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第三章 新撰組の主な活躍
3 池田屋事件
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かねてから数人の志士が京都に潜んで密かに勤皇を企てている事を知り、新撰組は密偵(新選組諸士調役兼監察の山崎丞・島田魁ら)を送り込んだりして独自に調査を行っていた。
その結果、1864年6月5日の夕方、尊王攘夷論の志士たちが今夜間違いなく池田屋か四国屋に集まるという事を突き止めた。
しかし丁度その時組の中には大坂へ出張中の者がいたり、病人が多かったりして総員は僅かに30名に過ぎなかった。(脱走者が多かったという説もあり。)
よって守護職と所司代にもこの事を詳しく話し、この夜の戌の刻(午後8時)に、一斉に出動する事が決まった。
しかし時刻になっても守護職の兵は来ず、亥の刻(10時)まで待ったが、結局近藤らは自ら池田屋へ斬り込んだ。
これが歴史上有名な「池田屋事件」である。
この為に明治維新が一年遅れたと言われる程の出来事であった。
新撰組にとってはもちろん、当時の日本の政治情勢にまで影響を与えた大事件といえよう。
※ 池田屋事件の詳細
近藤隊10名のうち、屋内に突入したのは近藤・沖田・永倉・藤堂の4名だった。
まず近藤が庭先へと侵入。その後で他の3名も続いて屋内へと突入した。近藤と沖田が表階段から二階へ上がり、そこで丁度密談を終えて酒を飲んでいたところを襲い、土佐の北添が近藤に斬られた。
その後近藤は逃走者を追う為裏口へと向かい、表座敷の縁側には永倉と藤堂、表出口には原田左之助と谷三十郎が槍を持って構えていた。
長州の吉田稔麿は、沖田と一騎討ちになって斬られて死亡、同じ長州の杉山松助は永倉に横から小手を打ち落とされ死んだ。
肥後の松田重助も沖田に見つかり、瞬く間に斬られて終わった。
襲撃を受けた宮部鼎蔵ら志士達は応戦しつつ、現場からの脱出を図った。
裏口を守っていた安藤早太郎・奥沢栄助・新田革左衛門達のところに土佐藩を脱藩した浪士らが必死で斬りこみ逃亡。これにより奥沢は死亡し、安藤・新田も1ヶ月後に死亡した。
新選組側は一時は近藤・永倉の2人となるが、別れて四国屋を見張っていた土方隊の到着により新選組に有利に傾き、方針を「斬り捨て」から「捕縛」に変更。9名討ち取り4名捕縛の戦果を上げた。
会津・桑名藩が到着したのはその後であった。
土方は手柄を横取りされないように、一歩たりとも彼らを近づけさせなかったという。
この戦闘で数名の尊攘派は逃走したが、翌朝会津・桑名藩らと連携した新撰組は、20余名を捕縛した。
しかし幕府側も無傷という訳にもいかず、会津藩は5名、彦根藩は4名、桑名藩は2名の即死者を出した。
一方新撰組は沖田が結核の発作を起こして倒れ(諸説あり)、永倉も左手の親指を斬られていた。藤堂は眉間に深く傷を負った。
近藤も大きな怪我こそしなかったが、苦戦した様子だったという。
死亡したのは奥沢一人だけだったが、多くの隊士が痛手を負った。
この時の長州藩士らが実行しようとしていた計画というのが、祇園祭の前の風の強い日を狙って御所に火を放ち、それに乗じて一橋慶喜・松平容保らを暗殺し、孝明天皇を長州へ連れ去る、というものであった。
池田屋での活躍によりこの計画を未然に防ぐ事に成功した新選組の名は天下に轟いたのである。
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