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第四章 幕末の戦いと新撰組崩壊
3 土方歳三の最期
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副長として局長近藤と共に新撰組を率いた土方歳三は、池田屋事件や禁門の変で功績を挙げると同時に、芹沢暗殺や伊東らを粛清した油小路事件に関わる等、裏の顔を持っていた。
更に壬生浪士組から新撰組になった事で隊士の数が増えた為、隊の統制を計る目的で鉄の掟である「局中法度」を作る等、頂点は局長であるが実際の指揮命令は土方から発したとされる。
局中法度では、脱退・金策・訴訟等が禁止され、違法者は例え幹部であろうと全員切腹という凄まじいものだった。
特に脱走者は切腹または斬殺後見せしめにする事もあり、「鬼の副長」と隊士から恐れられていた。
この為、新撰組隊士の死亡原因で最も多かったのが切腹であったといわれている。
慶応三年(1867年)六月に幕臣に取り立てられる。
しかし同年十月十四日に徳川慶喜が征夷大将軍を辞し大政奉還、十二月九日に王政復古の大号令が発せられ、幕府は事実上崩壊した。
慶応四年(1868年)一月三日、鳥羽伏見の戦いに始まる戊辰戦争が勃発、土方は負傷した近藤の代わりに隊を率いて戦った。
しかし新政府軍の銃撃の前に苦戦し、開戦前は150名ほどいた隊士は100名ほどになってしまっていた。
一月七日、大坂城入りした土方はそこで将軍の裏切りを知る事になる。
幕府軍の総大将であるべき慶喜が、城を抜け出し江戸へと向かったのだ。
これで幕府軍諸隊は解散を命じられ、新撰組も江戸に向かった。
江戸に帰った土方は戦いの模様を尋ねられ、「もう槍や刀では戦争というものはできません」と語っている。
この言葉はそのまま、刀一つで勝負する時代はもう終わったという事を示唆している。つまり近藤と土方らが作り上げた剣客集団『新撰組』は、鉄砲の前に敗れたのだった。
鳥羽伏見の戦いで敗れた幕府軍が江戸へ撤退した後、近藤は大久保大和、土方は内藤隼人と名乗って甲斐国へ向かうが甲州勝沼の戦いに敗退。
そして流山で近藤が出頭。捕縛される。土方は勝海舟らに直談判し近藤の助命を嘆願したが、叶わなかった。
その後、新撰組を斎藤一に託して会津へ向かわせ、自身は大鳥圭介らが率いる旧幕府軍と合流。戦場は会津へ移った。
会津戦争が激しくなると土方は仙台に向かう事を決め、一方斎藤は会津藩に忠誠を尽くして残る事を主張。
ここで新撰組は分裂した。
仙台に着くと榎本武揚率いる旧幕府軍と合流。そして共に蝦夷に渡った。
そして五稜郭を本陣とした蝦夷共和国(総裁は榎本)が成立、土方も幹部として名を連ねた。
明治二年(1869年)四月九日、二股口の戦いで約十七日間の攻防の後、一旦五稜郭に帰還。
五月十一日、新政府軍の総攻撃が開始され、土方は一本木関門で応戦、馬上で指揮を執った。
そしてその乱戦の中、銃弾に倒れる。
敵の銃弾ないしは流れ弾に当たったとするのが通説だが、降伏に反対する土方を除く為に味方の手によって殺害されたとする説もある。
遺体は五稜郭に埋葬されたとも、別の場所に置かれたともいわれる。享年35。
土方歳三という人物は本来はとても明るく、優しい人であったという。
しかし新撰組の副長という重責を背負い、「誠」の正義の元で自身を律した結果、「鬼の副長」と恐れられるまでになってしまった。
新撰組という宝物を必死に守ってきた彼は、一体どんな気持ちでいたのだろうか。
どんな気持ちで銃弾に倒れたのか。
刀一つで生きてきた最期が、銃弾だったという悲劇は皮肉だと思ってしまう。
だけど新撰組崩壊からの彼の生き様を見ていると、何だか死に場所を求めて北へ北へと向かっていっているように思えてならない。
近藤、沖田、永倉、藤堂、原田、山南、井上、そして斎藤。
彼ら同志たちを失った悲しみを、目の前の敵にぶつけていたのではないのか。
華々しく散っていった姿に、感動せずにはいられない。
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