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 ルルーナ10歳。本日は月に何度かの婚約者とのお茶会の日。

 婚約者のカサロがルルーナに会いに屋敷へと来るとき、毎回、付き合っている男爵家のリボンにメイド服を着せて、連れてきていることにルルーナは気付き驚いた。

(彼女はメガネをかけて変装しているけど、あの顔は男爵家のリボンだわ。前までの私って、まったく気付いていなかった)

 それもそう。1回目のルルーナはカサロを溺愛して、誰にも渡したくなくてドレス、お化粧と自分を着飾ることに夢中で周りが見えていなかった。

 次からは「どうやって、彼から逃げるか」としか考えていなかった。

 ルルーナは一つのことに集中すると暴走して、周りが見えなくなってしまう。いま紅茶を飲み反対側に座る婚約者のカサロを見ると、彼らはルルーナがいるのにも関わらず、仲良くしていた。

(2人が好き合っている……こんなにもわかりやすいのに、私は気付かなかった)

 だけど、そんな2人の姿を見てもルルーナの心は、ちっとも心はざわつかなかった。いまのルルーナは自分にかかる「毒で死んでしまう」呪いと、もっと毒に詳しくなりたいが頭の中をしめている。

(新しく、お父様に買ってもらった植物図鑑が面白過ぎて、ずっと読んでいたいわ)

 それに婚約者の彼も、義務でお茶会へ参加しているからか。私から話しかけないと、一言も話さない。

 ――前は。

 彼が好きで、大好きで。彼のことを知りたくて、ルルーナから話題を振っていたが。いまのルルーナはから会話することなく、メイドがいれてくれたお茶を飲み、コックが作ったケーキをつつき、会話なく時間だけが過ぎていく。

(でも変ね。会話をしていないけど、2人は何か楽しそうにしている。だけど、こちらは退屈。これなら庭師のおじじと庭園にいるか、部屋で植物図鑑を読みたいわ)

「……」


 ――ええ、そうさせていただきましょう。

「すみません、カサロ様。――私、気分がすぐれないので部屋に戻りますわ」

「え? 大丈夫?」

 カサロが席を立ち、こちらへと来ようとした手を、メイド姿のリボンが掴んだ。焦るカサロの姿が見えてが、ルルーナは見ないふりをして微笑んだ。

「ええ、大丈夫ですわ。あ、そうでした――私、王都都立の学園へ入学するまで家庭教師を雇いましたの。しばらく、このお茶会は無しにいたしましょう。……カサロ様、ごきげんよう」

 ルルーナはテラス席から立ったとき。カサロの胸元のネクタイピンの、緑色の石が少し気になったが。メイドを連れて部屋へと戻り、部屋着へと着替えて、ソファで植物図鑑を開いた。

(これよ、これ!)

 いまのルルーナにとって、この時間が楽しいひとときとなっている。

(はやく、カサロと婚約破棄したいのだけど。2人が密かに付き合っている、という。証拠を集めないといけないわね)

 前の私はどうやったかしら?
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