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第二章 ストレーガ国までの帰路
ベルーガ、子犬ちゃんの気持ち
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久しぶりに自分の部屋へと戻ってきた。
なんだか凄く懐かしくて、まだ帰りたくなかった自分がいる。
「だけど、旅は終わったんだ……」
子犬の姿で、楽しんだ旅は終わった。
これから僕と、ルーチェちゃんは一緒にいることは出来ない。無理やりシエルから引き離して、嫌われながらも、彼女を婚約者になんてしたくない。
シエルは大切な友だし、ルーチェちゃんは愛しい人だ。
僕のわがままで、2人を悲しませたくない。
コンコンコンと部屋の扉が叩かれる。
子犬のときは必要がなかった、着替えのためにメイドが来たのかと思い、返事を返すと違った。
――父上からの呼び出しだ。
僕は急ぎ父上の執務室へと向かった。いく途中で気付く、そうかと。元婚約者のナタリーの処遇の話を、父上から聞かされるんだ。
執務室に着き扉を叩くと、父上が入れと返事がきた。
「失礼します、父上。何か御用ですか?」
「そうだ、ソファーにかけなさい」
実務机の前にある、向かい合わせの来客用のソファーに座る。目の前のテーブルには……入れたての紅茶と、僕の好きなチーズケーキが乗っていた。
「もう少しかかるから、食べて待っていなさい」
「はい、いただきます」
久しぶりのチーズケーキは甘く、痛んだ心を癒す。
紅茶も僕の好きなアールグレイだ。父上は僕のためにチーズケーキと紅茶を準備してくれたのか。
「ありがとうございます、ジールア父上」
「いや、サリナがベルーガを執務室に呼ぶなら、コレを準備しろと言ったんだ……ゆっくり食べてくれ、私は少し出てくる待っていてくれ」
「はい」
父上は手に書類を数枚持ち、執務室から出ていった。
いつも側にいるはずの執事ナルの姿がなく、魔法も使用していない。父上は僕のためにナルを下がらさせ、魔法の使用も控えてくれたのか……なんて、優しい父上と母上だ。
(明日、母上をお茶に誘おう)
そして……早く、魔力を安定出来るようにならないとな。しばらく子犬だったから、ますます出来なくなっていそうだ。シエルとラエルに笑われるな。
書類を執事に渡して戻ってきた父上と、ソファーを囲んで座っている。父上は僕にいろいろ聞きたいのを我慢して、元婚約者ナタリーの話からはじめた。
僕を逃したあと――主犯者のナタリーを捕まえた父上は、すぐに魔女と引き離した。その魔女の姿は首上でグロいと顔をしかめて父上は話した。
「魔女がね……余りにもうるさいし、気持ち悪いから――すぐに封印したよ。魔女と引き離され正気に戻ったナタリーはそのあと、言い訳をはじめた。ベルーガが悪い、私を愛していないと喚いた」
――ハァ。
「そうですか……僕の気持ちは伝わっていなかったのですね」
父上は紅茶を一口飲み、頷いた。
「私は伝えたよ。ベルーガは愛していたと……しかし、もう遅いと。真実を知ったナタリーは悔やんで泣いたけど、後の祭りだ。ナタリーとその家族を国外追放にした……罪が軽すぎるかもしれないが、二度とこの地は踏ませない、もし踏んだら次は覚悟してもらう」
父上は僕に鋭い瞳を向けた。
ナタリーに次は無いのだろう。
「父上がそうお決めになったのなら、それでいいです。ナタリーのことは吹っ切れています」
「そうだろうね、王の間で会ったルーチェという女性だろう? 婚約者にしたいなら、シエルに諦めさせればいい」
「そんな事は出来ません! そんな事をしたらルーチェちゃんに嫌われるし、シエルに殺されます!」
側でズッと見てきたんだ。
ルーチェちゃんはシエルが好きで、シエルもルーチェちゃんが好き――2人はお互い愛し合っている。
「私も見ていてわかったよ。シエルのあの瞳は私をも殺すな。それくらい愛した女性か――よい魔力を持つ、綺麗な子だった。さぞかし大切に育てられたんじゃないか?」
「え? いいえ、彼女は……」
僕が知る、ルーチェちゃんの話を父上にした。
父上は黙って僕の話を聞き……そうかと言った。
「魔力なしか――アンサンテ国では彼女の魔力量を、正確に測れなかったのだな。だが私の国は違うぞ、彼女の魔力量は見てわかる」
「そんなに凄いのですか?」
「あぁ、訓練すれば……シエル、ラエル以上、ベルーガよりも上で……私と互角か……上かもな。まあ、こればかりは鍛えてみないことにはわからない」
そっか、ルーチェちゃんは魔法が好きだから喜ぶだろうな。嬉しそうに魔力を使う、彼女がみたい。
「それと、ベルーガ達が連れてきたドラゴンなんだが。どうするんだ?」
「クレのことですか?」
父上は頷いた。
「ドラゴンのクレは帰路途中の古代遺跡で預けられた、大切なドラゴンです。シエルとラエル、ルーチェちゃんが他のドラゴンの住処を、これから探すんじゃないでしょか?」
「他のドラゴンか……そうか。私の方でも探してみよう。そうか、そうか――ドラゴンの住処を探しに、シエルとラエルはまた旅に出るのか」
ジールア父上は顎に手を当てニヤリと笑った。これは父上が楽しいことを思いついたときにする、クセだ。
