元悪役令嬢で腐女子の私は、旦那様に美味しく食べられております!!

にのまえ

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 いつの間にか旦那様はあの本の著者がマリア様だと知っていた。
 彼女と会うと言うだけで露骨に嫌な顔をする。

 私が書くBL小説も気に入らないみたい。
 嫌ながらも、私の書いたもの読んだ旦那様は何かに気付いた。

『奥さんの書く小説はこことは違う、別の世界の話の様な気がする。僕の知らない単語が多い、奥さんは僕に何か隠し事をしていないかい?』

 ぎくっ……旦那様はこれからも読むだろうし、隠しておくのも変だと思い、旦那様に私の前世の話をした。
 驚きながらも、一応は理解してくれたはずなのだけど……旦那様の監視? が強くなった様な気がするし、えっちの回数が増えた。


(この光の球がいい例ね)


「仕事が一段落したんだ、僕も奥さんが書いた小説を読みにサロンへ向かっているからね」

 なに? BLを読みに向かって来ている⁉︎ 
 旦那様はすでに執務室を出ているの!

「もうすぐここにエンリス様とアーゴス様お二人が来るわ。マリア様とリリアンさんはお帰りの支度をなさってください!」

「お二人が来るのね……」

「ふえっ?」

 食い入るように王道学園ものBL小説を呼んでいたリリアンさん。
 そんな可愛い顔で、可愛い返事をアーゴス様になさっては、火に油を注ぐだけですわよ。

 私の旦那様。赤髪、切長な青い瞳。第二王子エンリス・コルティア王子。
 リリアンさんの最愛の人。長い黒髪、黒い色の瞳、眼鏡、エンリス様の側近アーゴス・タービン様。

 お二人ともにイケメンで結婚、婚約しても、令嬢達、あの本の影響なのかいまだ男性にも人気のお方。

 だけど彼らは私とリリアンさんを溺愛するエロ猛獣。

「近いうちにお茶会をしましょう」

 とお二人に言ったのだけど。
 マリア様が何かに気が付き、サロンの入り口に視線を送り首を横に振った。


(……あぁ)


「やぁ奥さん、僕も混ざりに来たよ」

「シルビア様、失礼いたします」
 
 さやわかに笑いながら、サロンに入ってくる旦那様こと、エンリス様と彼の側近アーゴス様。


(逃げれなかった……)


 旦那様とアーゴス様の登場で動けなくなった私達。
 お二人はにこにことテーブルに近付き、その上に広がるBL小説が書かれた原稿を手に取った。

「ふむふむ、これは前に読んだのと同じ内容かな? ほぉう、学園? 前の獣人ものとは違う話だね奥さん」

 笑いながら、艶っぽい流し目をした。

「そ、そうですわ」


 獰猛な蛇に睨まれた小心者の蛙。


「この内容だと欲求不満? 満足していないみたいだね」

「いや、そんなことは……」

 これはまずいのでは? ……陽の明るいうちからベッドに直行⁉︎


「いやぁ、ですわ、アーゴス様。私は満足しております」

「そう? 私はまだ愛し足りない満足してないからね」

「そんなぁ、愛し足りないだなんて……ごにょごにょ」

 あちらのリリアンさんも同じみたい。
 きらきらな笑顔ので迫る、アーゴス様に手を握られて真っ赤なトマトになっていた。

 腐女子にリアル、イケメンは眩しい。

 きょどる……し、心臓にわるい。

「こ、これは私達の趣味だと旦那様にはいつも申していますわ。同じ趣味を持つ、お二人と妄想の世界を楽しみたいと今朝、お伝えてえして了解してくださいましたよね」

「うん、そうだね」

 だから……「ねぇっ、仕事にお戻りください」と微笑んだのですが。
 旦那様はさらに微笑みを増し、私に近付き耳元で囁いた。

「ごめんね奥さん、僕はもうその気なんだ付き合ってくれるよね」

「ひやぁっ!」

 片手でドレスの上から私のお尻を掴み、怯んだ隙にお姫様抱っこした。

 お姫抱っこは恥ずかしい、小っ恥ずかしい。

「降ろしてください!」

「なにをそんなに照れるの? 今からもっと凄いことをするのに?」

「恥ずかしいに決まってます。お、お姫様抱っこですし、旦那様とぴったり密着してるのですよぉー!……えっ? ……あぁ、いやぁ⁉︎ ほんとだけど違うの! 今のは聞かなかったことにしてくださいませ」

