性奴隷は泣かない〜現代ファンタジーBL〜

月歌(ツキウタ)

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第11話 愛人です

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◆◆◆◆◆◆



やってしまった・・・・

僕は、清二の寝室のベッドで一人目覚めた。その横に、清二の姿はなかった。身は綺麗に清められていて、ゆったりとした着物を着込んでいた。まあ、清二自身が身を整えてくれた訳ではないだろうが。

でも、これは大きな失態だ。きっと、清二は僕に性奴隷としての技巧を期待していたに違いない。だからこそ、男に興味のない彼が、僕を抱いてくれたのだ。

なのに・・僕は清二とのセックスを全うする事なく気絶してしまった。

元の囲い主の清一は、セックス後の気絶した僕を弄ぶことも、楽しみの一つにしていた。だが、清二がそんな変態とは思えない。まるで、僕の事を処女でも扱うように丁寧に抱いてくれた。それにもかかわらず、気絶するなんて・・性奴隷として失格だ。いや、僕は清二の性奴隷の座ではなく、彼の愛人の座を狙っている。

でも、愛人なら情事の後には自らの体を清め、旦那様に衣装を用意したり、心安らげる会話を提供したりするものではないのか?

「全部できてなーーーーい!!」

僕は思わず、ベッドの上で嘆きの叫びをあげていた。いや、それどころか、僕は、次期組長の腕をナイフで斬りつけてしまった。これって、大阪湾に沈められる案件じゃないの?まずい、まずい状態だ・・・どうしよう。逃げ出そうか?逃げ出せるかな・・・


「ようやく目が覚めたか、速水?」
「ひぃい!」

ガチャリと突然寝室の扉が開き、着物姿の清二が姿を現した。僕は清二の突然の出現に、悲鳴を上げてしまった。そんな僕を、清二は妙な顔で見つめてきた。そして、口を開く。

「なんだ、その反応は?」
「せ、清二さん・・」
「だから、なんだ?」
「ご、ごめんなさい!!」
「はぁ?」
「性奴隷でありながら、セックスを全うできず先に気絶してしまいました。ごめんなさい。でも、次は頑張ります。だから、清二さんの愛人の一人に加えてください。時々、清二さんが抱いてくれるだけで、僕には大きな武器になります。だから、どうか見捨てないでください。僕に、武器を与えてください」

清二は困惑した表情を浮かべたまま、僕を見つめていた。それから、ゆっくりと口を開いた。

「あー、悪かったな、速水。俺は、男の抱き方を知らん。だから、無茶をしてお前を気絶させてしまった。それに、お前をぶん殴った。頬が腫れあがっている。痛いだろ・・大丈夫か?」
「いえ、全然平気です。それより、今後の事を話し合いたいのですが?」
「体が平気ならこっちの部屋に来い、速水。竜一も交えて、今後の事を話し合うぞ」
「竜一さんがいるの!?」

僕はびっくりして、慌ててベッドから抜け出した。竜一は、僕と清二がセックスをしている間も、ずっと隣の部屋にいたのだろうか?そう思うと、胸に痛みが走った。彼の前では、『性奴隷』ではなく『幼馴染』としての『速水』でいたかった。竜一の幼馴染の立場を失いたくない。昔のように、竜一に軽蔑の眼差しで見られることは・・今の僕には耐えられない。

できるだけ身を整えて寝室を出た。そして、ソファに座る竜一と目が合った。竜一は大きく目を見開いて僕を見た。そして、その視線を竜一の叔父である清二に向けた。

「清二叔父さん!どうして、速水を殴る必要があったんですか!!」
「あー?そんなもの決まってるだろ?速水が、抱かれるのを拒んだから殴っただけだ。俺の女を殴って悪いか?」
「速水は、叔父さんの女じゃない。勝手に決めないでください!」
「ちょっと、竜一さん。どうしちゃったの?ぼく、全然平気だけど?」
「平気なものか!こんなに頬が腫れあがっているのに」

