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26話 変わり者の伍代
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組長の清二はゆったりと着物を着こなし、寝室からリビングに現れた。シャワーを浴びたのか、髪がしっとりと濡れている。妙に男の色香を放つ組長に、俺は皮肉を言いたくなった。
「随分と『性奴隷』の速水は、組長に懐いたようですね?甘い声で鳴いているのがリビングまで聞こえてきました」
「伍代。あいつは『性奴隷』ではなく、俺の『愛人』だ。お前は、速水の事が気に入らない様だが・・いい加減にその態度は改める事だな」
「申し訳ございません、組長。では、俺は『愛人』のお世話をしてきますね」
俺が寝室に向かおうとすると、組長に制止された。
「速水は、寝室の浴室で湯に浸かっている。治療も自分ですると言っていた。治療薬と着物を用意するだけでいい」
「承知しました」
俺は組長の命に従い、リビングを後にして速水がいる寝室に向かった。
『性奴隷』の世話をしなくて済むなら、俺にとってもありがたい。前回、組長と初めてセックスをした速水は、性のプロにもかかわらず、性交後に気絶するという失態を犯した。俺はその間抜けな『性奴隷』の身を清めて、着物を着付けるように、組長から命じられた。前回は、組長自身が腕から流血している状態だった。俺としては、組長の治療を優先したかった。
だが、組長からは『性奴隷』の治療を優先するように指示された。俺はかなりの手際で速水を身綺麗にして、奴に着物を着せたが、その頃には組長は自身で腕の治療を終えていた。この経験から、意識のない人間を扱うことは、死体を扱うよりも重労働だと実感した。
まあ、今回の速水は『性奴隷』の役割を果たし組長を満足させた。その上、意識を保っていたなら上出来だ。速水の事は好きにはなれないが、ただの仕事と割り切れば問題ない。速水がいる寝室の扉をノックすると、すぐに返事があった。既に速水は、浴室から出ていたようだ。
「速水さん、伍代です。着物と治療薬をお持ちしました。入室してもよろしいですか」
「伍代さん!!」
何のためらいもなく寝室の扉が開いた。白いバスローブを着た速水は、湯船から出てあまり時間が経っていないようで、素肌が薄っすらと薄紅に染まっていた。それにしても、ここが組長から与えられた住居だとしても、何の警戒もなく扉を開けすぎだ。俺がもし殺し屋なら確実に殺せた。その殺し屋がもし男好きの変質者なら、速水は一日中弄ばれた挙句に、裸で浴室の湯船に突っ込まれ溺死させられていただろう。
「・・・伍代さん、今、変な想像をしていませんでしたか?」
「速水さんの護衛として忠告しますが、部屋の扉を開けるときはもう少し警戒してください」
「でも、伍代さんの声だと確認できたよ?貴方が護衛でなく殺し屋なら僕は死んでいたけど、護衛でしょ?」
「そうですね、速水さん。それより、体が冷えると風邪をひきますよ?着物と治療薬です。速水さんご自身で治療されるとのことですが、手伝いはいりませんか?」
「あー、ちょっと・・うーん」
「?」
速水は急に俺の腕を掴むと寝室に連れ込み扉を閉めた。そして、カギを中から占める。まさか、俺を誘惑する訳ではないだろうが、この行動は組長の『性奴隷』にせよ『愛人』にせよ失格だ。速水は、やや頬を染めながらもじもじとしている。何とも・・気持ち悪い。
「何ですか、速水さん?」
「そのさあ、前回・・清二さんとのセックスの後に、身を整えてくれたのって、伍代さん?」
「ええ、そうです。何か問題でもありましたか?」
「前回は、アナルが切れなかったんだけど、今回は切れてしまって・・それも、ちょっと傷が深いみたいで痛いんだよね。痛み止めの注射って打てる?」
