悪役令嬢とは?

にのまえ

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二 階段から落ちたらしい

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 妹との思い出にひたっていると、
 ガチャッと部屋の扉が開き、誰か部屋に入ってくる。

「シャーレお嬢様、おはようございます」
「おはよう………ございます」
「………え、ええ、お、お嬢様!!」

 そのメイドは私をみて、驚きの表情を見せた。


「「まあ、ああ、め、目を覚まされたのですね、シャーレお嬢様!!」」


(ひ、え、ええ――!!)

 彼女は涙を流しながら、私のもとに飛び込んでくる。
 どうしたらいいのかわからず避けず、受け止めようと両手を出した。

 ガシッと、細い腕はメイドをガッチリ抱きとめた。

 ――うそぉ。

 こ、この美人さんって案外、力持ち?
 驚く私を他所にメイドは涙を流して、

「学園に入学した直後に階段から落ちて、一週間ものあいだ目を覚まさず。学園の医者にみせても『タンコブひとつで、寝ているだけです』としかいわなくて………心配しておりました」

「え!」


 ――か、階段から落ちたぁ!
 ――それで、怪我がタンコブ?


「……ほ、ほんと、よかった。目を覚まされて」

 ほんとよかったよ……あ、今は私だ。

「ええ……あ、あの、ところで私は誰で、あなたは誰なのでしょうか? ……あ、ごめんなさい、………わ、私、何も思い出せないの」

 てな、漫画を読んだわ。

「シャーレ、お、お嬢様………?」

 ――ここが何処だとか。
 ――この美人さんの名前が、シャーレなのはわかった。

 それだけで、なにも知らない。
 私が不安で、いまにも泣きそうな顔をしたからか、
 おばちゃんはもう一度、私を抱きしめてくれた。

「おかわいそうに、シャーレお嬢様……学園の階段から落ちたときに打ちどころが悪くて、記憶喪失になってしまったのですね!」

「………ええ、そうみたいなの……ごめんなさい。ううっ、なにも思い出せない」

「シャーレお嬢様、無理はおやめになってください。いま、お医者様を呼び、旦那様と奥様にご連絡をいたします」

「あ、ありがとう…………!」

(え!)

  な、な、なんと、このおばちゃんメイドの頭に、
 ま、ま、丸く黄色な耳と、お尻にスラリと長い尻尾がついる!

 ――獣人⁉︎

(ウソ、可愛い、耳と尻尾を触りたい……!)

 ファンタジーのキャラメイクではかならず獣人を選び、獣人キャラのいるゲームをあいして、弱くてもポイントは全振り。

『お姉は獣人好きねぇ!』

 妹にも言われたほど、私は獣人が一番好き。

 飼い猫、茶々丸に触る、匂いを嗅ぐ、プニプニお腹、尻尾を触る。
 すべてをやって、茶々丸に嫌われたのを覚えている。
『やめろにゃ!!』って、よく顔パンチをくらったものだ。

(本物の耳と尻尾、可愛いなぁ)

 ――彼女の丸い耳と、ゆれる尻尾は癒しとなった。
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