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第三章 新撰組の主な活躍
2 芹沢暗殺
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芹沢鴨は、水戸郷士の三男として生まれる。
文久三年、清河八郎が発案した浪士組に同郷で芹沢家の家臣筋でもある平間重助を伴い参加した。
その後清河らが離脱した後、近藤らと壬生浪士組を結成。新たに新見錦、平山五郎、野口健司らと同志になる。
「会津藩預り」として八木邸等を屯所に、京都の治安に当たる。
芹沢、近藤、新見が局長となり、そのうちで芹沢が筆頭となった。
八月十八日の政変に対して御所の警備の為に近藤、新見と共に隊士を率いて出動するが、会津藩士たちは壬生浪士組を知らなかった為、武器を構えて通そうとしなかった。
「通せ」「通さん」とお互いが怒鳴り合う中、芹沢が哄笑しながら進み出てきた。
会津藩士が槍を突きつけると、芹沢は鉄扇で槍先を悠々と扇いで笑ったとされる。
更に会津藩の軍奉行が駆けつけて壬生浪士組を通してやった時は無防備に悠然と門を通ったという。そんな芹沢の豪胆さに人々は驚いたと伝わる。
この出動を機に会津藩から「新撰組」の名を賜った。
しかし、大坂相撲の力士と乱闘になり殺傷する事件を起こしたり、京都の生糸問屋大和屋庄兵衛に金策を謝絶されたことに腹を立て放火。一晩かけて焼き尽くすという暴挙を行う等、日頃の行いの悪さが目立ち始める。
このような芹沢の振る舞いを目に余るとした容保公は、近藤と土方を黒谷にある会津本陣に呼び、芹沢暗殺の命を下したとされる。
新撰組はあくまでも命令に従って「仕方なく」行った事であって、近藤は芹沢の葬儀の際、弔辞を読む声が詰まって読めなかったと伝えられている。
つまり近藤らにしてみても、芹沢の尊大な態度に辟易させられながらも同志としては認めていたし、「暗殺」という仕事に関しても本当は心苦しかった、と考えられる。
文久三年九月八日、芹沢の右腕である新見錦が、祇園で近藤一派に切腹させられた。
そして九月十六日深夜、大雨の中、芹沢鴨・平山五郎・平間重助の三人が寝込みを襲われた。
芹沢、平山暗殺を実行した隊士は、土方歳三・沖田総司・山南敬助・原田左之助で、剣の腕が立つ芹沢には土方と沖田が当たり、平山には山南と原田が当たったという。(平間は逃走)
現場は八木邸母屋で一番奥にある「奥の間」だが、襲われた芹沢は縁側伝いに隣の部屋まで逃げ、その部屋に置かれていた文机に躓きよろめいたところを斬られたといわれている。
腕の立つ芹沢があっさり殺されたのは酔っぱらっていたせいであり、つまり素面のままだったら流石の土方らでも斬れなかったかも知れない。
そう考えると、酒を飲ませて襲った新撰組の計画は最高の形で功を奏したといえる。
逃げ込んだ部屋の鴨居には、「芹沢暗殺時の刀傷」といわれるものが現在でも残り、また躓いた文机もそのまま残されているそうである。
翌日近藤は会津公に対して、「局長芹沢が、昨夜賊のために就寝中を殺された」というような届書を出し、全隊員を集合させて遺体を壬生の地蔵寺内へ埋葬したといわれている。
こうして、事実近藤派だけの新撰組ができあがった。
この芹沢暗殺はよほど秘密裏に行われたらしく、一人島原に泊まり込んでいた永倉の手記によると、「全く何も知らなかった。近藤の差し金には相違あるまいが、自分にはとうとう本当の事は言わなかった」とある。
永倉は芹沢と同じ剣の流派で、個人的にも親しくしていたという。その為、近藤としては永倉に言えなかったのだろう。この日永倉が屯所にいなかったのは偶然ではなかったという事だ。
他の隊士に対しても余計な心配や混乱を招くと危惧し、ごく一部の限られた幹部たちだけでこの大仕事をやってのけたのだろうと考えられる。
芹沢の人となりについては様々な文献により詳しく語られているが、いずれも創作の可能性が極めて高い。
小説やドラマでは手のつけられない凶暴な悪漢のように描かれる事が多いが、器が大きく豪胆で物事をはっきりさせたがるという性格が誤解を招いていたとも考えられる。
八木家から借りた火鉢をこっそり返しに来て、火鉢に刀傷があったのを問い質された芹沢は「俺だ、俺だ」と頭をかいて逃げ出したという話もあり、意外とお茶目な一面もあったそうだ。
ただ悪い行いをして新撰組の評判を落としていたのも事実であり、「暗殺」という結末は必然だったのだとされても仕方のない事だと思われる。
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