「え、アナルが切れたのですか?年増の『性奴隷』なのに??」
あ、しまった・・口が滑った。速水が呆れたように、俺を見つめながら口を開いた。
「伍代さんって、結構常識なしだよね。普通、本人に向かって年増の『性奴隷』とかって言う?まあ、当たってるから反論できないけどさあ。でも、僕のような『性奴隷』あがりならちょっとおかしい発言しても、『やっぱりな』で済んじゃう事も、上を目指す人は注意しないと。口は災いの元だよ?」
「申し訳ございません。俺も、速水さんと同じく『性奴隷』上がりなので、常識に欠ける処があるようで。常々、組長にもお叱りを受けております」
「え、そうなの!?伍代さん、元は『性奴隷』だったの?」
「ええ、速水さんとは違って、俺の場合は女の相手ばかりをする『性奴隷』でしたけれどね」
速水は驚いた顔をして俺を見ていたが、痛みがあるのか少し顔を歪めた。俺は不思議に思いながら、速水に問いかけていた。
「前回は性交の後に気絶はされていましたが、アナルは切れていませんでしたが?」
「あー、前回は清二さんの血液が潤滑液になったのと、体位が楽だったから大丈夫だったのだと思う。今回は駄目だった。潤滑液なしで、苦手な体位にチャレンジしたら・・切れた」
「そうですか・・速水さんは『性奴隷』の時期も長く、精液だけで潤滑剤になると思っていました。次回に備えて、潤滑液を購入して寝室に置いておきますね?」
「ありがとう。あー、伍代さんが『性奴隷』あがりと聞いて、下の事を話しやすくなった。でも、凄いね!!今は護衛を任されて、組長からの信頼もあつくて、凄い出世だよ!!羨ましい。僕の護衛じゃ不満だろうけど、一時の事だと思うので、よろしくね。あ、あと・・伍代さんを疑ってごめんね。『かさぶらんか』の2号室に突入しなかったのは、清二さんの指示だったんだよね?」
速水は随分饒舌だが、お風呂上りにしては顔色が悪く思えてきた。俺は、速水を促してソファーにうつ伏せに寝てもらった。できれば、ベッドで治療したいがシーツが精液まみれで使えない。随分と性交を楽しんだようだ。組長が男を抱けるのか疑問だったが、案外楽しめているようだ。しかし、シーツには血液の痕も確認できた。確かに、出血したようだ。
「それでは、失礼しますね」
「んっ」
速水のバスローブをめくり治療しようとして、俺は困惑した。俺の『性奴隷』時代の客の多くは女だった。日々、相手のバギナを舐めて挿入するのが俺の仕事だった。でも、時々は年増の『性奴隷』が俺の客になることがあった。俺は、何人かの年増のアナルを見てきたが、これ程引き締まっているアナルは初めて見た。ほとんど『初物』と変わらない状態だ。なんにしても、このアナルにペニスを潤滑液なしで突っ込めば・・それは切れるだろ。
「うーん??」
「伍代さん、どんな感じ?」
「ああ・・そうですね。これは、医師の治療をお勧めします。切れ方が酷いですよ。痛みも酷いでしょ?」
「ん、そっか。清一さんの囲われ者だった時は、専属の医者がいたからなぁ。やっぱり、医者の治療が必要か」
速水は早々にバスローブで尻を隠すと、ため息をついた。
「仕方ない。これからも、清二さんと関係を持つなら、正直に話した方がいいよね。ちゃんと治療しないと、『かさぶらんか』のオーナーとしても働けないし。バスローブの上から着物を着るから、貸して」
「・・・わかりました」
速水はバスローブの上に着物を着込むと、寝室を後にした。だが、その歩き方は痛々しく、しかもノロノロ歩きの為、イライラしてきた。俺は気が短い。
「失礼します」
「えっ、ええ!!」
俺は速水をお姫様だこにして、足早にリビングに向かった。リビングでは、組長が酒を飲みながらのんびりとしていたが、俺と速水の登場に目を見開き、危うくグラスを落とすところだった。
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