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32話

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「近くにササといるから、終わったら話しかけてね」
「はい」

 カーサリアル殿下に温室を見せれると、ルルーナは浮かれていた。そこに真っ白な箱を持って、婚約者カサロとメイド姿のリボンがやってきた。

「ルルーナ嬢、誕生日おめでとう。直ぐプレゼントを渡したかったんだけど。他の方々のプレゼントが高価なものばかりだったら、気遅れた」

 ――すぐ来ようと思った? リボンさんと楽しそうに食事していたのに?

「(一応)カサロは私の婚約者なんだから、気にしないでいいわ」

「そう? ルルーナ嬢のプレゼントに!ケーキを作ったんだ食べて欲しい」

 照れたようにらカサロが手に持っていた箱を開けると、中に苺のケーキがワンホール入っていた。彼の言う通り、作ったらしく、所々クリームを失敗していた。

「可愛い、ありがとう。シャロン、このケーキ美味しそうだから、みなさまの分も切り分けて」

「かしこまりました」

「「え?」」

 なぜか、カサロとリボンの声が重なる。

 ――そして

〈まずい! 毒入りのケーキが他人に食べられちまう〉
〈カサロ、どうするのよ〉
〈そんなこと言っても、どうする?〉
〈わかんない!〉

 焦る、2人の声ぞ聞こえたが、
 2人はニコニコと、表情を変えることなく微笑んでいた。

(いま、2人の声がしたけど)

「……シャロン、その苺のケーキを切るの待って」

 ルルーナはカサロ達から"毒入り"と聞こえたので、一応、ケーキを切ろうとしているシャロンを止めた。

〈止めたぞ、危ねぇ〉
〈あのケーキはルルーナが食べなくちゃ、計画が進まない!〉
 
〈そうだよな……〉

 ――計画? その毒入りの苺ケーキを、私に食べさせたい? 

〈ねぇ、ルルーナの両親もついでに食べないかなぁ?〉
〈食べて欲しいな〉

 やはり、この声はカサロとリボンの声のはずなのに、2人の口が動いていない。なんなのか分からなく、ルルーナは混乱したが。

 ――とりあえず、そのケーキをシャロンに屋敷の中へ持って行ってもらわないと、いけないわ。

「シャロン、美味しそうだから独り占めしますわ。キッチンに置いておいて、別のを持ってきてくださる」

「わかりました」
「それと。そのケーキは私のだから、誰も触らないように伝えてね」

「はい」

〈お、上手くいきそうだ。後は庭の確認だな〉
〈そうね。ルルーナ、それ食べて腹痛くなりなさいよ〉

「……(庭? お腹が痛くなる?)」

 ――大好きなカサロと私が婚約したからか、リボンさんは、私がそうとうお嫌いのようね。

「ルルーナ嬢、このあと用事があるので失礼します」
「そう、プレゼントありがとう」

〈庭を見て帰ろう〉
〈うん、帰ろう!〉

 庭を見ると言う2人を見送り、ルルーナは急いでキッチンへ向かった。その慌てたルルーナの姿を見てか、カーサリアル殿下とササ様も後をついていく。

「ルルーナ嬢、そんなに慌ててどうしたんだい?」
「あ、カ、先生……ケーキに毒が、私、変なんです」

「ルルーナ?」

 いまにも泣きそうで、いつもの落ち着きがないルルーナを見て、カーサリアルはルルーナを引き寄せ、その胸に抱きしめた。
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