悪役令嬢とは?

にのまえ

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十 見た目とは違うシャーレの実態⁉︎

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 ーートキは言った。

「ほんとうに記憶喪失なんだな。まっ、シャーレなら階段から落ちても平気だしな。あー、シャーレの演技だったら、王子の護衛に殺されるところだった」

「へ、平気? 王子の護衛?」

 フゥッとトキは笑い。

「領地から護衛としてきてて、シャーレを守れず怪我はさせちまったけど、記憶がないんだったら他の奴に迷惑をかけずに済むな……王子、スゲェ嫌がっていたし『僕にシャーレ嬢を近寄らせないでくれって』頼まれていたんだ」

 えっ 

「お前さ、僕に近寄るな! って王子に振られて、嫌われているのに『王子は私のことが好きな』のって、グイグイ行くから困っていたんだ。階段を落ちた理由も王子に逃げられて、それを追っかけ足を滑らしてだもんな……」

 「そんなに王子を追っかけていたの?」

「おお、毎日よく飽きないよなって。シャーレ、よく王子に不敬罪とかにならなくてよかったよ。近寄る爵位の高い令嬢に意地悪しまくるから、ロイと一緒に困っていた」

 おう……トキの口から段々、シャーレの実態が話されていく。
 王子に振られたのに、グイグイ?
 令嬢にいじめ!

(シャーレ、綺麗なのにヤンデル、痛い子! それだから周りに気持ち悪がられて、あんなに陰口を言われるのか……ちょっ、本人の自業自得じゃない!)

「いま記憶もないのなら、一学期で学園を通うのは辞めて、領地に帰るか? 自然豊かな領地で過ごせば、自然と記憶も戻るって」

「領地に戻る?」

「元々、シャーレは学園に興味がないし。王子と結婚したいって言っていたけど、絶望的に無理だからな……クック」 

 ーーそうだね、王子に嫌われてるし。







 シャーレの悪行の数々を聞かされた。
 あの子、ララさんにも色々していたよ。

 機嫌が悪いと物にあたり散らかしていて、両親も手こずる我が儘し放題。腕力などお父さんの血を濃く引き継いでいるから、暴れると男の人の力を借りなくてはならない。

(お先真っ暗? ……前世、人に嫌われたくないから……人を避けていたのに。すでに嫌われた人はどうやって、仲を修復すればいいの?)

 嫌われ者の人生なんて……嫌だ!

「お、おい……なに泣いてんだよ!」

「泣きたくもなる……ううっ、なんて子なのシャーレ……嫌われてるのに王子を追っかけるなんて、病みすぎ! ……わかったぞ! 王子に振られて自分の人生が嫌になったからって、人に押し付けんなぁ!!」

 そんな人生いらん!
 あの時ーーたまたま、あの場所で会っただけの私に!



 ポロポロ泣いた……
 私の二度目の人生は積んでる。

「シャーレ? いまの話からして、中身がちがうのか?」

「あ、ああ!」

 しまった……夢の中の神様に言われて、いい子になるって約束したとか、悪い子はもう卒業とか、アプリ漫画のように言えばよかった。

 シャーレを知っていくうちに気持ちが昂り、自分がシャーレじゃないって!! 叫んじゃったじゃない!

(やばい、シャーレの偽物だって捕まり殺される?)

 私はなりたくて、シャーレになったんじゃない。

 

 よし、ここは逃げよう!

「おい、シャーレ!」
「いや、来ないで、捕まえないで! 獣!」

「ケモノだと! お前、また俺に獣臭いって言うのかよ!」

 獣の言葉に過敏に反応したトキ。

「ひぇ、臭くないって、トキはラベンダーの香りだよ!」

「当たり前だ、風呂は毎日入ってる!」

 追っかけてくる"チーターのトキ"から逃げて、庭園の中をグルグル逃げ回った。
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