父上は何かやらかすきだと……このときのベルーガは思った。
なんだか凄く懐かしくて、まだ帰りたくなかった自分がいる。
「だけど、旅は終わったんだ……」
子犬の姿で、楽しんだ旅は終わった。
これから僕と、ルーチェちゃんは一緒にいることは出来ない。無理やりシエルから引き離して、嫌われながらも、彼女を婚約者になんてしたくない。
シエルは大切な友だし、ルーチェちゃんは愛しい人だ。
僕のわがままで、2人を悲しませたくない。
コンコンコンと部屋の扉が叩かれる。
子犬のときは必要がなかった、着替えのためにメイドが来たのかと思い、返事を返すと違った。
――父上からの呼び出しだ。
僕は急ぎ父上の執務室へと向かった。いく途中で気付く、そうかと。元婚約者のナタリーの処遇の話を、父上から聞かされるんだ。
執務室に着き扉を叩くと、父上が入れと返事がきた。
「失礼します、父上。何か御用ですか?」
「そうだ、ソファーにかけなさい」
実務机の前にある、向かい合わせの来客用のソファーに座る。目の前のテーブルには……入れたての紅茶と、僕の好きなチーズケーキが乗っていた。
「もう少しかかるから、食べて待っていなさい」
「はい、いただきます」
久しぶりのチーズケーキは甘く、痛んだ心を癒す。
紅茶も僕の好きなアールグレイだ。父上は僕のためにチーズケーキと紅茶を準備してくれたのか。
「ありがとうございます、ジールア父上」
「いや、サリナがベルーガを執務室に呼ぶなら、コレを準備しろと言ったんだ……ゆっくり食べてくれ、私は少し出てくる待っていてくれ」
「はい」
父上は手に書類を数枚持ち、執務室から出ていった。
いつも側にいるはずの執事ナルの姿がなく、魔法も使用していない。父上は僕のためにナルを下がらさせ、魔法の使用も控えてくれたのか……なんて、優しい父上と母上だ。
(明日、母上をお茶に誘おう)
そして……早く、魔力を安定出来るようにならないとな。しばらく子犬だったから、ますます出来なくなっていそうだ。シエルとラエルに笑われるな。
書類を執事に渡して戻ってきた父上と、ソファーを囲んで座っている。父上は僕にいろいろ聞きたいのを我慢して、元婚約者ナタリーの話からはじめた。
僕を逃したあと――主犯者のナタリーを捕まえた父上は、すぐに魔女と引き離した。その魔女の姿は首上でグロいと顔をしかめて父上は話した。
「魔女がね……余りにもうるさいし、気持ち悪いから――すぐに封印したよ。魔女と引き離され正気に戻ったナタリーはそのあと、言い訳をはじめた。ベルーガが悪い、私を愛していないと喚いた」
――ハァ。
「そうですか……僕の気持ちは伝わっていなかったのですね」
父上は紅茶を一口飲み、頷いた。
「私は伝えたよ。ベルーガは愛していたと……しかし、もう遅いと。真実を知ったナタリーは悔やんで泣いたけど、後の祭りだ。ナタリーとその家族を国外追放にした……罪が軽すぎるかもしれないが、二度とこの地は踏ませない、もし踏んだら次は覚悟してもらう」
父上は僕に鋭い瞳を向けた。
ナタリーに次は無いのだろう。
「父上がそうお決めになったのなら、それでいいです。ナタリーのことは吹っ切れています」
「そうだろうね、王の間で会ったルーチェという女性だろう? 婚約者にしたいなら、シエルに諦めさせればいい」
「そんな事は出来ません! そんな事をしたらルーチェちゃんに嫌われるし、シエルに殺されます!」
側でズッと見てきたんだ。
ルーチェちゃんはシエルが好きで、シエルもルーチェちゃんが好き――2人はお互い愛し合っている。
「私も見ていてわかったよ。シエルのあの瞳は私をも殺すな。それくらい愛した女性か――よい魔力を持つ、綺麗な子だった。さぞかし大切に育てられたんじゃないか?」
「え? いいえ、彼女は……」
僕が知る、ルーチェちゃんの話を父上にした。
父上は黙って僕の話を聞き……そうかと言った。
「魔力なしか――アンサンテ国では彼女の魔力量を、正確に測れなかったのだな。だが私の国は違うぞ、彼女の魔力量は見てわかる」
「そんなに凄いのですか?」
「あぁ、訓練すれば……シエル、ラエル以上、ベルーガよりも上で……私と互角か……上かもな。まあ、こればかりは鍛えてみないことにはわからない」
そっか、ルーチェちゃんは魔法が好きだから喜ぶだろうな。嬉しそうに魔力を使う、彼女がみたい。
「それと、ベルーガ達が連れてきたドラゴンなんだが。どうするんだ?」
「クレのことですか?」
父上は頷いた。
「ドラゴンのクレは帰路途中の古代遺跡で預けられた、大切なドラゴンです。シエルとラエル、ルーチェちゃんが他のドラゴンの住処を、これから探すんじゃないでしょか?」
「他のドラゴンか……そうか。私の方でも探してみよう。そうか、そうか――ドラゴンの住処を探しに、シエルとラエルはまた旅に出るのか」
ジールア父上は顎に手を当てニヤリと笑った。これは父上が楽しいことを思いついたときにする、クセだ。
父上は何かやらかすきだと……このときのベルーガは思った。
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