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第二章 ストレーガ国までの帰路

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「ククッ」
「シエルさん?」

 弟のラエルさんと談笑していた、彼は私を見て笑った。どうやら彼に私の考えていて事がわかったみたいだ。

「ルーは俺達が落ち着いていて、慌てない事に驚いているな。まぁ辺境伯に寄ったのは、隣国の動きを知るためだな。幸い、目立った動きはしていないようだ」

「それは良かったけど……でも、今、王都は結界に覆われているでしょう?」

 それなのに、みんなはそんなに落ち着いていられるの。
 子犬ちゃんだってそう。一口お饅頭が美味しいのは分かるけど……呑気にお饅頭ばかり食べていて全然慌てていない。
 ストレーガ国の王子だと聞いたけど、両親が国民が心配じゃないのかしら。

「むくれるなって、なんていうか――王都内の国民、貴族、陛下と王妃は平気だな……なにせ、この国には国王陛下がいるからな」

 ――国王陛下?

「今思えば……オレが王都から逃げた後。ナタリーがあとを追って来れなかったのは。もしかすると……父上に、逆に眠らさてたのかもな」

「ありうるな」
「ありうるね」

 私には子犬ちゃんが話したナタリーさんの事も、シエルさん、ラエルさん、子犬ちゃん達がしている話は分からない。ちょっと疎外感……を感じた。

 また、それを読んだのか。
 シエルさんが近付き、私の頭を撫でた。

「俺がどうしてアンサンテ国に行ったとか、子犬の事、この事が終わったら全て、ルーに話すよ。……話す前に両親に会ってもらわないとな」

「シエルさんの両親?」

「ルーは俺の婚約者だろう? ちょっと、その前に問題事が起こるかもしれないけど……俺はルーを手放すことはない」

 シエルさんの赤い瞳が私を見つめた、彼は嘘は言わないだろう。今の問題が終わったら、全て話してもらえるとわかっただけで、嬉しい。

「分かった……でも、問題事って何?」
 
「んー言いたくない! ルーの魔力量の多さにも関わっているからな……あの人に合わせたくないが、こればかりは断る事ができないだろうな」

「私の魔力量? あの人? 断れない?」

 訳がわからなく、首を傾げた私と。
「「あっ!!」」と、ラエルさんと子犬ちゃんが声を上げ、二人は顔を見合わせた。

「すっかり、忘れていたぁ」
 
「そうだった……その目的のために僕と兄貴は、アンサンテ国に行ったんだった……忘れてた」

「ククッ、そうだとも思ったよ。あの人は美人で可愛い、ルーを見たら絶対に気に入る……そして子犬の……クソッ――もし、そうなったら俺はこの国を出る! ルーを連れて、どこか遠くの地で結婚する!」

 いつになく声を上げて、焦るシエルさんに驚くしかなかった。

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