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奥の部屋へと着くと、ササは扉をノックした。中から返事が返り、
「カーサリアル様、ルルーナ様をお連れいたしました」
と扉を開けた。部屋の中は前とは違い、独特の薬の香りと、薬師棚がテーブルの上に置かれている。
(前にも見たけど。その薬棚って、薬師の方だけが持てる魔導具の薬師棚だわ)
棚には風魔法が使われていて、家主が扱う薬の保存と乾燥を防ぐ、ルルーナが今欲しい棚である。
「カーサリアル殿下、お呼びいただき感謝いたします」
「いらっしゃいルルーナ嬢、待っていたよ、すぐに授業をしてもいいけど、まずはお茶にしようか。ササ、お茶の準備をお願いするね」
「かしこまりました」
「わ、私も手伝います」
シャロンは、お茶の準備に向かうササの後を追って行った。
「馬車での移動は疲れただろう、俺の隣でもいいけど、好きなところに座って」
「は、はい」
ルルーナは慌てて殿下の隣に座った。一瞬、カーサリアル殿下の表情が動いたが、ルルーナは気付いていない。だって、今日のカーサリアルは前回着ていたジャストコールではなく、紺色の見たことがない服を着ていた。
(その服……殿下に似合っているわ。生地だって薄くて動きやすそう)
チラチラと隣に座るカーサリアルを見るルルーナ、それに気付きカーサリアルはクスッと笑い。
「ルルーナ嬢は、この服が気になる?」
「え、はい。初めて見る服なので……とても動きやすで、似合ってらっしゃるわ」
「ありがとう。ルルーナ嬢の言う通り、この服は動きやすいよ。俺に薬を教えてくれたガゴ師匠が着てたんだ。この大陸から、海を渡った、東の国の服だって言っていたね?」
「海を渡った東の国? 東の国と言えば、珍しい食べ物がたくさんあると、本で読んだことがあります」
他にもこことは違う文化で、一夫多妻のこの国とは違い、一夫一妻だとか。見たことがない薬草もありそう。
「詳しいね。一度は行ってみたい国だ」
「私も行ってみたいですわ」
「ルルーナ嬢と一緒に行けたらいいね」
そのカーサリアルの誘いに、応えることができなかった。
それは、ルルーナはまだ婚約者がいるからだ。そのことはカーサリアルも知っていて、それ以上は彼も追求してこなかった。
「カーサリアル様、ルルーナ様をお連れいたしました」
と扉を開けた。部屋の中は前とは違い、独特の薬の香りと、薬師棚がテーブルの上に置かれている。
(前にも見たけど。その薬棚って、薬師の方だけが持てる魔導具の薬師棚だわ)
棚には風魔法が使われていて、家主が扱う薬の保存と乾燥を防ぐ、ルルーナが今欲しい棚である。
「カーサリアル殿下、お呼びいただき感謝いたします」
「いらっしゃいルルーナ嬢、待っていたよ、すぐに授業をしてもいいけど、まずはお茶にしようか。ササ、お茶の準備をお願いするね」
「かしこまりました」
「わ、私も手伝います」
シャロンは、お茶の準備に向かうササの後を追って行った。
「馬車での移動は疲れただろう、俺の隣でもいいけど、好きなところに座って」
「は、はい」
ルルーナは慌てて殿下の隣に座った。一瞬、カーサリアル殿下の表情が動いたが、ルルーナは気付いていない。だって、今日のカーサリアルは前回着ていたジャストコールではなく、紺色の見たことがない服を着ていた。
(その服……殿下に似合っているわ。生地だって薄くて動きやすそう)
チラチラと隣に座るカーサリアルを見るルルーナ、それに気付きカーサリアルはクスッと笑い。
「ルルーナ嬢は、この服が気になる?」
「え、はい。初めて見る服なので……とても動きやすで、似合ってらっしゃるわ」
「ありがとう。ルルーナ嬢の言う通り、この服は動きやすいよ。俺に薬を教えてくれたガゴ師匠が着てたんだ。この大陸から、海を渡った、東の国の服だって言っていたね?」
「海を渡った東の国? 東の国と言えば、珍しい食べ物がたくさんあると、本で読んだことがあります」
他にもこことは違う文化で、一夫多妻のこの国とは違い、一夫一妻だとか。見たことがない薬草もありそう。
「詳しいね。一度は行ってみたい国だ」
「私も行ってみたいですわ」
「ルルーナ嬢と一緒に行けたらいいね」
そのカーサリアルの誘いに、応えることができなかった。
それは、ルルーナはまだ婚約者がいるからだ。そのことはカーサリアルも知っていて、それ以上は彼も追求してこなかった。
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