竜一が僕の腕を掴んだ。だが、反対の腕を清二に掴まれた。竜一がきつい眼差しで叔父を睨みつける。僕は間に挟まれて、どうにもできない状態だった。そんな状態なのに、清二はニヤリと笑って僕に話しかけてきた。

「お前はベッドの上で俺に望んだな?俺の愛人の一人に加えてくれと?」
「はい・・お願いしました」
「俺は、お前を愛人に加えることにした」
「本当ですか!?」

僕は思わず目を見開いていた。清二は、僕に武器を与えてくれるらしい。僕はニコニコ笑いながら、竜一に話しかけていた。

「竜一さん!!これで僕は、この街で生きていけるよ。そう、生きていくんだ。僕は、幼馴染の竜一さんや竜二さんと肩を並べて・・この街を歩く事が夢だったんだ。でも、性奴隷の僕にはその資格はなかった。今の僕はどうかな、竜一さん?僕と肩を並べて、この街を歩いてくれる?」
「当たり前だ!!歩くに決まってるだろ、速水。お前は俺の幼馴染だ。どこにだって付き合うぞ!!」
「おい、速水・・それと、竜一もよく聞け。速水は今日から、俺の愛人になった。その事を忘れるな。竜二にも言い聞かせておけ。俺の女に手を出すなってな。おい、竜一。何時まで、俺の愛人の腕を掴んでいるつもりだ?」

清二は強引に竜一から僕を奪うと、抱き上げるようにしてソファに僕を座らせた。その横に清二が座る。清二は、竜一や竜二を本当にかわいがっているようだ。竜一や竜二が僕のような穢れた性奴隷とできてしまっては、亡くなった組長同様に嘲りを受けることになる。でも、それは清二も同じではないのか?彼は、僕を囲いはしないが、愛人の一人にしてくれると約束してくれた。その行為は、彼の経歴や彼の家族を穢すことにはならないだろうか?

「清二さん、僕を愛人にすると経歴に傷がつかない?それに、奥さんとかは・・大丈夫?」
「はぁー?そんな心配、お前がする必要はない。それに、俺には妻も子供もいない。この組を継ぐのは、竜一か竜二のどちらかだ。俺は気楽な身の上だ。気にするな。それより、竜一。何時までも突っ立ってないでソファに座れ」

清二の言葉で、竜一は渋々ながらも僕の向こう側の席に座った。それを見計らって、清二が口を開く。

「速水はもしこの街を出る事が出来ていたら、自分の店を持ちたかったと言っていたな?」
「あ、うん。覚えていてくれたんだ?」
「速水、そうなのか?」

竜一が聞いてきたので僕はニッコリ微笑んで答えた。

「清一さんからもらった貴金属を売って、小さい店を買って店主になるつもりだったんだ」
「お前に店の経営ができるのか・・不安しかない」
「竜一さん、それ酷くない??」
「まあ、確かにお前に経営を全面的に任せることは無理そうだな。常識が無さすぎる、速水には」

散々な言われように僕は口を尖らせた。それからすぐに後悔した。こういう仕草が、子供っぽいんだよな。こんな癖は無くさないと。

「第一、兄貴から貰った貴金属で店が買えると思っている時点で、アウトだろ」
「え、やっぱり・・資金不足ですか?」
「お前は囲われ者の性奴隷だ。どれ程兄貴がお前に貢いだのかは知らんが、それらは全部組に返却しろ。そうでなければ、禍根を残すことになるぞ」
「たしかに。親父がお前に与えたものなんて、全部忘れて手放せ。資金なら俺が手配する」
「え、竜一さんが資金提供してくれるの?」
「まて、竜一。こいつは俺の愛人だと言っただろうが?お前に、資金提供してもらう謂われはない」

なんだか、清二と竜一の間で不穏な空気が流れ始めていた。僕は、黙って事の成り行きを見守ることにした。




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