10 / 11
十 見た目とは違うシャーレの実態⁉︎
しおりを挟む
ーートキは言った。
「ほんとうに記憶喪失なんだな。まっ、シャーレなら階段から落ちても平気だしな。あー、シャーレの演技だったら、王子の護衛に殺されるところだった」
「へ、平気? 王子の護衛?」
フゥッとトキは笑い。
「領地から護衛としてきてて、シャーレを守れず怪我はさせちまったけど、記憶がないんだったら他の奴に迷惑をかけずに済むな……王子、スゲェ嫌がっていたし『僕にシャーレ嬢を近寄らせないでくれって』頼まれていたんだ」
えっ
「お前さ、僕に近寄るな! って王子に振られて、嫌われているのに『王子は私のことが好きな』のって、グイグイ行くから困っていたんだ。階段を落ちた理由も王子に逃げられて、それを追っかけ足を滑らしてだもんな……」
「そんなに王子を追っかけていたの?」
「おお、毎日よく飽きないよなって。シャーレ、よく王子に不敬罪とかにならなくてよかったよ。近寄る爵位の高い令嬢に意地悪しまくるから、ロイと一緒に困っていた」
おう……トキの口から段々、シャーレの実態が話されていく。
王子に振られたのに、グイグイ?
令嬢にいじめ!
(シャーレ、綺麗なのにヤンデル、痛い子! それだから周りに気持ち悪がられて、あんなに陰口を言われるのか……ちょっ、本人の自業自得じゃない!)
「いま記憶もないのなら、一学期で学園を通うのは辞めて、領地に帰るか? 自然豊かな領地で過ごせば、自然と記憶も戻るって」
「領地に戻る?」
「元々、シャーレは学園に興味がないし。王子と結婚したいって言っていたけど、絶望的に無理だからな……クック」
ーーそうだね、王子に嫌われてるし。
+
シャーレの悪行の数々を聞かされた。
あの子、ララさんにも色々していたよ。
機嫌が悪いと物にあたり散らかしていて、両親も手こずる我が儘し放題。腕力などお父さんの血を濃く引き継いでいるから、暴れると男の人の力を借りなくてはならない。
(お先真っ暗? ……前世、人に嫌われたくないから……人を避けていたのに。すでに嫌われた人はどうやって、仲を修復すればいいの?)
嫌われ者の人生なんて……嫌だ!
「お、おい……なに泣いてんだよ!」
「泣きたくもなる……ううっ、なんて子なのシャーレ……嫌われてるのに王子を追っかけるなんて、病みすぎ! ……わかったぞ! 王子に振られて自分の人生が嫌になったからって、人に押し付けんなぁ!!」
そんな人生いらん!
あの時ーーたまたま、あの場所で会っただけの私に!
ポロポロ泣いた……
私の二度目の人生は積んでる。
「シャーレ? いまの話からして、中身がちがうのか?」
「あ、ああ!」
しまった……夢の中の神様に言われて、いい子になるって約束したとか、悪い子はもう卒業とか、アプリ漫画のように言えばよかった。
シャーレを知っていくうちに気持ちが昂り、自分がシャーレじゃないって!! 叫んじゃったじゃない!
(やばい、シャーレの偽物だって捕まり殺される?)
私はなりたくて、シャーレになったんじゃない。
よし、ここは逃げよう!
「おい、シャーレ!」
「いや、来ないで、捕まえないで! 獣!」
「ケモノだと! お前、また俺に獣臭いって言うのかよ!」
獣の言葉に過敏に反応したトキ。
「ひぇ、臭くないって、トキはラベンダーの香りだよ!」
「当たり前だ、風呂は毎日入ってる!」
追っかけてくる"チーターのトキ"から逃げて、庭園の中をグルグル逃げ回った。
「ほんとうに記憶喪失なんだな。まっ、シャーレなら階段から落ちても平気だしな。あー、シャーレの演技だったら、王子の護衛に殺されるところだった」
「へ、平気? 王子の護衛?」
フゥッとトキは笑い。
「領地から護衛としてきてて、シャーレを守れず怪我はさせちまったけど、記憶がないんだったら他の奴に迷惑をかけずに済むな……王子、スゲェ嫌がっていたし『僕にシャーレ嬢を近寄らせないでくれって』頼まれていたんだ」
えっ
「お前さ、僕に近寄るな! って王子に振られて、嫌われているのに『王子は私のことが好きな』のって、グイグイ行くから困っていたんだ。階段を落ちた理由も王子に逃げられて、それを追っかけ足を滑らしてだもんな……」
「そんなに王子を追っかけていたの?」
「おお、毎日よく飽きないよなって。シャーレ、よく王子に不敬罪とかにならなくてよかったよ。近寄る爵位の高い令嬢に意地悪しまくるから、ロイと一緒に困っていた」
おう……トキの口から段々、シャーレの実態が話されていく。
王子に振られたのに、グイグイ?
