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第二章 ストレーガ国までの帰路

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 いつも落ち着いている、シエルさんが声を荒らげたことに、私は驚くしかなかった。それは彼が何かに焦っているように感じたから、

「シエル落ち着け、国を出なくても平気だって」
「そうだよ、落ち着いて兄貴」

「うるさい! 俺では彼の方には魔法でも、剣でも勝てない……ラエルと2人で協力してかかっても無理だったんだ……クソッ」

 それには、ラエルさんもコクコク頷く。

「大丈夫だって、父上はそのような事はしない! お前らわかっていないなぁ、あの父上だシエルに恋人ができたと聞いたら……国中を挙げて大喜びすると思うぞ! だって……」

 子犬ちゃんの父上? それって、ストレーガ国の国王陛下の話だ。

「おい、ベルーガ『だって』のあとはなんだ?」

 しまった、という表情をした子犬ちゃんは焦りながら。

「え、えーっと……今回のボクの嫁探しの話はその、シエルとラエルにもな、人を怖がらず……恋をして欲しいって父上が言っていたから」

「「ハァ?」」

「なんだよそれ」
「恋って、僕には無理だよ」

「それだ! それがいけない! お前らは好んだ(このんだ)人しか寄せ付けず……女性はかなり苦手だろう? 年頃なのに魔法ばかりじゃ世界は広がらない。もっと多くの体験をしてもらいたいって、酒の席でボクもだけど……2人の子供も見たいって父上はぐう垂れていた」

「子供⁉︎ だから……陛下は俺たちをベルーガの婚約者探しに選んだのか……俺はともかく、ラエルには無理な話だ。他人に触れられることを嫌がるし、飯だって他の奴とは一緒の席すら嫌がる」

 え、ラエルは他の人との食事が嫌?
 だったら、一緒に食事をとっていた私は……彼にズッと無理をさせていた事になる。

 その話を聞いて私は立ち上がり、頭を下げた。

「ご、ごめんなさい……ラエルさん」

「え?」
「ハァ?」

「いまのシエルさんの話だと、他の人との食事が苦手だって言ったわ。私、ズッと無理させていたのよね――気付かず、ごめんなさい」

 一瞬、ポカンとした表情を浮かべたみんな。
 それはみんなの話を聞いて、目をしましたガット君もだった。

「プクク、姉さん面白い。あるじは姉さんのことが苦手? 違うっス。どちらかと言うと――す」

「あ――違うよ、ルーチェさんは兄貴の大切な恋人だし。魔法が好きでたまらない可愛い人。僕は嫌いじゃないよ」

 嫌じゃなくて、良かった。とホッとする前にシエルさんに手を引かれ、引き寄せられた。

「シエルさん?」
「フン! ……あ、おい、みんな」

 シエルさんは何かに気付き、遠くを眺める。

「この話は終わりだ。もう直ぐ王都に着く何があるかわからない、気を引き締めろ!」

 シエルさんの声にみんなは話を止め息を吸う、私もシエルさんの見る方に目を向けると、遠目に城壁が遠くに見えた。
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