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追求してこないカーサリアル殿下に少しホッとして、ササとシャロンによって運ばれた紅茶を口にした。
それは甘いアップルティーだった。その紅茶を飲んだルルーナは顔を赤くしてしまった。その理由はカーサリアル殿下に食べてもらおうと思って、シャロンと焼いたアップルパイを持っていたからだ。
(シャロンと作ったアップルパイ……合うかしら?)
「カーサリアル様、ルルーナ様からいただいたアップルパイも一緒にいかがですか? 手作りだそうです」
隣で優雅に紅茶を飲む、カーサリアル殿下がいきなりむせた。その姿に、やはり合わないのかと思ったルルーナだが。
「な、何、作り⁉︎ 俺はアップルパイは好きだ。食べたい……大きめに切ってくれ」
「私も、少し大きめでお願いいたします。カーサリアル殿下のお口に合うといいのですが」
殿下の言葉が嬉しくて、ルルーナはジッと彼を見つめた。前々からシャロンと仲が良くなってから毒草以外に、ホットケーキ、クッキーなどを一緒に作るようになった。
(料理など。と、はじめは両親に反対されたのだけど……)
シャロンと一緒に作る姿を見てからか「今日は何を作るんだい?」「お茶の時間に食べたいわ」と、両親も言ってくれる。
薬師の先生をしていただけるとなってから、何かお礼に作ろうと思い、ルルーナの好きなアップルパイを焼こうと、シャロンと練習をはじめた。
「カーサリアル様アップルパイです。冷蔵箱にあった、アイスクリームも添えてみました」
「ありがとう、美味しそうだ」
カーサリアル殿下の前に置かれたアップルパイの横に、真っ白なアイスクリームが添えられている。アイスクリームとは牛のお乳と卵、生クリーム、お砂糖で作れるお菓子。
ルルーナは名前を知っているが、実物を初めてみて瞳を大きくした。そのアイスクリームとアップルパイが乗ったお皿が、ルルーナの前にも置かれたり。
「美味しそうです。私、アイスクリームを見るのは初めて……」
「そうか? 食べてみて冷たくて、甘くて美味しいよ」
「はい。いただきます」
スプーンですくい口に運んだ。初めて食べたアイスクリームはカーサリアル殿下のいう通り、甘くて、冷たい。
「わぁ。アイスクリーム、すごく美味しいです」
「それはよかった。ルルーナが焼いたアップルパイも美味しいよ」
喜んでもらえたのが嬉しくて、ルルーナは微笑んだ。いつもの淑女の笑みではなく、自然な笑み。
その笑みに、カーサリアル殿下の頬がほんのり染まり、切長な瞳が開いたのをルルーナは気付かなかった。
「カーサリアル殿下、本当においしいですわ」
「あ、ああ……ササとシャロンも食べなさい」
2人が返事をして奥に向かってから、カーサリアルは片手でほてる顔を隠し「まいったな」と小さく呟いた。
それは甘いアップルティーだった。その紅茶を飲んだルルーナは顔を赤くしてしまった。その理由はカーサリアル殿下に食べてもらおうと思って、シャロンと焼いたアップルパイを持っていたからだ。
(シャロンと作ったアップルパイ……合うかしら?)
「カーサリアル様、ルルーナ様からいただいたアップルパイも一緒にいかがですか? 手作りだそうです」
隣で優雅に紅茶を飲む、カーサリアル殿下がいきなりむせた。その姿に、やはり合わないのかと思ったルルーナだが。
「な、何、作り⁉︎ 俺はアップルパイは好きだ。食べたい……大きめに切ってくれ」
「私も、少し大きめでお願いいたします。カーサリアル殿下のお口に合うといいのですが」
殿下の言葉が嬉しくて、ルルーナはジッと彼を見つめた。前々からシャロンと仲が良くなってから毒草以外に、ホットケーキ、クッキーなどを一緒に作るようになった。
(料理など。と、はじめは両親に反対されたのだけど……)
シャロンと一緒に作る姿を見てからか「今日は何を作るんだい?」「お茶の時間に食べたいわ」と、両親も言ってくれる。
薬師の先生をしていただけるとなってから、何かお礼に作ろうと思い、ルルーナの好きなアップルパイを焼こうと、シャロンと練習をはじめた。
「カーサリアル様アップルパイです。冷蔵箱にあった、アイスクリームも添えてみました」
「ありがとう、美味しそうだ」
カーサリアル殿下の前に置かれたアップルパイの横に、真っ白なアイスクリームが添えられている。アイスクリームとは牛のお乳と卵、生クリーム、お砂糖で作れるお菓子。
ルルーナは名前を知っているが、実物を初めてみて瞳を大きくした。そのアイスクリームとアップルパイが乗ったお皿が、ルルーナの前にも置かれたり。
「美味しそうです。私、アイスクリームを見るのは初めて……」
「そうか? 食べてみて冷たくて、甘くて美味しいよ」
「はい。いただきます」
スプーンですくい口に運んだ。初めて食べたアイスクリームはカーサリアル殿下のいう通り、甘くて、冷たい。
「わぁ。アイスクリーム、すごく美味しいです」
「それはよかった。ルルーナが焼いたアップルパイも美味しいよ」
喜んでもらえたのが嬉しくて、ルルーナは微笑んだ。いつもの淑女の笑みではなく、自然な笑み。
その笑みに、カーサリアル殿下の頬がほんのり染まり、切長な瞳が開いたのをルルーナは気付かなかった。
「カーサリアル殿下、本当においしいですわ」
「あ、ああ……ササとシャロンも食べなさい」
2人が返事をして奥に向かってから、カーサリアルは片手でほてる顔を隠し「まいったな」と小さく呟いた。
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