令嬢にいじめ!
(シャーレ、綺麗なのにヤンデル、痛い子! それだから周りに気持ち悪がられて、あんなに陰口を言われるのか……ちょっ、本人の自業自得じゃない!)
「いま記憶もないのなら、一学期で学園を通うのは辞めて、領地に帰るか? 自然豊かな領地で過ごせば、自然と記憶も戻るって」
「領地に戻る?」
「元々、シャーレは学園に興味がないし。王子と結婚したいって言っていたけど、絶望的に無理だからな……クック」
ーーそうだね、王子に嫌われてるし。
+
シャーレの悪行の数々を聞かされた。
あの子、ララさんにも色々していたよ。
機嫌が悪いと物にあたり散らかしていて、両親も手こずる我が儘し放題。腕力などお父さんの血を濃く引き継いでいるから、暴れると男の人の力を借りなくてはならない。
(お先真っ暗? ……前世、人に嫌われたくないから……人を避けていたのに。すでに嫌われた人はどうやって、仲を修復すればいいの?)
嫌われ者の人生なんて……嫌だ!
「お、おい……なに泣いてんだよ!」
「泣きたくもなる……ううっ、なんて子なのシャーレ……嫌われてるのに王子を追っかけるなんて、病みすぎ! ……わかったぞ! 王子に振られて自分の人生が嫌になったからって、人に押し付けんなぁ!!」
そんな人生いらん!
あの時ーーたまたま、あの場所で会っただけの私に!
ポロポロ泣いた……
私の二度目の人生は積んでる。
「シャーレ? いまの話からして、中身がちがうのか?」
「あ、ああ!」
しまった……夢の中の神様に言われて、いい子になるって約束したとか、悪い子はもう卒業とか、アプリ漫画のように言えばよかった。
シャーレを知っていくうちに気持ちが昂り、自分がシャーレじゃないって!! 叫んじゃったじゃない!
(やばい、シャーレの偽物だって捕まり殺される?)
私はなりたくて、シャーレになったんじゃない。
よし、ここは逃げよう!
「おい、シャーレ!」
「いや、来ないで、捕まえないで! 獣!」
「ケモノだと! お前、また俺に獣臭いって言うのかよ!」
獣の言葉に過敏に反応したトキ。
「ひぇ、臭くないって、トキはラベンダーの香りだよ!」
「当たり前だ、風呂は毎日入ってる!」
追っかけてくる"チーターのトキ"から逃げて、庭園の中をグルグル逃げ回った。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
こんにちは、女嫌いの旦那様!……あれ?
夕立悠理
恋愛
リミカ・ブラウンは前世の記憶があること以外は、いたって普通の伯爵令嬢だ。そんな彼女はある日、超がつくほど女嫌いで有名なチェスター・ロペス公爵と結婚することになる。
しかし、女嫌いのはずのチェスターはリミカのことを溺愛し──!?
※小説家になろう様にも掲載しています
※主人公が肉食系かも?
【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
国外追放されたくないので第二王子の胃袋を掴んだら溺愛されました!
和栗かのこ
恋愛
乙女ゲームが趣味の社畜・美咲は、階段から落ちて乙女ゲーム「クレセント・ナイト」の悪役令嬢に転生してしまう。
悪役令嬢セセリアに転生した美咲は、国外追放される展開を変えるため、婚約者である第二王子の胃袋を掴むことを思いつく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる