよな。濡れたペニスをハンカチで拭って、そのハンカチは、エレベーター内に捨てた。
「ふぅ・・大事の前の小事」
その一言で片づけたところで、タイミングよく目的の階に到着した。全てが完璧だ。後は、速水を回収して最上階に向かえばいい。それにしても、レイプとはいえ竜二と関係を持った速水の処遇はどうなるのだろうか?まさか・・俺まで巻き添えは無いよな?
速水と自分の今後を心配しつつ、竜二の部屋の前に辿り着くと、扉の前には竜一とその護衛が数人立っていた。いや、なんで集まってるの。特に、竜一。あんたがいると竜二を刺激する事は分かっているはずなのに。正直邪魔だ。
「竜一さん、組長より連絡を貰いました。今から竜二さんと交渉をしますので、竜一さんは部屋に戻ってもらえますか?竜二さんを刺激する可能性がありますので」
「伍代、お前に命令される謂われはない。叔父と会っている時に、竜二から連絡が来た。速水が竜二にレイプされたと聞いた。速水を傷つけた人間が俺の弟なら・・兄の俺が制裁を加えるのは当然だろ?」
「制裁をするならご自由に。ですが、それは後にしてください。今は速水を救い出すことが先決でしょ?竜二さんは速水を迎える役に、俺を指名してきた。竜一さん、速水を救うのは俺の仕事です。仕事の邪魔は困ります」
竜一が怒りの籠った眼差しで俺を見てくる。だが、竜一は俺の言葉に一定の理を認めたのか、感情を一気に抑え込んだ。その様は、鮮やかで思わず見ほれるほどだった。
「伍代、お前の意見は理に適っている。俺は最上階で叔父と共に待つ。だが、護衛は残しておく。必要があれば、使ってくれ。伍代、速水を救ってやってくれ」
「承知しました。竜一さん・・感謝します」
既に竜一は俺の姿を見ていなかったが、俺は一礼した。そしてすぐに上体を起こすと、竜二の部屋の扉に向かいインターホンのボタンを押した。反応はすぐにあった。インターホンで俺の顔を確認したのか、そのまま無言で玄関の電子ロックが解除された。俺は竜一が残した護衛に、廊下で待機するように命じて部屋にするりと入り込んだ。部屋に入った途端に、速水の声が聞こえて俺は肩を強張らせた。
「嫌だよ、竜二さん・・離さないで。僕は帰りたくない。竜二さんの傍を離れるのは怖いよ。ヤダよ」
「速水・・落ち着け。大丈夫だから」
「ねえ、この街から連れだしてよ?また、さっきみたいなセックスして僕を抱きしめて。安心させて」
「ああ、何時か連れ出してやる。でも、今は無理だ・・すまない、速水、俺の事を愛してくれたか?」
「大好きだよ。だって、あんなに気持ちいいセックス初めてだったよ。抱きしめられても、怖くなかったよ?」
ん??なんだ、この会話。速水の甘ったれた『性奴隷』の声。竜二の甘ったるい言葉。反吐がでる。つまりは、和姦だったって事かよ。心配して、駆け付けてこれかよ。酷くねーか。レイプってのは、速水を守る言い訳か。あーだりー。ムカつく。俺は怒りのまま声が聞こえてきたリビングに向かった。俺は靴を履いたまま上がり込んだ。床なんて俺の汚い靴で汚してやる。
「随分と仲のよろしいことで。セックスを随分楽しまれたようですね。速水さんが怪我を負っている様子もなく安心しました。レイプですか。ふーん。とっても、和やかなレイプだったようですね?服も破れた様子もないですし。とにかく、組長の命令ですので速水さんは僕が連れていきますよ」
「伍代、ちょっと待ってくれ。速水はまだ・・」
俺は竜二の制止を無視して、竜二と睦ましく体を寄せている速水の腕を掴んだ。それは、一瞬の出来事だった。甘い顔で笑っていた速水が、恐怖の表情を浮かべて俺の腕を振り切ると、竜二にしがみ付きガタガタと震え出した。
「竜二さん・・やだ。この人追い出して。二人きりがいい。なんかね・・さっきから、だんだん、怖くなってきたの。男の人が怖くなってきた。ねえ、もう一回セックスして。セックスして抱きしめてよ、竜二さん。さっきみたいに幸せいっぱいにして。いっぱい精液入れてくれたら、もっともっと興奮して怖いの無くなるから・・竜二さん、ねえ、僕の事、好きでしょ?」
「速水・・」
冷たい怒りが俺の全身を覆った。俺は速水を抱きしめ髪を撫でる男に、静かに聞いていた。
「セックスドラックを使ったのか?」
「MDMAとラッシュ」
「速水の同意は?」
「睡眠薬にMDMA混ぜた物を飲むように強要した。ラッシュは途中で嗅がせたが、本人は気が付きもしないで俺に縋りついて笑い声あげてた。速水はこっち系の薬は無縁らしい。伍代なら、薬物に詳しいだろうからお前を呼んだ」
俺は竜二に近づくと、強引に速水の体に触れた。それだけで、ガタガタと体を震えさせる速水に、胸が引き裂かれる思いだった。昔、仲の良かった『性奴隷』が男にMDMAを与えられて尻を掘られた。本人は尻を掘られても痛みが少なくて結構気持ち良かったと笑っていた。だけど、翌日そいつは自殺した。
「速水を俺に寄越せ」
「まだ無理だ」
「薬が抜ける直前が大事だってことぐらい、風俗店管理してるお前なら分かってるだろ!!」
俺は強引に速水を竜二から奪い取った。速水は俺に抱き寄せられて硬直していた。その目から涙が溢れだすと同時に、叫び出して俺の体を両手で叩きだした。俺はそれを無視して、竜二に言葉を吐き出した。
「竜二。俺はあんたを見誤った。あんたの本質は父親の清一と同じだ。お前は自立し始めた速水を『性奴隷』に引き戻して手元に置きたいだけだろ!そんなに『性奴隷』が欲しいなら、別の奴を探せ。あんたに速水は勿体ない!!」
「俺と親父を一緒にするな。速水は未だに死んだ親父に囲われてる。俺がその囲いを破って、速水を手に入れる。その為に必要な手はなんだって使う。お前が邪魔をするなら・・伍代、お前も始末する」
「ほざいってろ、竜二!!」
泣き叫ぶ速水を落とさない様に抱きしめて玄関扉まで向かうと、玄関扉を思いっきり蹴った。鍵は掛かっていない。俺が扉を蹴ったことに気が付いた竜一の護衛が扉を開けた。俺は、無言のまま組長のいる最上階に向かった。
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