 テンパって本音を暴露した。

「可愛いなぁ、僕の奥さん」

(か、可愛い⁉︎) 

 なんって嬉しそうに笑うの旦那様。

「さぁシルビア、僕の部屋に行こうね」

「旦那様、いまではなくとも、夜たっぷりお相手いたしますわ」

「夜か……言ったね奥さん。夜も勿論お相手してもらうけど観念しなよ。BLの妄想も出来ないくらいに、今からもたっぷり愛してあげるから」


(……いまからも、夜も、するおつもりなのですね)


 それでは体が持たないと暴れても、日々、朝練で騎士達と鍛えている旦那様には勝てない。
 
 既に、まな板の鯉なのだ。

「マリアさん、リリアンさん今日のお茶会はお開きね。そうだアーゴス、そこの紙を集めて執務室に置いておいて。その後、君も休憩していいからね」

「かしこまりました、エンリス殿下」

 えぇ、アーゴス様? 待って、その王道学園はまだ読んでいないの。
 みんなの小説を一ヶ月も楽しみにしていたの。

「お願い! それは私のなの返してくださいませ! 旦那様は読んでも面白くありません!」

「いいや、毎回アーゴスと楽しく読ませてもらってるよ。シルビアが部屋に隠した秘密の本と書きかけのものね」


 秘密の本? 書きかけ⁉︎

 
「「えぇー⁉︎ あの本を見て、原稿を読んだのですか!」」


 少しえっちなTL本と練習中のBL、18禁もの……前世では原稿を隠し通して、親にだって読ませたことがなかった。

 腐女子同士ならいいのだけど、そうでない人見られる恥ずかしさ。

 隠しておいた書きかけを読むなんて……私の同士とのBLライフは旦那様によって阻止さる。

 
「いくら好きな旦那様でも書きかけを読むなんで酷い、それに妄想もだめだなんて酷いですわ」


 意義あり! と正論を唱えたのだけど、余裕ありげの旦那様の笑顔と正論が倍になって返ってきた。


「いいや、僕は勝手に奥さんの部屋を漁って読んだわけではない。シルビアが自分の部屋の机の上を綺麗にしなかったせいだよ。伝えておいた時間に書類を取りに行ったときに、書きかけと本を開いて居眠りしてたでしょ?」

「あのとき⁉︎」

 2日前、旦那様から頼まれた書類の仕事を終わらせた後、書類を取りに来るまで時間が残り、少しえっちな本と練習用を机にだした。
 しかし次に目覚めたら、何故かベッドの上で机の上の書類は消えていて、出しっぱなしの原稿と開きっぱなしの本は閉じられて、綺麗に整頓されていた。

「あぁ……旦那様、ごめんなさい」

「いいよ。シルビア、たくさん食べてあげるからね」

 こればかりは原稿と本を出しっぱなしにして、呑気に居眠りした自分のせいだから……なにも言えません。

 素直に降参する。

「あ、あの手加減して食べてください」

「ははっ君は美味しいから、それはちょっと無理な話だね」

「そんなぁー」

 旦那様に連れられてサロンを出る前に、お二人に挨拶した。

「マリア様、リリアンさんごきげんよう。手紙を書きますわ」

「ごきげんよう、シルビア様」

「また、お会いしましょう」

 ぱたりと、サロンの扉が閉まった。

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