上 下
18 / 33

15

しおりを挟む
 ルルーナが7歳から続けてきた夜の習慣。少しでも毒になれるために、紅茶に少しだけ入れて飲む。時間があれば近くの原っぱに出かけて、調べた毒草、解毒草をつむ。

 詰んだ毒草と、解毒草は風魔法で乾燥させてしまう。

(魔法が使える家系でよかった――)

 だが今世まで、ルルーナはカサロから逃げることばかりを考えていて、魔法にはまったく興味を示さなかった。両親も、そんなルルーナに教えることはなかった。

 知らないものは覚える。
 使えるものは使う。と、ルルーナは魔法を習いたいと、家庭教師を雇ってもらい風魔法を習得した。

(今まで使わなかったのが勿体無い、魔法は便利だわ)

 火を起こしたり、水、氷を出し、風を巻き起こす。冒険者にならなくても、日頃、使用する魔法を覚えれば、一人でもなんとかなる。ルルーナにその知識さえあれば、逃げて森で迷ったり、池に落ちたり、毒蛇、毒バチに刺されて死ぬことはなかっただろう。

 だけど、ルルーナが色んなものを覚えようと思う様になったのは、9回目の死があったからだ。

 今までの死とは違い、カサロが関係せずルルーナは死を迎えた。その出来ごとがなかったら、なんど巻き戻っていてもルルーナはカサロから逃げることばかり、考えていたと思う。

(あの9回目の死。結果的、毒で死んでしまったのだけど、あれのおかげよね)

 ルルーナは慣れた手つきで毒草の瓶を開け、いれた紅茶に振りかける。今日の毒はルチ草、口に入れると舌が痺れる感じが、面白い……じゃない。

 毒には喉が焼けるモノ。
 苦味、渋み、辛味があるモノ。
 幻覚を見せるモノ、と種類は多い。

「知れば知るほど、奥が深いわ」

 紅茶を一口飲み、舌の痺れる感覚を確かめた。ピリピリと、舌が麻痺する感覚がした。

(けっこう毒が回ってきたわ……解毒草を用意しないと)

 ここで使用する解毒草はパイナ草という、丸い葉を乾燥させたもの。

 このパイナの葉はどんな毒も中和する特殊な葉っぱだから、その葉を口にふくみ、噛み砕き飲み込めば解毒できると。

 ルルーナがパイナの葉を手にしたとき「ルルーナお嬢様すみません。明日のドレスを決め忘れました」と、メイドのシャロンがノックを忘れて部屋へと入ってきた。

(シャ、シャロン⁉︎)

「ル、ルルーナお嬢様⁉︎」

 今日、ルルーナがえらんだルチ草は、紅茶に入れると、青色に変色する毒草だった。ノックを忘れて部屋に来たシャロンが見たのは、その紅茶を飲み、口元を青く染めたルルーナの姿。

「ああ、お嬢様の口元がぁ!」

 シャロンは衝撃を受けて、その場で気絶した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】冷遇された翡翠の令嬢は二度と貴方と婚約致しません!

ユユ
恋愛
酷い人生だった。 神様なんていないと思った。 死にゆく中、今まで必死に祈っていた自分が愚かに感じた。 苦しみながら意識を失ったはずが、起きたら婚約前だった。 絶対にあの男とは婚約しないと決めた。 そして未来に起きることに向けて対策をすることにした。 * 完結保証あり。 * 作り話です。 * 巻き戻りの話です。 * 処刑描写あり。 * R18は保険程度。 暇つぶしにどうぞ。

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~

Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。 「俺はお前を愛することはない!」 初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。 (この家も長くはもたないわね) 貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。 ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。 6話と7話の間が抜けてしまいました… 7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

毒はすり替えておきました

夜桜
恋愛
 令嬢モネは、婚約者の伯爵と食事をしていた。突然、婚約破棄を言い渡された。拒絶すると、伯爵は笑った。その食事には『毒』が入っていると――。  けれど、モネは分かっていた。  だから毒の料理はすり替えてあったのだ。伯爵は……。

わがまま令嬢は改心して処刑される運命を回避したい

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のセアラは権力を振りかざし、屋敷でも学園でもわがままの限りを尽くしていた。 ある夜、セアラは悪夢を見る。 それは、お気に入りの伯爵令息デズモンドに騙されて王女様に毒を盛り、処刑されるという夢だった。 首を落とされるリアルな感覚と、自分の死を喜ぶ周りの人間たちの光景に恐怖を覚えるセアラ。しかし、セアラはその中でただ一人自分のために泣いてくれた人物がいたのを思い出す。 セアラは、夢と同じ結末を迎えないよう改心することを決意する。そして夢の中で自分のために泣いてくれた侯爵家のグレアムに近づくが──……。 ●2021/6/28完結 ●表紙画像はノーコピーライトガール様のフリーイラストよりお借りしました! ◆小説家になろうにも掲載しております

白い結婚の王妃は離縁後に愉快そうに笑う。

三月べに
恋愛
 事実ではない噂に惑わされた新国王と、二年だけの白い結婚が決まってしまい、王妃を務めた令嬢。  離縁を署名する神殿にて、別れられた瞬間。 「やったぁー!!!」  儚げな美しき元王妃は、喜びを爆発させて、両手を上げてクルクルと回った。  元夫となった国王と、嘲笑いに来た貴族達は唖然。  耐え忍んできた元王妃は、全てはただの噂だと、ネタバラシをした。  迎えに来たのは、隣国の魔法使い様。小さなダイアモンドが散りばめられた紺色のバラの花束を差し出して、彼は傅く。 (なろうにも、投稿)

妹がいらないと言った婚約者は最高でした

朝山みどり
恋愛
わたしは、侯爵家の長女。跡取りとして学院にも行かず、執務をやって来た。婿に来る王子殿下も好きなのは妹。両親も気楽に遊んでいる妹が大事だ。 息詰まる毎日だった。そんなある日、思いがけない事が起こった。 わたしはそれを利用した。大事にしたい人も見つけた。わたしは幸せになる為に精一杯の事をする。

旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。 実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。

処理中です...